第10回(平成9年)「人事院総裁賞」個人部門受賞者
 
 

「看護部門で初受賞」

 大学病院の枠を超えた地域看護活動を目指して、退院後の医療ケアのための看護相談・訪問看護体制を国立の病院で初めて確立するなど、看護全体のレベルの向上に寄与してきたことが認められました。
 
大田 すみ子 
北海道大学医学部附属病院

 北海道出身。昭和35年に北海道大学医学部附属病院に採用され、附属看護学校講師等を経て、平成2年より同病院看護部長。民間病院の事務部長である夫と1男1女の4人家族。趣味は行く先々の土地の風物や歴史の刻まれた建造物を見ること。現在その写 真撮影に挑戦中。59歳。
 

 大田さんは、大学病院という枠を超えて、地域に目を向けた看護活動の基盤作りを目指し、看護相談・訪問看護体制を構築するため、平成4年11月に北大病院に「継続医療部」を発足させました。これは、国立の病院で初めてのことであり、退院後引き続き医療を継続する必要がある患者に対し、訪問看護、在宅医療指導、外来等における受診相談、医療全般 にわたる相談等を行うことにより、在宅で自立的な療養生活ができるための支援体制を作ったもので、患者との信頼関係はますます良好になりました。
 また、患者の体温、脈拍等をベッドサイドで入力できる電子温度板システムを実用化し、検温に関わる時間の短縮や勤務交代時の引継ぎを迅速・正確に行うことができるようになり、患者サービスの向上につながりました。現在、病棟全てに導入するために、看護計画の電算化、医事・会計、物流システムへのリンク等更なる改良を進めています。
 そのほか、長期入院の子供達のための院内学級を実現させたほか、数多くの看護に関する論文発表、研修会の講師等看護全体のレベル向上に努めています。

 
受賞の感想をお聞かせください

 国立大学病院の看護の組織の確立、業務の改善、看護職員の教育研修のあり方の模索を、その時代の要請に応じて努力してきたことが認められ、大変嬉しく感じております。このことは、戦後の看護の歴史を作った諸先輩、現在も各所で同じく頑張っている看護職の皆様への大きな贈り物であり、大きな励ましであります。偶然この立場にいた私を今まで支えてくれた婦長をはじめとする看護職員と共に、喜びを分かち合いたいと思います。

 
仕事をしていて、充実感ややりがいを感じるのはどのようなときですか
 患者さんが病気から回復するには看護の良し悪しが大きく影響します。医師の治療的手段が速やかに功を奏するか否かも、看護のあり方によって左右されます。看護婦から看護の良かった例を聞いたり、患者さんから感謝のお手紙を戴いたりしますと、良い職業を選んだと実感いたします。最初は看護に対して不安のある看護婦たちが、経験を積み研修や同僚、上司の力を借りて成長し、成熟していくのを見届けるのは、とても嬉しいことです。やり甲斐と、自己成長のはかれる職業であることが看護の魅力ではないでしょうか。また、看護の実践研究が進み、看護の理論化に一石を投じられることも興味深いことです。
 
これまで特に印象に残っていることは何ですか

 看護に充実した日々を過ごしていたにもかかわらず、出産を期に一時期職場を離れなければならなかったのは辛い選択でした。当時は育児休暇制度はなく、保育所にも思うように預けられず、6月休止した後、保育を義姉に頼って別 の職場に復帰しました。2人目の時は、家庭に保育者を採用するなど綱渡りの日々が続きました。子供達の精神のバランスが崩れた時など、働く母のせいかと悩みました。
 看護婦の多くが結婚や育児で退職しますが、早く職場環境が整い、有能な人材を失うようなことがなくなる日を常に願望し、期待しております。

 
この機会に国民の皆さんに知っていただきたいことはありますか
 “看護”は古代から母の手で行われてきましたが、いつの間にか人の“生老病死”が病院に託される時代になっています。病院自体が、そのような人々の生活を全て満足させることは不可能です。夜は、2人の看護婦が40人の患者さんのお世話と診療補助を行っている現状の中で、せめて老いや死は家族の暖かな見守りが重要であると感じています。看護や介護を職業人が担うことのほかに、支え合う心と行動の拡がりに期待していきたい思っています。
 
今後の抱負などをお聞かせください
 当病院では、“個別看護の充実”、“成長のための相互支援”、“新しい看護の創造”を大切に看護を進めてきました。退院された方が自立して生活できるためにと、医療依存度の高い方の家庭への訪問や相談活動を行っています。在院期間が短くなる傾向の中で、不安のない生活、家庭で死を迎えたいと希望される方への看護のサポート体制を充実させたいと考えています。  また、当病院の看護が進歩、発展するにあたっては、歴代の病院長をはじめ各診療科の教授や医師からの期待と支援があったことが強い要因となっております。さらに、数年で変わられる事務部の方々が、看護部の意志を尊重して下さり、協力体制を維持しつづけて下さったことは有難いことでした。看護部内の統率は婦長によって足並みがそろい、自由で積極的な職場風土が様々な挑戦を積み重ねてきました。この伝統が今後も続き、良い看護と良い看護婦の育成を期待しています


円滑な看護業務を行うための定例打合せ会
 

院内学級(レクリエーション大会)での挨拶
 
 
 
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