第5回(平成4年)
 
 
「人事院総裁賞の選考にあたって」
 
小川 泰一 
日本経営者団体連盟
専務理事
 

 第5回の人事院総裁賞の受賞者がこのほど決定した。毎年秋に行われる選考委員会にメンバーのひとりとして出席するのを私は大変光栄に感ずると同時に楽しみにしている。なにかと横文字の派手な職業がもてはやされがちな世の中にあって、国家・国民のために地味な仕事に日々を燃焼しておられる方々の業績に接することは、誠に心を洗われる思いがするからである。
 今回の受賞者は、個人部門では「国立療養所原病院」で重症心身障害児・筋ジストロフィー児の療育指導に、まさにかぎりなき忍耐と愛情と精神力で永年取り組んでおられる「松永萬里」さん。職域部門では、北海道の厳しい自然条件のもとで、40年の歳月をかけて、「えりも式緑化工法」を開発し、荒廃したえりも岬国有林に緑豊かな森林をよみがえらせた「浦河営林署」の皆さん。行き場のない犯罪前歴者の指導に誠意と熱意で当たり、首都の治安を縁の下で支えている「東京保護観察所保護課」の皆さん。それぞれ各省庁から選び抜かれた3件であった。いずれも職務に対するひたむきな熱意と共に、それぞれ豊かな人間性と、同時に素晴らしい独創性を発揮されており、選考委員会では満場一致の推薦であった。
 人事院総裁賞の目的は、いうまでもなく日頃職務に精励している公務員の士気を高めることにある。私はこれに加えて、まさに「地の塩」ともいうべき受賞の対象になった方々の見事な仕事ぶりを、広く世に紹介することによって健全な職業意識高揚のかてにする必要があると思う。
 最近は「ゆとり・豊かさ」の実現が、いわば国家・社会の目標となっているが、そういった社会は、職業に携わる国民一人ひとりが自分の仕事をきちんと果 たすことによって成立する。昨今の深刻な不況の下で雇用情勢が次第に悪化しているが、長期的には人手不足の状況が続くものと予想される。フリーターなどという理解のしにくい現象が流行したのもつい最近のことであった。健全な職業意識の定着には、雇用情勢の厳しい今が丁度よい時期ではないか。
 受賞者の皆さんの、さらなるご発展をお祈りするとともに、総裁賞をいつまでも継続されるよう期待するものである。

(おがわ・やすいち)

 
 
 
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