第12回(平成11年)「人事院総裁賞」個人部門受賞者
 
 

「ガラス製実験装置の第一人者として」

 研究支援業務であるガラス製実験装置の製作を採用以来一貫して行い、複雑高度化した各種実験に対応するためのシステムとしての装置を製作する第一人者として、研究活動への多大な貢献を果 たしたことが認められました。
 
笹森 政敬 
北海道工業技術研究所

 北海道出身。昭和38年北海道工業開発試験所(現北海道工業技術研究所)に採用されて以来、一貫してガラス製実験装置の製作に従事。平成元年より総務部会計課特殊技術専門職。妻と長女、孫の4人家族。趣味はジョギング。60歳。
 

 笹森さんは、ガラス製実験装置の製作を担当する特殊技術専門職としては全国でただひとりの現役職員です。
 採用以来のたゆまざる努力により培ってきたガラス加工や異素材接続等に関する高度な技術力に加え、研究現場に頻繁に足を運び研究者らとの対話から生み出した創意工夫、蓄積した物理、化学等の知識を駆使して製作する実験装置は、「単なるパーツを超えた」と研究者から高い評価を得ています。
 特に、「微小重力環境利用研究」において平成9年に製作した装置は、通 常1週間を要していた光半導体の結晶体製造を、約1.2秒という常識を超える時間に短縮させることに結びつき、産業界も注目する成果 となりました。

 
受賞の感想をお聞かせください

 現在まで多種多様のガラス製器具の加工とガラス製実験装置の製作に従事してきました。昨今の目ざましい科学技術の進歩に伴って、研究者から要求される実験装置も益々複雑高度化しているので、経験と技術力以外にも、工学、物理化学の専門知識や最新技術情報を把握し、一生懸命努力してきました。これらが評価され、このような名誉な賞をいただくことができたので、これまで一緒に仕事をしてきた研究者や同僚達とこの喜びを味わっています。

 
この仕事の面白さはどこにあるのでしょう
 これまで製作したガラス製実験装置は、0.01oの精度を要求するものや耐熱性、超真空性に優れたもの、複雑な形状のもの、更には、耐熱温度が異なるために単純には接合しない異種材料間の接続を要するものなど、毎回、毎回新しい創意工夫と完成までの根気強い試行錯誤が必要です。一時も息が抜けない作業の連続ですが、もともと私は「ものづくり」が好きでこの道に入りましたので、これらの苦労と努力で徐々に「作品」に仕上がっていく過程に面 白さを感じます。また、完成した装置が順調に稼働し、研究者の喜ぶ顔を見た瞬間には、苦労も忘れて満足感と充実感でいっぱいになります。
 
これまでの業務を通じて、特に苦労されたことや印象に残ったことは

 「作製は非常に困難である」といわれた高温で使用する粒子の粗い特殊なガラス(石英)フィルターを試行錯誤の末完成させましたが、この時ばかりは、何日も眠れぬ 夜を過ごしたことを覚えています。
 また、やはり今回の私の紹介でも取り上げられた実験装置が印象深いです。
 これは、超高真空中で、高温の液体金属を、落下による微小重力環境を利用して凝固させる装置なのですが、通 常の重力状態から突然宇宙空間と同じような微小重力環境になり、当初の研究者の設計どおりでは、高温金属の位 置制御がほとんど不可能でした。思案にくれたある朝、家内の鏡台の上の細い純銀製のネックレスが目に留まったのです。
 超高真空と熱に耐え、極めてフレキシブルで、非常に細いワイヤー。
 「そうだ!これだ!」と直感し、そのネックレスで実験装置を改造し、金属を溶かしてみたところ、落下実験中も安定に凝固させられることが分かったのです。その後、家内へのお詫びもなんのその、研究者の喜ぶ顔を見た時のことが、今でも忘れられません。

 
若い世代の国民や後輩に伝えたいことがおありだとのことですが
 私の従事している理化学用のガラスの分野は地味であり、研究実験装置の製作など特殊な用途に用いられるがために、あまり知られていません。
 しかし、理化学用ガラス加工技術は、我が国の科学技術の発展に絶対不可欠なものですので、ガラス工芸を愛好している若者等にこの分野にも興味を持ってもらいたいです。
 また、後輩達に対しては、常に研究者と技術サイドが車の両輪として研究を共有し、効率的な研究を行って欲しいと思っています。
 今後は、自分のこれまでの経験をいかし、後継者の育成も考えてみたいと思います。


有機合成用真空装置の組立て
 

プレート半導体製作用溶融急冷装置のガラス部材製作
 
 
 
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