第16回(平成15年)「人事院総裁賞」個人部門受賞者
 
 
「献体者に対し畏敬の念を抱きつつ」
 採用以来一貫して、解剖学実習用遺体の処理に従事し、卓越した技術による防腐処理・保存管理、実習の円滑な実施、献体遺族への誠実・温厚な応対等により関係者から高い信頼を得るなど、解剖学教育・研究に貢献したことが認められました。
 


相原 功 
山形大学

 山形県出身。昭和49年に山形大学に採用以来、正常解剖用遺体の処理業務に従事。平成13年4月技術専門官。平成6年日本解剖学会功労賞、平成14年医学教育等関係業務功労者表彰。妻と二女の4人家族。趣味は将棋、スポーツ観戦、カラオケ、卓球。58歳
 
受賞の感想をお聞かせください
 今回の受賞は、山形大学医学部の開設間もない時期から、長年解剖学実習用遺体の処理業務に従事したことを評価いただいたものと思います。
 この業務は、一般的にあまり知られていませんが、今日まで、献体された御遺体の確保や長期保存のために行う防腐処置の技術はもちろんのこと、当該業務に携わることにより、解剖学を通じて学生が医学・医療・自然科学に対しての倫理観や心構えも同時に学び養えたものと考えており、この医学教育の原点である解剖学の重要性が今回の受賞を通じて認められたことに対し意義深く思っております。
 私は山形大学の一職員としてこのたびの受賞は大変うれしく、医学部、当研究室歴代の諸先生、事務職員の方々や同僚の技術部職員皆様からの御指導、叱咤激励があればこそと感謝申し上げます。
 
この仕事のやり甲斐は
 教官の指導のもと、学生たちが実習しやすい保湿力のある最良状態の解剖体により行われる解剖学実習風景を目の当たりにしますと、遺体の防腐処置、保存状態の確保に少しの自信と充実感に浸ります。
これまでの業務を通じて、特に苦労されたことは
 現在では「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律」により、全国各大学の医学部及び歯学部内に事務局等が設置され、献体に関する環境が整備されていますが、設立当時は、解剖学実習用遺体が少なく、県下では「献体」という意味すら認知されず、「腕一本」、「脚一本」でも実習に活かす必要がありました。そのため、ビルからの投身自殺者や火災死亡者の遺体活用の可否について現場での確認、また、厳寒期の山奥で死亡した老人の遺体を引き取るため午前二時に現場に到着し、大学への搬送後凍結状態の遺体の解凍を待って行った防腐処置、時には駅構内のトイレで発見された嬰児の遺棄遺体の引き取り等、時間、曜日を問わず献体の確保に奔走したことなどがあげられます。
 
特に思い出に残っていることは
 創設当時から当研究室では、実験(私は顕微鏡標本作製を担当)のためにラットやマウスなどを飼育していますが、中でも産まれた卵を研究するために飼っている十姉妹による鳴き声がいつもにぎやかで、飼育室に安らぎを覚えたことが懐かしく思い出されます。
国民に知ってもらいたいことはありますか
 私達は病気になれば必ず医師にかかり、この体のすべてを預けることになります。
 私たちの体のすべてを知るため、医学や歯学の教育を受ける学生たちにとって人体を解剖する実習は絶対に必要ですが、解剖学実習に欠かすことの出来ない解剖体は決して充分ではありません。死後の遺体を解剖学教育や研究のために寄贈する献体は、医学、歯学のため、良い医師を育てるために、まことに尊い意義のあることで、献体は自分の意思で、無償で行うことでありますから、社会にとってもこれ以上の善意はありません。
今後の抱負をお聞かせください
 今までに接してきた1、128体の献体に対する独特の緊張感と献体者に対する畏敬の念は永遠です。そして、この大切な職務について、後継者育成の機会があれば、継承に力を注ぎたいと考えています。
 また、いずれ現役を退きます。微力ながら今後とも良き理解者である妻共々、社会に何かしらお役に立てればとの思いでおります。


防腐処理:献体の血管にホルマリン水溶液を注入
 

防腐処理後の献体保存状況を点検
 
 
 
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