第16回(平成15年)
 
 
国家公務員への期待はますます大きい
 
山路 敬三 
日本テトラパック株式会社
取締役会長
 

  初めて人事院総裁賞選考委員の委嘱をお受けしたとき、私の頭に一つの記憶が閃いた。それは昔、私が大学の物理学教室に在籍していた頃、教室地下の工作室におられた何人かの腕利きの技能職員のお顔である。新しい物理現象を追求するには新しい実験装置が要るが、どんなに難しい装置でも、ラフスケッチさえお見せすればそれを実現して下さったのが、この地下室の住人であった。私もその恩恵を受けた一人だったが、ノーベル賞級の研究をなさっていた先生も同じであったと承知している。このような方々の隠れた高い技能のご奉仕に、いつの日か報いたいと念願していたが、産業界に転じた私にはその機会がなかった。選考委員への委嘱をお受けしたとき、永年の夢を実現できると感激したのである。
  選考委員の皆さんも、国家公務員への大きな期待を持って臨んでおられたに違いない。委員会の議論はいつも白熱する。期待が大きいので、この位のことは国家公務員としては当然やって頂けるのではないかということになり、評価は自ずから厳しくなる。私が選考委員を拝命して以来、この傾向は年々高まってきたような気がする。これは世情が厳しくなるにつれ、国家公務員の働きが大きなセーフティネットとして期待されるからだろう。
  今回、個人部門の受賞者は2名。南部隆次さんは永年の間、偽変造旅券対策に携わり、新しい鑑識機器や新しい日本旅券の導入などを手掛けてこられた。日本へのテロの波及が伝えられる今、不審者の入国を水際でゼロにして頂くことを期待している。
  解剖献体保存の相原功さんのお仕事には委員一同意表を突かれた感じで感嘆。日本の医療技術はこういう方の力で支えられている。この方のご努力に対しても、医療界はミス根絶を誓ってほしいと思う。
  職域部門では3部門が受賞。アジア極東犯罪防止研修所18名の方は、多年にわたりこの地域の刑事司法部門幹部職員の研修に当たられ、卒業生の中からは帰国後、法務大臣や検事総長等の枢要ポストに就く方もお出になったり、また刑事司法制度も日本をモデルとして制定されるなど、国際犯罪に対抗する良い協力関係を構築された。
  SARS対策専門家チーム医師6名は、病名も予防法も治療法も未解明の初期に、身の危険も顧みず、現地に飛込んで感染防止に努め、その征圧と日本への侵入防止に成功された。今年の冬もSARSが日本で発生しないよう、このチームの方々のご活躍に期待している。
  海上保安庁羽田航空基地の113名のヘリコプターチームは、第7回に受賞された羽田特殊救難隊とペアになって、身の危険も顧みず、荒天時に出動し、既に600名近い方を救助されている。
  最近、いろんな事件が世間を騒がせているが、私は今でも日本は世界で一番安心で安全な国と信じている。この安心・安全は、国家公務員の皆様が支えてこられたものと感謝しているが、今後もこの状態が続くように、皆様の一層のご尽力を期待したい。

 
 
 
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