第17回(平成16年)
 
 
志高き人たち
 
箕輪 幸人 
フジテレビ解説委員
 

 テレビのコメンテーターというのは、とかく知ったかぶりをしたがる。世の中で知らないことはない、そんな雰囲気をプンプンとさせている輩もいる。そうしたコメンテーターの端くれの一人が、人事院総裁賞の選考委員を委嘱され、己の無知に気づかされた。
 「こんな仕事をしている人がいるのか」、候補に上った人たちの仕事ぶりを知るにつれ、驚きは尊敬へと変わっていく。「とかく公務員は・・・」などと、わかったようなことを言っていた自分が情けなくなった。その上、選考委員という重責がさらに重くのしかかる。
 一方、委員としての喜びもある。それは、国民の支えになっている人たちの仕事ぶりを知り、心に秘めている高い志に触れることができることだ。
 今回の選考でも、候補として各省庁から選りすぐって推薦されてきた個人部門の二人と職域部門の六団体の仕事ぶりからは、公務員としての使命感が伝わり、その優劣はつけがたいものだった。そうした選考委員の悩みを反映したかのように、個人部門は候補の二人がそろって受賞。外務省の田附富雄さんは、モンゴルに三度勤務するなど、厳しい勤務環境の中で、一貫して邦人の保護に尽力されてきた。咄嗟の機転をいかした対応は、頼もしい外交官として国民の信頼を厚くする。また、造幣局の押谷政春さんは、造幣設備全般の保守・維持管理にあたるとともに、各種機器の改善・考案に実績をあげてきた。同じ技術者として、大國昌彦選考委員長から「メンテナンスをしながら工夫していくことは大変なことだ」との言葉があったことを付け加えておきたい。
 そして、職域部門の受賞は三団体。第五管区海上保安本部下里水路観測所は、所長以下わずか六人の職員が二四時間、屋外での勤務を主とした人工衛星レーザー測距観測を行い、地震の予知研究などに貢献している。また、千葉東病院摂食機能向上委員会は、重症心身障害児らが食べることの楽しみを抱くようにと「摂食機能療法」を確立し、他の病院とも連携するなど、社会福祉に大いに寄与している。そして、平成一五年七月の宮城県北部地震の際、余震が続く中で、被害を受けた堤防の応急復旧作業にあたり、二次災害の防止に尽力した東北地方整備局北上川下流河川事務所鹿島台出張所。
 選考にあたって、民の厳しい目線があったことは言うまでもない。だが、それをはねのけるだけの仕事ぶりがあった。
 公務への信頼は、その仕事ぶりにある。日常の公務に埋没した仕事師たちを発掘し、光をあてれば、信頼は自ずと形作られていくにちがいない。各省庁が多くの候補者を推薦することを期待する。
   (人事院総裁賞選考委員)

 
 
 
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