第16回(平成15年)「人事院総裁賞」個人部門受賞者
 
 
「不法入国の阻止を目指して」
 旅券の偽変造等に対する鑑識技術の第一人者として、高性能の文書鑑識機器の開発・導入、研修等を通じた入国審査官の文書鑑識能力の向上、東南アジア諸国等への協力、偽変造防止技術を駆使した日本旅券の導入に尽力するなど、不法入国者の水際防止に貢献したことが認められました。

南部 隆次 
東京入国管理局

 熊本県出身。昭和43年4月に法務省広島入国管理事務所に採用。昭和61年に東京入国管理局成田空港支局に勤務し、平成12年より偽変造文書対策室長。妻と一男一女の4人家族。趣味は読書、バードカービング。53歳
 
受賞の感想をお聞かせください
 大変名誉ある賞を賜りまして、ありがたいという気持ちと同時に、本当に私が頂いてよいのだろうかという思いがいたしております。なぜなら、これまで入国管理局の文書鑑識業務の起ち上げに携わった人達をはじめとする先輩、同僚を含めた入国管理局職員全体に支えられて今日があるからです。
 今回の受賞は、コツコツと積み上げてきた歴代の偽変造文書対策室スタッフ全員の努力が評価されるとともに、これからの私達の仕事に対して温かく激励して頂いたものと、感謝の気持ちで受け止めたいと思います
 
この仕事のやり甲斐は
 私達が取り組んでいる仕事は主に偽変造旅券の発見です。旅券は一冊の冊子に過ぎませんが、素材である紙、印刷、製本、糸、接着剤、多種多様な偽変造防止対策の様々な技術の集合体です。これを一つ一つ調べていけば大変奥が深く、好奇心が強い私にとっては飽きることがありません。また、旅券はモデルチェンジとともに常に変化(進化)しています。この世界は偽造する側との「いたちごっこ」の状況で、偽造する側は私達に対して常に無言の挑戦状を突きつけているようなもので、偽造旅券が出入国審査で発見されるたびに絶えずその手口を変え、あるいは偽造の精度を上げるなど修正を加えてきます。
 偽造旅券を見ながら偽造する側の狙いはどこにあるのか、といった推理をしていくのも面白いところです。
これまでの業務を通じて、特に苦労されたことは
 当初は、偽変造の痕跡を発見した場合に旅券を鑑識するための専用機器がないため、市販の機器を流用していましたが、偽変造の判断は外国人の入国許可の根本に関わることであり、一歩間違えば国際問題に発展しかねないので、今では当たり前のことである偽変造の判断結果を誰もが理解できる形で記録に残すことなどに苦心しました。
 実をいえば、私はこの業務に就くまでは、アナログ人間の代表みたいなもので、職人的な仕事を自負していました。実際、鑑識業務は経験がものをいうところが多く、パソコンにすらろくに触ったこともないほどでしたので、偽変造文書対策室で仕事をするにつれてこれではいけないと、自分の頭を切り替えなければなりませんでした。
 
特に思い出に残っていることは
 10年近くこの業務に従事して特に思い起こすことは、平成13年5月に発生した偽造ドミニカ旅券を行使した不法入国事案発生から9・11の米国同時多発テロ以降の環境の劇的な変化です。それまで偽変造旅券の発見は、世間には知られない縁の下の力持ちを自負していたのですが、それ以降、一躍脚光を浴びることとなり、スタッフは増え、機器類も揃うなど、急激な変化に戸惑っているというのが実感です。これほどの変化は30年を超える私の「入管」人生の中でもなかったことで、やっと国全体の危機管理意識の高まりを実感する安堵感が湧いたのも事実です
 
国民に知ってもらいたいことはありますか
 今、世界中に出回っている偽変造旅券の大半は紛失・盗難・売買旅券を流用したものです。偽造する側が作る偽造旅券の元となる旅券を断てば、不法入国事案は減るということになります。
 また、偽変造旅券で不法入国した外国人は様々な犯罪に関わる率が高いという統計もあり、「水と空気と安全はただ」という時代ではありません。国民一人一人が自分を、そして国を守るために旅券の取扱い一つにも細心の注意を払っていただきたいと思います。
今後の抱負をお聞かせください
 まだまだ私どもの偽変造文書対策室は力不足なのですが、これからも各国と協力し合いながら恥ずかしくない仕事をしなければならないと思っています。そのためには私ども偽変造文書対策室の更なる組織強化とスタッフ一人一人の質的向上が欠かせません。現状は、偽造する側の攻勢に対してまだまだ受身の感があり、入国管理局で偽変造文書対策室があるのは成田空港と関西空港だけですが、体制が手薄な地方空港が狙われており、全国の玄関を等しく強化するなど問題は山積しており、これからもスタッフとともにプラス思考で明るく仕事に取り組んでいきたいと思います。


不審な箇所に大型顕微鏡を用いて詳細検査
 
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