第6回(平成5年)
 
 
「人事院総裁賞“粒ぞろい”の悩み」
 
岡本 昭市 
東京新聞・中日新聞
論説委員
 

 公務が民間企業と違う一番のポイントは、恐らく“算盤づく”を超越した仕事の中身にある。
 一方ではそれがとかく効率や生産性への批判をもたらすことになるが、かといって、経費のことを考えたら絶対に企業が手を出さないような、苦労ばかりで割りの合わない職務を黙々とこなしてくれる人々なくして近代社会は成り立たない。
 人事院総裁賞の候補に挙げられた個人や団体の推薦理由を熟読するたびにつくづくそのことを思う。
 特に第6回の選考ではますます感を深くした。「いずれがアヤメかカキツバタ」である。どれを入れどれを外すか、点数がつけ難い。選考委員会はかなり白熱した議論になった。
 差をつけるとしたら結局周辺の事情の強弱みたいな微妙なところで判断するしかない。これは正直いって辛かったが、裏を返せばそれだけ入念に吟味されたうえの受賞ということにもなる。
 もう一つ、常々感じさせられるのは、公務というものの幅の広さと多様さだ。
 受賞した3人と2団体は、戦火のさ中のベトナム、アフガニスタンの日本大使館員、北海道のダムの守り手、富士山頂の測候所、瀬戸内海の巡視艇長、電子顕微鏡が恋人み たいな女性技術者──。
 惜しくも選に漏れたが、大蔵省印刷局に官報などの閲覧のベテラン集団がいることは初めて教えられたし、海上保安庁の羽田特殊救難隊や鉱山保安監督局の日ごろの奮闘はニュースで知っているものの、命がけの仕事のきつさには改めて舌を巻く。
 刻苦精励、独創性、地域・職域、年齢や性別などを基本に、一方では満遍なくバランスをとることに配慮しながらのしぼりこみは楽しみでもあり苦しみでもあったが、最終的には委員長の小川泰一前日経連専務理事の巧みな采配で満場一致の決定となった。
 いわば“ぜいたくな悩み”を味わされたわけだが、こういう悩みなら喜んで受けたい。いやもっともっと、われわれを悩ますような「われこそは」が現れてほしい。
 地域でいうなら、中部、四国からはまだ受賞者が出ていないし、若手や地道でしかもユニークな研究成果 を挙げた隠れた逸材にもできるだけ日を当てたい。そんな期待をこめながら今回の受賞者のみなさんに心からおめでとうを申し上げる。

(おかもと・しょういち)

 
 
 
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