第9回(平成8年)「人事院総裁賞」職域グループ部門受賞者
 
 
「厳しい勤務環境の中、航行船舶の安全を祈って暗夜の海を照らす」
 離島という厳しい勤務環境のもとで、航路標識の保守・運用のほか気象観測・船舶気象通 報等を行い、海上交通の安全確保に寄与してきたことが認められました。
 

海上保安庁第七管区海上保安本部福江航路標識事務所
【業務内容】
 航路標識事務所は全国に94ヶ所設置されており、福江航路標識事務所の歴史は昭和2年の女島灯台設置に始まります。同31年からは灯台の保守管理の他に船舶気象通 報業務が開始され、同47年には玉之浦及び大瀬の航路標識事務所が集約され、現在の福江航路標識事務所となりました。
【代表者】 所長 桑原 務
【職員数】 12名
 
 福江航路標識事務所は、長崎県五島列島の福江島周辺海域及び男女群島を担当区域とし、各種航路標識の保守、点検、運用を主な業務として付近を航行する船舶の安全確保に寄与しています。特に同標識事務所から70キロメートルの洋上にある女島灯台では、4名の職員が10日交代で滞在し、灯台の生命線とも言える電源を自家発電により、また飲料水も雨水に頼るなど厳しい条件の下で標識用機器の保守、運用のほか気象観測、船舶気象通 報及び不審船の監視等を行い、我が国の秩序維持及び航行船舶の安全確保に日々努めています。
 
受賞の感想をお聞かせください
 私達の仕事は一般の国民の皆さんには目に触れにくい海上が職場で、特に航路標識事務所はニュース性に乏しい地味な職場といえます。このような職場に対して光りを当てていただいたことに感謝しています。この賞は、全国の航路標識職員全体に対して贈られたものと解釈しています。
 
仕事をしていて、充実感ややりがいを感じるのはどのようなときですか
 小さい漁船から大きな貨物船まで、全ての船舶が我々の管理している航路標識を大切な指標として利用していることを思うと地味な仕事ではありますが、その重要性を痛感しますし、やりがいのある仕事だと思っています。また、何と言っても海という大自然の中で、都会では味わえない四季折々の海や山の姿と一体となって仕事ができることはすばらしいことで、何とも言えない喜びです。
 
10日交代での灯台滞在ではいろいろとご苦労があると思いますが
 平地がなく周辺が切り立った断崖の上にある女島灯台は、毎年台風が襲来し、冬季には強い季節風が吹きつける厳しい環境にあります。職員は1年を通 じ平均150日前後をここで過ごしますが、滞在中の病気や怪我はともすると命取りにもなりかねません。事実、過去においては盲腸を発症した職員が巡視船により福江市の病院に運ばれ、数時間の差で命拾いをした例があり、職員一人一人が日頃から健康や安全管理について細心の注意を払っています。
 
思い出に残っていることもたくさんあると思いますが
 台風が女島のすぐ西を通過したことがあり、そのときは猛烈な風雨に見舞われ、灯台の灯籠ハリハン(レンズの部屋を覆っている厚さ1センチメートル程のガラス板)10数枚を破損するという事態が発生しました。そのままだと風圧のためレンズが回転できず、暗くなると大変な事態となります。ガラス片が風圧で真横に吹き飛んでいく危険な暴風下での復旧作業でしたが、暗くなる前に何とか作業は完了しました。このような状況の中で、1時間毎の船舶気象通 報を一回も欠射することなく、灯台の灯も平常どおりに灯すことができたことに大きな安堵と喜びを感じたものでした。
 
この機会に国民の皆さんに知っていただきたいことはありますか
 一つは灯台の歴史を知ってもらいたいと思います。我が国が開国を行う上で、まず第一に必要だったのが灯台の建設だったのです。現在のような灯台の建設は、明治初年から始められました。これらの灯台は、フランス人やイギリス人技術者の指導のもと建設されましたが、その技術が我が国における近代建築及び近代科学の基礎となり、鉄道、下水道建設等にも利用され、近代化に大きく寄与した歴史を知っていただきたいと思います。
 もう一つは、灯台守といった古いイメージがありますが、常に時代の先端技術を追い求めて、皆さんに信頼される高性能の航路標識を整備していることです。例えば、太陽電池、波力発電といった自然エネルギーを利用した灯台も多く設置されていますし、地域のシンボルとなるデザイン化灯台の建設にも取り組んでいます。
 
今回の受賞を機に、改めて今の仕事に対して感じたことはありますか
 戦時中、女島灯台は20数回の空襲を受けました。当時、常駐していた9名の職員には終戦間近になって引き上げ命令が下されましたが、危険が迫ってくる中、重量 物の大型レンズ等を山中に埋め、再度来島した時には直に灯台の灯を点灯できるよう段取りして島を離れていきました。そのレンズは今も女島で昔と同じように航行船舶の安全を祈って暗夜の海を照らし続けています。先輩達から脈々として受け継がれてきた守灯精神があります。今回の受賞に当たって改めて、その精神の重みを噛みしめ、我々も後輩達に引き継いでいかねばと気を引き締めています。

 

灯台の保守・点検作業
 
 
 
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