第10回(平成9年)「人事院総裁賞」職域グループ部門受賞者
 
 
「多くの方々に支えられて」
 ナホトカ号重油流出事故に際し、冬の日本海の厳しい気象条件の下、自治体・漁協・海上災害防止センター等関係団体と協力し、油回収・船首部撤去等の危険な作業に従事し、被害の拡大防止に努めたことが認められました。
 


海上保安庁第八管区海上保安本部ナホトカ号海難・流出油現地災害対策本部
【業務内容】
 平成9年1月2日、隠岐島沖合の日本海で起きた、ロシアタンカー「ナホトカ号」の事故は、大量 の油が残存した船首部が三国町に座礁したほか、事故の際に流出した油が日本海側の1府8県に漂着し、甚大な被害を及ぼしました。1月4日、第八管区海上保安本部に災害対策本部を設置、そして1月7日、三国海上保安署に敦賀海上保安部長を本部長とする現地災害対策本部を設置しました。
【代表者】 現地災害対策本部長 佐藤 清志
【職員数】 57名(規模最大時)
 
 現地災害対策本部は、三国海上保安署員に加え、八管本部及び八管区内の各部署のほか、順次、本庁や他の管区からも職員の応援派遣を受け、最大時には、57名体制になりました。狭い庁舎内では普段の数十倍もの職員がひしめき合い、司令班、広報記録班、支援業務班に別 れ、さらに特殊救難隊、機動防除隊の応援を受け、船首部への対応、浮流油の調査・回収及び情報提供、福井県等関係機関との連絡調整等の日々変化する業務を厳しい勤務環境下において遂行し、流出油による被害の極限に努めました。
 
受賞の感想をお聞かせください
 この度の油流出事故では、自治体、地元の皆さん、ボランティアの皆さん、船首部の油抜き取りを実施したサルベージ会社や建設会社の皆さん等多くの方々が、長期間にわたって真冬の日本海の厳しい気象条件の中で大変苦労され、その結果 、以前の綺麗な海を取り戻すことができました。このような中、私達の現地対策本部が大変名誉ある賞をいただき、感謝いたしますとともに、恐縮しているところであります。この賞は、正に、現地で油防除に関係した全ての方々に贈られたものと解し、そして、この受賞を機会に、この事故で得た多くの貴重な教訓を改めて肝に銘じ、今後に生かしてまいりたいと思います。
 
ご苦労も多かったと思いますが
 座礁した船首部には大量の油が残存しており、船体が時化により破損して油が流出する恐れがあったことから、一刻も早く油を抜き取る必要がありましたが、荒天のため油抜き取り作業が難航し、しばしば長期間の中断と作業手法の変更を強いられました。船首部から油を抜き取るために建設した仮設道路も、全長175メートルを完成させる間に大波を受け、数度にわたって計95メートルほどが崩壊する等、「造っては壊れる」の繰り返しでした。職場環境についても、通 常3名の執務場所に多数の職員が勤務したため、各自の椅子を確保するスペースもなく、殆どの職員は早朝から夜遅くまで立った状態で勤務し、特に、若い職員はその状態で食事を取らざるを得ない状況でした。また、宿舎についても、時には1部屋に12人宿泊することとなり、十分に疲れを癒すこともできず、冬場長期間派遣された職員の健康管理が危惧されましたが、幸い、風邪程度で済み、大きな病気や怪我等は発生しませんでした。
 
励みになったことがあるそうですが
 派遣先の三国町での生活が長く、制服姿で通 勤していることもあり、コンビニの従業員さん等から「ご苦労様です。頑張ってください。」との声をかけていただき、また、町営宿泊施設の管理人さんが、全職員に洗濯のサービスを提供して下さったり、更には、一般 の方々から栄養剤の差し入れをいただく等、地元の多くの方々から助けていただきました。職員にとって、このような温かい心遣いが何よりも励みになりました。
 
特に印象深いことは何ですか
 油の抜き取り作業を終え、海上が平穏になった4月20日、座礁 した船首部を撤去するため約1000トンにも及ぶ鉄の固まりがクレーン船により吊り上げられ、海面 上に全容を現した時には、ナホトカ号に携わった方々にとって、その想いが苦労と困難を極めただけに、感無量 ではなかったかと思います。
 
国民の皆さんに伝えたいことは何かありますか
 座礁した船舶を撤去するために、陸側から道路を仮設した事例は過去にもありましたが、今回のように幅10メートル、長さ175メートルもの大がかりな道路を建設したのは、我が国で始めてのことであります。船首部から油を抜き取るための仮設道路の建設にあたっては、自治体や地元漁業関係者の協力、昼夜の工事に伴う騒音・1〜2分間隔のダンプカーの運行等に対する地元住民の理解、港湾当局・土木関係業者の技術的支援、工事施行等があり、多くの方々に支えられて実現したものであります。
 
今後の抱負などをお聞かせください

 現地の海上保安部として、海洋環境の保全を重要業務の一つに揚げて取り組んでおりますが、地元では今回の事故を契機に環境問題に対する意識が大変高まっております。地元福井県の海岸は大半が若狭湾国定公園と越前加賀国定公園に指定され、奇岩、景勝地に恵まれ、また、海そのものも大変綺麗であり、この貴重な財産を後世に残せるように、従前以上に海洋環境の保全に努めてまいりたいと思います。



油抜き取り作業の指導
 
 
 
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