第14回(平成13年)「人事院総裁賞」個人部門受賞者
 
 
「体にやさしい放射線治療」
 採用以来一貫して診療放射線技師として従事し、X線CT画像を用いた中性子線治療計画システムを確立するなど、癌に対する放射線治療研究の進展に貢献したことが認められました。
 

坂下 邦雄 
放射線医学総合研究所

 石川県出身。昭和38年に放射線医学総合研究所病院に採用以来、放射線診療業務に従事。昭和63年より診療放射線技師長、平成13年診療放射線技師室長。妻と2男1女の5人家族。趣味は将棋、旅行、スポーツ観戦。58歳。
 
 
 坂下さんは、放射線による癌治療に取り組んでいる国内唯一の研究機関において、診療放射線技師としての長年の経験、知見を生かして、X線CT画像を用いた中性子線による治療計画システムを確立した。その利用により、従来に増して周辺臓器を避け中性子線を癌病巣に集中することが可能になり、治癒率の向上につながるなど、放射線治療研究の進展に貢献しました。
 
受賞の感想をお聞かせください
 今回の受賞は、長年放射線診療業務に携わってきたこと、特に患者の放射線治癒率の向上を図るための、X線CT画像を用いた中性子線治療計画システムの確立、線量 計算プログラムの開発、患者固定具の開発・改良などの仕事が評価されたことと思います。これまで一緒に仕事をしてきた、研究者、医師、同僚のご協力のたまもので、これらの方々に感謝するとともに喜びを分かち合いたいと思います。このような名誉ある賞を頂き、これからも一層の努力を重ね放射線診療技術の向上に励みたいと思っております。
 
これまでの業務を通じて、特に苦労されたことは
 昭和50年ごろ放医研が中性子線による癌の治療を始めたとき、国内では経験がなく、中性子線治療計画システムを行うためのX線CT画像を用いた基礎データの測定については、未知の分野が多かったのです。特に中性子線の人体内の分布を測定するための方法、機器、ファントム(人体と等価な放射線吸収物質)等に関して資料が少ない状況でした。その分布を測定するために各種の測定機器や、いろいろなファントムを用いて測定し、試行錯誤を重ねることに大変な時間を費やし苦労したことを今でも忘れることはできません。
 
特に思い出に残っていることは
 今回受賞したシステムの開発に関しては、治療計画用の基礎データを取るための放射線測定の際には、測定機器のセット、ファントムの準備等に長時間を要することになり、一度測定機器等をセッテイングした後に連続して行う方が能率が良いため、患者治療が終了した後の金曜日から日曜日にかけて測定を行ったことを懐かしく思い出します。
 当病院において放射線治療で完治した方と病院職員との集いなどで、若い頃照射を受けた80歳になる方から、毎日元気に過ごしていると言われたことなど、放射線治療に携わった一員として大変うれしく心に残っております。
 
国民に知ってもらいたいことはありますか
 一般に放射線は危険で怖いものと思われ、敬遠されがちです。しかし、今日疾病の検査ではX線CT検査、放射線同位 元素を使用しての核医学検査、X線TV透視検査等の画像がなくては疾病診断ができないほど病院診療に利用されています。また、放射線発生装置を利用した悪性腫瘍の放射線治療は、非手術で治療後の日常生活を損なうことが少なく、近年ますます研究開発が行われています。
 使用する放射線の物理的、化学的特性を知り、適正な管理のもとで使用すれば大変有用であることを是非知っていただきたいと思います。


X線CT画像を使用して治療計画を作成
 

患者に固定具を装着中
 
 
 
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