第9回(平成8年)「人事院総裁賞」個人部門受賞者
 
 

「治療食の創意工夫で患者の早期治療に貢献」

 入院患者の症状に応じて、個人の嗜好を考慮したきめ細かい治療食を調製して治療効果 を上げるとともに、給食業務の改善・合理化にも努め、その成果を論文や書物に著すなどして栄養管理の普及に寄与してきたことが認められました。
 
前田 圭禧 
東京大学

 大阪府出身。昭和38年に京都大学医学部附属病院に採用されて以来、一貫して栄養管理業務に従事し、平成7年より同病院病態栄養部栄養管理室長。同じ栄養士である妻と2人家族。趣味はピアノ演奏と園芸(蘭作り)。59歳。
 

 前田さんは、臨床栄養学分野での先端を行く治療食の研究、開発の成果 を給食業務を通じて実践し、特に人工透析患者の給食や白血病患者に対する無菌食等の独自性にあふれた治療食を創意工夫し、患者治療に格段の効果 を上げました。さらに、病院における患者給食の「時間が早い、まずい、冷たい」との不評を打破するための方策をつぎつぎと工夫改善して患者の喫食率を上げ、食事療法による患者の早期治療に貢献しました。
 また、これらの成果を論文又は学会等で発表し、書物に著すなどしてその普及に努める一方、各種市民講座等に講師として出席し、栄養管理の大切さをわかりやすく指導しています。

 
受賞の感想をお聞かせください

 親の反対を押し切って、栄養士の養成所に入学したのがこの道への始まりでした。以来、自分の座右の銘である「誠実」をモットーとして病める患者さんのために「心」を込めて治療食を作ろうと、今日まで栄養業務に専念してきました。思いがけずこのような立派な賞をいただき、身が引き締まる思いです。
 この賞は先輩・同僚の方々の御協力により受賞できたものと考えています。

 
仕事をしていて、充実感ややりがいを感じるのはどのようなときですか
 あらゆる疾病の患者さんが入院されていますが、食欲も湧かない方々も多く、疾病や症状に応じて様々な条件が課せられる中で、できるだけ患者さんの嗜好に沿った治療食を工夫し、いかに召し上がっていただくかが私たちの課題です。それまで治療食に拒否反応を示していた患者さんが、残さず食べられたとの看護婦さんの報告があった時や、食事に対する感謝の気持ちをメモ用紙にしたため、トレイ(盆)に乗せていただいたときなどは、この仕事をしていることの充実感を感じます。
 
今まで特に印象に残っているのはどのようなことですか

 大学病院は病床数が多いだけに、治療食の極めの細かさに欠けるきらいがあり、大量 調理の処理をどう解決したらよいかという点が問題点でした。患者さんは一人一人であるということを念頭に置き、嗜好を伺い、目で見ていて食欲が湧くよう、盛り付けに関しても調理スタッフと協力し工夫を重ねました。
 ある日、腎臓病の患者さんに少しでも「食」をつけてもらおうと果 物を細工し盛り付けたところ、ベット訪問の際、「食事を作ってくれた方の気持ちが伝わってくるようで、とても嬉しく、皮までいただいてしまいました。」と言葉をいただき、なお一層心を込めた治療食作りを心がけねばという気持ちが強くなりました。

 
無菌食の創意工夫にご苦労があったと思いますが
 白血病の患者さんは骨髄移植後、その機能の発現までに通 常1ヶ月程かかり、その間、無菌食が必要となります。通常の調理具が使えず、耐熱性の容器に原材料と蒸発分の水分を加え、天火での完全無菌処理をしての調理となるのですが、当初は生煮えや焦げ過ぎ等軌道に乗せるまでには試行錯誤の連続でした。
 入院直後に患者さんの嗜好調査を行い、骨髄移植後は、毎食、クリーンルームまで赴き希望を聞いてのオーダーメニュー方式とし、患者さんから喜ばれています。当院が創意工夫した無菌食については照会も多く、各施設にこのマニュアルを提供しています。
 
地域活動にも活躍されているということですが
 成人病で入院される方が多く、これを予防するには地域医療にも目を向けねばと思うようになりました。食生活改善をねらいとした啓蒙活動は各種市民講座を中心として行っていますが、昨年夏には一週間のラジオ放送にもその機会をいただいたところです。
 
この機会に国民の皆さんに知っていただきたいことはありますか
 病院の治療食は1日3食、生命を維持し、病状を回復させるために欠くことのできないものです。治療食の中でも糖尿病、腎臓病などは目に見えてその有効性が認められています。病院というとどうしても医師、看護婦の方々が中心ですが、陰でこういった治療栄養業務に専念している栄養部の職員がいることも認識していただければと思います。


配膳業務のチェック
 

ベッドサイドでの個人栄養指導
 
 
 
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