第15回(平成14年)「人事院総裁賞」職域グループ部門受賞者
 
 
「海上における治安の維持と不審船の実態解明に大きく貢献」
 
 平成13年12月に九州南西海域を航行していた不審船に対処するため、陸海空一体となって夜間、荒天の厳しい海象状況の中、不審船からの攻撃を受けつつも、威嚇射撃による停船措置や挟撃を的確に行いその捕捉に成功し、不審船の実態をはじめて明らかにするなど、我が国の海上における治安の維持に貢献したことが認められました。
 
 
海上保安庁第十管区海上保安本部
九州南西海域不審船対策本部
【業務内容】
 対策本部が設置された第十管区海上保安本部は、鹿児島市に本部を置き、鹿児島、熊本、宮崎の三県とその周辺水域を管轄し、南九州周辺から東シナ海に及ぶ南北約700q、東西約1,000qの広大な海域において、日夜、海上における治安の維持に努めております。
平成13年12月22日に発生した不審船事案については、同日午前1時10分頃、防衛庁からの不審船情報を入手するや直ちに巡視船艇・航空機を出動させるとともに、「不審船を必ず停船させ、犯罪がある場合は被疑者を逮捕する」との基本方針のもと、夜間かつ荒天、また、不審船からの攻撃が予測される危険な状況において対策本部職員は全員一丸となって不審船の捕捉に当たり、巡視船3隻が被弾、乗組員3名が負傷するという甚大な被害を受けながらも、同日午後10時13分、不審船が沈没するまでの長時間にわたり、不審船への対応に当たりました。
【代表者】 対策本部長  今井 秀政
【職員数】 184名
 
 
 
受賞の感想をお願いします
 思いもよらず、人事院総裁賞という大変名誉ある賞をいただくことになり、関係者一同、心から喜び、感謝いたしております。この受賞は、184名の対策本部職員の努力のみならず、不審船対応に励んできたすべての海上保安庁職員の苦労と、国民の皆様の温かい励ましに後押しをしていただいたものであり、この名誉ある受賞を機に、今後とも職員一同研鑚に励み、国民の付託にこたえることができるよう一層精進して参りたいと考えています。
 
当時はどのような状況でしたか
 不審船対応に当たって、対策本部の状況を時間を追って説明すると次のとおりです。
 
【平成13年12月22日午前1時10分 情報入手】
 三連休初日の深夜、「奄美大島の西方海域で海上自衛隊機が不審船を発見した。」とのオペレーション当直からの報告を受け、職員緊急呼集等を行うとともに、出動勢力の把握・船隊編成指示が行われた。次々に到着する職員は一様に緊張した面持ちで、しかし、迅速的確に各自の任務をこなした。
 
【午前6時20分  航空機、不審船を発見】
 航空機が情報の船を発見し、不審船の特徴が確認されると更に緊張は高まった。「一番船の現場到着時刻は?」「海上荒天のため1時間遅れ。」幾度と無く繰り返されたやりとり。「(能登半島沖の不審船のように)増速しないでくれ。」誰もがそう思った。巡視船「いなさ」が一番船として現場到着するまでの約6時間は非常に長く感じられた。
 
【午後0時48分  「いなさ」現場到着】
 「いなさ」から「午後1時12分、停船命令開始」の報告。日本の排他的経済水域内である。「これで継続追跡ができる。」。その後2隻目の巡視船「きりしま」が到着し、無線・汽笛、マイク及び発光信号並びに警告弾による停船命令を繰り返すが、不審船は一向に停船する気配はない。
 
【午後2時36分  威嚇射撃】
 停船命令を無視し、蛇行など悪質な抵抗を行いつつ逃走する不審船に対し、「いよいよ武器の使用しかない。」緊張はピークに達した。上空・海面威嚇射撃、船体に対する威嚇射撃が手順どおりに実施された。不審船はしぶとく西向け逃走を続けたが、着実に船足を弱め、停船・逃走を繰り返すようになってきた。
 
【午後10時13分  不審船沈没】
 「このまま逃走すると中国の領海に入ってしまう。」不審船が停船したのを機に、再び逃走するのを防止するため、遂に挟撃(巡視船2隻による挟み込み停船行動)の指示が出された。荒天のためなかなか不審船に接舷できない。「不審船との距離あと2メートル、まもなく接舷する。」との報告の直後、「不審船発砲、本船被弾した。」巡視船「あまみ」ホットライン担当海上保安官の声に「エッ」というどよめきのあと一瞬その場の空気が凍りついた。次の瞬間、「正当防衛射撃実施」を本部長が命じた。午後10時9分であった。その時、現場でも、不測の攻撃に備えていた巡視船船長が「正当防衛射撃」命令を数回繰り返した。不審船は、原因不明の爆発の閃光を残して午後10時13分、あっという間に水没した。
 不審船沈没後は、直ちに海上保安官の安全を確保しつつ可能な限りの救助活動に当たるとともに、負傷した海上保安官の救護措置など矢継ぎ早の指示・報告が続いた。
 
不審船の解明はどうなっていますか
 沈没した不審船船体は、10個の台風等に作業を妨げられながらも、ようやく、平成14年9月11日に引揚げられ、約3週間にわたり、海上保安庁の爆発物処理専門家によって、泥に埋もれた船内の危険物を手探りで捜索するという極めて危険で忍耐のいる安全化作業が実施された後、10月6日に陸揚げされ、膨大な証拠物の詳細な調査等が実施されています。これまでの捜査等により、「北朝鮮の工作船」であると特定したところですが、まだまだ、捜査の途中であり、今後やらなければならないことが数多くあります。不審船の活動目的や内容などを含め、国民の安全と安心を確保するため全力で全容解明に当たる所存です。
 
今後の抱負をお聞かせください
 平成14年9月17日の日朝首脳会談において、「不審船事案については、このような問題が一切生じないよう適切な措置をとる。」旨の発言が金正日委員長からあったとの報道がありましたが、不審船が我が国国民の拉致事案、工作員の不法出入国、薬物の密輸等の犯罪に関与している疑いがあることなどから、海上の警察機関として、今回の不審船事案で得た教訓を更に活かし、引き続き同種不審船事案の再発に対する警戒を怠らず、対応能力の充実強化に努めていきたいと考えています。


不審船を追跡する巡視船
 

巡視船から不審船への威嚇射撃
 

航空機に指令を出す鹿児島航空基地職員
 
 
 
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