第17回(平成16年)「人事院総裁賞」個人部門受賞者
 
 
「信頼される貨幣の安定供給を支えて」
 造幣局に採用以来、貨幣製造設備等の保守・維持管理の業務一筋に従事し、常に新しい知識の習得と技能の研鑽に努め、卓越した技能を発揮し、また、各種機器の改善・考案に多くの実績をあげ、国民に信頼される純正画一な貨幣の安定供給に貢献したことが認められました。

押谷 政春
(独)造 幣 局

 滋賀県出身。昭和四三年四月に大蔵省造幣局に採用以来、貨幣製造設備の保守・維持管理に従事。平成一二年四月に製造部工作課作業長(現在貨幣部施設課保全第二係作業長)。昭和五七年科学技術庁長官賞、平成一五年大阪府優秀技能者表彰。母、妻、二女の五人家族。趣味はドライブ、写真撮影、卓球。五五歳。
受賞の感想をお聞かせください
 大変名誉で過分な総裁賞をいただき、感謝と格別の喜びを感ずるとともに驚きと戸惑いは隠せません。私よりずっと優秀な人達が多数おられるという思いの中、このような栄に浴することができたのは、ひとえに造幣局幹部の方々を始め、先輩・同僚の皆様方の多年にわたるご指導ご支援の賜物であり、ここに厚くお礼申し上げます。
 受賞にあたり、今までこつこつ積み上げてきたことを改めて思うとともに一層の精進を重ね、今後とも純正画一な貨幣造りのお役に立てるよう努めてまいりたいと思います。
 
この仕事のやり甲斐は
 入局以来、貨幣製造設備等の電気関係の保守・修理の業務一筋に従事してきました。
 平成八年に大阪本局の貨幣製造一貫工程が廃止となり、広島支局へ集約され、大規模な機械設備の修理は少なくなった反面、成形・圧印・検査工程などに自動搬送集積設備やコンピュータによるシステム制御管理が導入され、メンテナンスが複雑化しました。著しい技術の進歩に対応するためには新たな知識の習得と技術の向上に励まざるを得なくなりましたが、それを目標として取り組むことが新たなやり甲斐となりました。このような最新設備が突然止まり、私が所属する保全係で修理し、設備が順調に動き出した時の気分は最高のものです。
 修理して稼動するまでには、部厚い電気図面等を見比べながら要因や原因を調査し、見つけ出して修理することは容易ではなく大変なことですが、これもやり甲斐の一つです。また、故障の再発防止対策や安全対策等の改善について研究し、実現できた時は充実感もあり面白さも倍増され、やり甲斐につながります。
これまでの業務を通じて、特に苦労されたことは
 入局してすぐに工作課電気係に配属されましたが、当時は、先輩からの直接指導はなく技術は盗めという時代でした。初めて見る設備や未経験の修理作業への戸惑いは大きいものでしたが、上司や先輩の技術を見つつ、理解できない作業方法や技術等は書店の店先で専門誌を立ち読みし、理解できるまで通いました。それでも満足な理解を得られない場合は、休暇を利用して能力開発センターや電機メーカーなどの講習会等に出かけ勉強しました。そのため、余暇や趣味に休暇を利用することがほとんどできませんでした。パソコンの十六ビット機が出始めた頃、コンピュータ時代の到来と興味が重なり、お金を工面して購入したこともあります。
 これらは、エンジニア・保全マンを目指して自分に投資してきたものであり、特に若い時に将来を見据えて、仕事や知識の習得に頑張ってきたことは苦労とは思っていませんでした。
 
特に思い出に残っていることは
 一番の思い出は、昭和五五年頃に、熱間圧延機の電気制御盤が老化したため、新たな盤の製作と配線の取替えという大きな作業を二年間費やして行ったことです。毎日が古い図面との葛藤であり、作業が完成し運転できた時の感動、その時ご指導願った先輩のことは今でも忘れることはできません。
 
国民に知ってもらいたいことはありますか
 造幣局は、我が国経済の根幹をなす貨幣の安定的な供給のほか、国の文化を象徴する記念貨幣や収集用貨幣セットの販売、熟練した技術による勲章及び金属工芸品の製造、貴金属製品の品位証明など国民の皆様に深く関わりのある事業を行っています。
 造幣局ではこれらの事業を効率的に運営するために、自動機械化の推進や人員削減等によるコスト削減、研究開発、技能・技術の習熟とその伝承、後継者の育成等、民間企業に劣らないよう積極的に推進しているところです。
 また、春には、造幣局構内の一部を一週間開放し、桜の通り抜けとして国民・地域の皆様に桜見物を楽しんでいただき、大阪の春の風物詩となっています。
今後の抱負をお聞かせください
 民間企業においてはリストラの実施等により、優れた職人がいなくなり空洞化時代になったとの情報を見聞きします。造幣局においても、新規採用が控えられ若い技術者の卵が少なくなりました。それに対応するには当然ながら現在の作業者の更なる技術の習得と質の向上が求められています。
 そのため、課内研修に取り組んでいますが、高年齢者等を指導し、習得してもらうことは大変難しいことです。あせらず、気楽に、基本を重点に置き、適宜実技も折込んだ、序々にレベルアップできる楽しみの多い研修を進めたいと思っています。
 私もあと五年で定年退職を迎えますが、少ない期間において私の浅学な知識と経験による技術を後輩に伝えることができれば幸いに思います。


貨幣圧印機制御板部品を取替え修理
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