第13回(平成12年)
 
 
「道は即ち貴し、美し宜んど天に上るが若く然り」
 
奥谷 禮子 
(株)ザ・アール
代表取締役社長
 

 人事院総裁賞選考委員会が開かれる日は、私にとって緊張の日である。普段はどんなところに出ても物怖じしない方なのだが、この日ばかりは別 物である。
 私のような分際で選考委員を務めるのも心苦しいのだが、出席するたびに新しい発見をさせていただけるので、貴重な機会だと思っている。こんなにも大変なお仕事があるのか、それを何十年と続けておられる方がいるのかと、ひたすら「すごいなあ」と頭の下がることばかりである。私たちが毎日を平穏無事に暮らせるのは、こういう方々がいらっしゃるからなのだと粛然とした気持ちになる。
 選考はいつも悩ましい。候補者みなさんに賞を差し上げたいと思うのだが、そうもいかず、たいていは票が割れてしまう。選考委員のみなさんも私と思いは同じらしい。
 今回、個人の部で受賞なさった森田重雄さんは、日本の低温液化機運転の草分け的存在で、一貫して、研究・開発に必要な低温寒剤(液体ヘリウムや窒素)の製造に従事なさってきた方である。我が国の極低温技術研究に欠かせない人ということである。
 同じく個人部門で受賞の大谷和男さんは、世界トップレベルのレンズ研磨技術を実現し、各方面 で技術指導を行っている点が高く評価された。
 基礎研究や基礎技術の手薄さが指摘される日本で、お二方とも貴重な社会的貢献をなさっているとして顕彰された。
 職域部門では、東海北陸地区麻薬取締官事務所イラン人薬物密売事件特別 捜査本部が選ばれた。いまや日本は麻薬や覚醒剤の大きな市場になりつつあるというが、密売組織と戦いながらそれを日夜水際でせき止めてくれている人たちである。
 もう1組、地震に関連して工業技術院地質調査所地質標本館試料調製課のメンバーが選ばれた。大型の地震が続き、底深い恐怖が日本国民の心のなかに巣くっている。地震に日夜立ち向かって研究を続けている方がいるというのは何よりの安心である。
 職域の最後の受賞者は、東海村の臨海事故で大量の放射線を浴びた患者に、献身的な治療を施された東大医学部附属病院及び医科学研究所の看護チームである。
 いざというときに、セーフティの役目を担ってくださる方がいるというのは、国民はどれだけ心強いことか。公務員が果 たす最大の役目もそこにあるような気がする。選考を終えて、今回も同じ感想である。我々は実に多くの方々に支えられて生きている、それを忘れてはいけない、ということである。
 ちなみにタイトルは孟子の言葉で、道を極めるのは貴く美しい、しかしそれは、天に上るがごとく難しい、という意味である。まさに今回の受賞者のみなさんはその天に上った方々ばかりである。

(おくたに・れいこ)

 
 
 
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