第12回(平成11年)
 
 
「一隅を照らす人々」
 
古賀 憲介 
日新製鋼株式会社相談役
 

 御縁があって人事院総裁賞の選考委員を委嘱され、50余年の製鉄一筋の民間人には、平素は気付かないような多岐に渡る分野で、国家公務員の皆さんが、国民と社会のためにいかに奉仕されているか垣間見る機会を得たことは私にとっては望外の幸せであった。
 総裁賞顕彰の趣旨は「国民全体の奉仕者としての強い自覚の下に職務に精励し、もって公務及び公務員の役割についての理解と公務に対する信頼を高めることに寄与した職員又は職域を顕彰する」ということであり、顕彰対象者は「一般 職の国家公務員又はそれらの者が勤務する職域で、次のいずれかに該当するもの」とされている。すなわち
 (1)多年にわたり、同一の職種に従事し、不断の努力により公務の信頼を高めることに寄与した者
 (2)多年にわたり、生活の著しく不便な地に勤務する等精神的、肉体的労苦の多い勤務を通 じ公務の信頼を高めることに寄与したもの
 (3)その他業務上の顕著な功績等により、公務の信頼を高めることに寄与したもの
となっており、選考委員会には、各省庁から推薦された候補が詳細な推薦資料とともに提出される。
 今回の選考対象は厳選された個人、職域10数件、いずれも頭の下がる立派な方々であり、正直いってできるものなら皆さん全員に賞を差し上げたいというのが選考委員一同の偽らざる心境であった。しかし、事務局の方では、従来の例もありこの中から更に絞り込んで欲しいとのことでその結果 白熱した議論が行われた。
 その結果、個人の部では長年外地に勤務されて特に緊急事態にある邦人保護に御貢献のあった外務省職員の方、又長年研究所に勤務されて、研究開発に不可欠の精密なガラス製実験装置作りに貢献された北海道工業技術研究所の職員の方、そしてヘリコプター飛行士として130余名の人命救助に貢献された海上保安庁の職員の方の3件と、そして、職域の部では対馬の第一線で生命の危険を冒して活躍されている厳原海上保安部と近時における大型経済事件の捜査に当たって24時間勤務で資料解析に貢献された東京地検の特別 捜査資料課を推薦することとなった。
 これらの方々こそまさに「一隅を照らす」人々であり、皆様に心からお祝いを申し上げ国民の一人として厚く御礼申し上げたい。
 なお、総裁賞受賞の方々には、宮中において、天皇、皇后両陛下に拝謁しお言葉を賜る事になっているが、誠に有り難いことであると思う。
 これからもこれらの「一隅を照らす人びと」に何卒御仁愛の大御心を賜るよう念願して選考の辞を終えたい。
 伝教大師(僧最澄)の著書「山家学生式」に曰く「径寸十枚非是国宝 照千一隅此則国宝」(お金や財宝は国の宝ではない。一隅を照らす人びとが国の宝なのである)

 (こが・けんすけ)

 
 
 
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