第11回(平成10年)「人事院総裁賞」個人部門受賞者
 
 

「木製航空機模型の第一人者」

 航空技術研究において欠かせない風洞実験用木製航空機模型の製作に長年にわたり従事し、これまでにない画期的な大型模型を製作するなど、我が国の航空技術の研究水準向上に寄与したことが認められました。
 
井上 育三 
航空宇宙技術研究所

 東京都出身。昭和42年に航空宇宙技術研究所に採用。昭和50年に管理部工作課に配置されて以来、一貫して風洞実験用木製航空機模型の製作に従事し、平成6年より工作係長。妻と2男の4人家族。趣味は卓球、旅行、園芸。54歳。
 

 井上さんの業務は風洞実験を必要とする各種の試験用模型の図面 から、研究者の要求どおりの模型を木工技術を駆使して製作するものでずが、試験用模型による実証研究は航空技術研究において不可欠なものとされており、データーがコンピューターにより厳密に取得・解析されるため、ミリメートル以下の精度が要求されることから、井上さんの製作技術は重要な役割を果 たしています。
 井上さんの製作した試験用模型による研究成果は学界等関係者の評価も極めて高いものとなっており、研究水準のレベルアップに貢献した功績は極めて大きいものがあります。

 
受賞の感想をお聞かせください

 空力性能を研究するために風洞で用いる航空機の翼や胴体などの木製模型を研究者の要求する形状と精度を満足させることを第一に永年製作してきました。研究に期待どおり役立つ模型を製作するために、大勢の研究者と昼夜を問わず議論し、最新の研究内容や技術情報を取得するように努めて参りました。私が製作した風洞模型が、多くの研究者の方々の航空技術研究の一助となったということで、今回の受賞につながったものと思っております。私の受賞は、今日まで私を支えていただきました職場の上司・同僚の御協力を始めとして多くの研究者の方々の研究の努力のうえに成り立った賜であり、これらの人達に対し感謝の気持ちで一杯です。
 この度、このような栄誉ある賞をお受けすることになり、これからも一層の努力を重ねていきたいと思っております。

 
仕事をしていて充実感ややりがいを感じるのはどのようなときですか
 苦労して製作した模型が輝いているように出来上がった時に最も充実感を感じております。また、研究者がその模型を用いて風洞実験を行う際に、私が実験現場に立ち会い、実験が予定どおり進んでいることを確認できた時や、後日、研究の成果 が十分にあがったことを研究者から知らされたときなどは格別な喜びを感じます。
 
これまでの業務を通じて、特に印象に残っていることは何ですか

 私の製作した模型のなかでは、所内の大型低速風洞で実験に用いたACT模型(能動制御技術大型低速風洞全機模型)の製作に従事した時のことです。この模型には、設計の検討から完成までに約10か月を要しました。組立構造のため、部品一つ一つについて材料と材質をよく吟味して形を作りだしたうえで、接着を行って組立てました。本模型は、計測機材等を内部に搭載しており、実験途上においても必要とする調整を可能にさせる目的でハッチを模型の各所に設けたのですが、ハッチとハッチ周辺の部材との整合性を保つのに大変苦労しました。
 私は、風洞実験中のこの模型を見て、まるで実際に飛行しているように見えたことが今日でも強く印象に残っております。

 
今後の抱負などをお聞かせください
 私の製作する風洞実験用模型の材料は、木材ですので熱に弱いという宿命を持っています。また、長期間経過しますと反りが発生することもあります。この弱点を克服するために、現在、樹脂を使った模型を考えています。樹脂の特性である軽量 強靱で、かつ、加工性の良い樹脂を見つけて、精度の高いものを製作できればと期待しております。


ACT模型(能動制御技術大型低速風洞全機模型)機首部を製作中
 

高速垂直離着陸機模型の翼厚をゲージで計測する
 
 
 
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