第14回(平成13年)
 
 
「根っこがなければ花は咲かない」
 
菱山 郁朗 
(社)民間放送テレビジョン
中継回線運営センター
事務局長
 

 平成11年の秋、当時日本テレビ報道局解説室長であった私に人事院総裁賞選考委員という重責が与えられた。委員の中に新聞社の論説委員がおられたのでバランスをとって下さったのだろう。
 選考委員会は静かにゆっくりと進行するが、緊張感に包まれ、熱っぽく感動的だ。候補に上がった方や職域グループが次々に紹介される。まさしく多士、多芸、多才。「縁の下の力持ち」の方々のオンパレードだ。「えっ!こんな凄い大切な仕事をしている方がいるの?」と新発見に驚いてしまう。かと思えば御苦労の多い大変な仕事を何十年も一筋に続けている方々もいる。頭が下がり、身が引き締まる思いだ。いずれも甲乙はつけ難く悩みに悩んでしまう。いっそ候補者全員に栄誉をと願うのは私ばかりではあるまい。
 今回個人部門の受賞者は2名。診療放射線技師の坂下邦雄さんはX線CT画像を用いた中性子線治療計画システムを確立して、癌患者の治癒率の向上に寄与された。電子航法研究所の横山尚志さんは電波を利用した航空機の着陸誘導装置(ILS)の研究開発に成果 を上げ、欠航率の著しい減少に貢献された。こうした方々の不断の努力が我々の生活や生命を守ってくれているのだ。
 職域部門では3つのグループが受賞した。東京税関の麻薬探知犬訓練センター室の15名はこれまで多くのハンドラーと優れた麻薬探知犬を育成し、昭和54年6月から平成13年6月までの22年で1.9トンもの覚せい剤や大麻などを押収、麻薬の撲滅に貢献した。海洋気象観測船「凌風丸」の船長以下32名は年間200日も観測航海し、暴風雨の時も昼夜を問わず海洋観測を行い、地球環境問題の解明や気象予報の精度の向上で成果 を上げている。九州沖縄農業研究センターの11名は南西諸島の最重要作物であるさとうきびの育種研究に取り組み、台風や病害に強く、糖分や収穫量 の高い優良品種の育成に優れた業績を上げた。
 こうした御立派な方々がおられるにもかかわらず「公務員の倫理」が今厳しく問われている。大蔵省や外務省で大きな不祥事が相次ぎ、国家公務員への国民の信頼は揺らいでいる。しかし、総裁賞の選考委員を経験して実感するのは、不埒な問題公務員がいるのは事実であるが、圧倒的多数の国家公務員は「国を支えている根っこであり、そうした方々の地道な努力の積み重ねがあってこそ今日の日本がある」ということだ。国作りやその土台作りに国家公務員が大きな役割を果 たして来たことは歴史的に見ても明らかである。
 花を支えているのは枝であり、枝を支えているのは幹だが、その幹を支えているのは根っこではないか。根っこはあくまで目立つことはない。どんなに美しい花も根っこがなければ咲くことは出来ない。実もならない。国を支える根っこが有為な人材によって形成され、しっかりと根をおろしていればこそいずれ花は咲き、実がなり、未来は切り開かれていくことだろう。

 
 
 
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