第5回(平成4年)「人事院総裁賞」職域グループ部門受賞者
 
 
「自然環境を再生する」
 浦河営林暑は、40年の長きにわたり、厳しい自然条件の中で、職員の並々ならぬ 苦労と岬住民の事業参加により、草木も生えぬほど荒廃したえりも岬国有林の約70パーセントに当たる131ヘクタールの広大な地域に緑豊かな森林を蘇らせ、自然環境を再生し、地域社会の発展に大きく貢献したことが認められました。
 

林野庁北海道営林局浦河営林署(えりも岬国有林緑化事業)
【代表者】 署長 市毛 啓三
【職員数】 36名
 
 昔のえりも岬は、カシワ、ミズナラ、ハルニレなどの広葉樹の原生林で覆われていました。厳しい自然条件の中でも、これらの森林が大地に広がり人々の生活に潤いを与えていたのですが、燃料としての樹木の伐採、牛馬や緬羊の放牧地の開拓、イナゴの大発生による被害などが原因で、原生林は減少の一途をたどり、さらにその地表面 は、全国的にも稀なえりも岬特有の強風にさらされ、樹木ばかりか雑草さえ生えなくなり、急速に砂漠化していき赤土の舞うはげ山が連なる光景は「えりも砂漠」と言われるほどでした。
 また、強風によって舞い上がった赤土は、えりも岬沖合10キロメートルにも達して、岬沿岸は黄色く汚濁し、回遊魚や沿岸魚は減少し、昆布などの豊かな海草類も根腐れを起こして採れなくなり、さらには飲料水も汚れ、戸を締め切った家の中にも砂が舞い込むという状態で、地元住民の生計や暮らしは大変困難なものになり、真剣に集団移転も考えたそうです。
 このような状況の中、岬住民の生活を守るため、昭和28年4月浦河営林署に「えりも岬治山事業所」が設置され、本格的なえりも岬の緑化が着手されました。
 しかしながら、えりも岬は、風速毎秒10メートルの風が年間270日以上という日本屈指の強風地帯である上、冬季の土壌凍結、春先の土壌融解、夏の濃霧による短い日照時間で、そのままでは植物が生育しない環境になっており、緑化事業は困難を極めました。
 緑化事業は、木を植える前に草を根づかせる草本緑化から進められましたが、強風と闘いながらのさまざまな試行錯誤の末、地面 をならし、種子と肥料を播き、その上を海岸に打ち上げられた雑海草で覆い、種子や肥料が飛散するのを防ぐ「えりも式緑化工法」を開発し、緑化開始後10数年の歳月をかけ、ようやくはげ山と化したえりも岬国有林のほとんどに当たる192ヘクタールを、草本によって緑化することができました。その後、木を植える木本緑化を行い、平成3年末には荒廃地の約70パーセントに当たる131ヘクタールという広大な地域を緑豊かな森林に蘇らせました。
 緑化事業の継続的な実施と成功によって、地元基幹産業である水産業は年々拡大され、それとともに地域住民の定住も促進されて、地域の活性化が着実に進んできました。
 えりも岬の緑化は、地元産業の振興と地元住民の生活環境の改善に大きく寄与することとなりました。

受賞の感想をお聞かせください
 賞の重さを思うと、身の引き締まる思いがいたします。特に、緑化事業の地域振興への寄与について評価をいただくことは、長年にわたる諸先輩方の苦労の積み重ねと不断の努力が報われたことであり、これに増す喜びはありません。
 
仕事のおもしろさをお聞かせください
 国土保全という重要な仕事に参画できること、それから、地域住民の生活の安定に寄与できる誇りを覚えています。日常的には、植えた樹々が強風や厳冬期をくぐり抜けてしっかり根づき、立派に成林していくときはわが子の成長を見るような思いがして、自然を相手の仕事をしている幸福感に浸ることができます。
 
仕事を進めて行くうえで苦労したことはどんなことがありましたか?
 厳しい気象条件は、多くの困難が伴います。厳冬期の倒木を起こし、春先の雪解け時期の防風垣の修理、凍結した緑地帯の施肥や根踏みなど、季節ごとに適切な措置を求められる作業が待っています。特に、緑化事業の初期段階での草地化には、草の種子や肥料が風に飛ばされるなど一進一退を繰り返し、大変な苦労があったと聞いています。
 
思い出に残っていることは?
 最近では、緑化40周年を迎えたときの各種記念事業で、多くの方の賛同と全国各地からの激励があったことです。先輩の話では、苦労の末、強風に飛ばされない緑化工法を開発し、草の芽がようやく出たときの感動と、緑地が増えたことによって、海がきれいになってきた現在の喜びは、何にも勝るものと聞かされています。
 
何か国民のみなさんに知ってもらいたいことはありますか?
 国有林の治山事業の重要性と森林の持つ公益的機能を発揮するための森林造成事業には、地道な努力と長い歳月と多くの投資が必要です。山の緑を回復するために草の種子を用い、緑地を少しずつ前進・拡大させ、試行錯誤の結果 、適地適木として選定したクロマツやカシワ等を植え付けて徐々に立派な森林を造成していくという、地道で粘り強い作業の連続になっています。これからも、林野行政に携わる者への一層のご理解とご支援をいただければと思っております。
 
この先まだえりも岬の緑化事業は続くのですか?
 えりもの森はまだ若く、この先50年、100年を見据えた森作りを行っていく必要があります。えりもの森は、地域住民にはなくてはならない大切な森です。今後とも、緑の再生と地域社会との連携強化に一層努力します。


 

えりも式緑化工法
 
 
 
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