第17回(平成16年)「人事院総裁賞」職域グループ部門受賞者
 
 
「日夜行う宇宙間三角測量」
 下里水路観測所は、我が国の正確な位置を把握するため、市街地から離れた勤務地において、不規則な夜間かつ屋外勤務を主とした人工衛星レーザー測距観測を行い、その結果、明治初期の天文観測による日本列島の位置のずれが判明するなど、世界的な測地基準の構築や地震予知に貢献したことが認められました。
 
第五管区海上保安部 下里水路観測所
【業務内容】
 下里水路観測所は、「那智の大滝」で有名な和歌山県東牟婁郡那智勝浦町にあり、前身は、昭和一九年に地磁気の定点観測所として設立された紀伊勝浦観測所で、昭和二七年からは新たに天文観測を開始したことに伴い、名称を勝浦水路観測所と改めました。
 昭和二九年、付近に建設された鉄骨建造物が地磁気観測の障害となったため、より郊外に下里水路観測所として地磁気観測部門を移転し、続いて昭和三四年に天文観測部門を移転しました。
 その後、当時の国鉄紀勢本線が電化され地磁気観測の障害となったため、昭和五三年に地磁気観測部門は八丈島に移転しました。昭和五七年からは新たに人工衛星レーザー測距による測地観測を開始し、現在に至っています。
【代表者】 所長  長 岡   継 
【職員数】 6名
 
受賞の感想をお聞かせください
 職員及び家族一同、大変光栄なことと感謝するとともに、これまで当観測所において観測業務に携わってこられた諸先輩とそのご家族の方に敬意を表したいと思います。
 また、今回の受賞は、海上保安庁の測量・観測部門である海洋情報部(旧水路部)関係職員がこれまで様々な分野で測量・観測に地道に取り組むとともに、日々の業務に専心してきたことが評価されたと考えており、全海洋情報部職員、更には自然環境の厳しい中にある下里水路観測所の維持運営に尽力いただいている第五管区海上保安本部の人事・施設・経理補給などに関わる職員と共に喜びを分かち合いたいと思います。
 
この仕事のやり甲斐は
 当観測所では、測地観測として人工衛星レーザー測距観測を行っています。これは、人工衛星を基準点とする「宇宙間三角測量」で、数千キロ上空の人工衛星に向けてレーザー光を発射し、衛星に反射されて戻って来る僅かな光を捕らえ、その往復時間を一兆分の一秒まで計ることによって人工衛星までの距離を数センチの精度で測り、観測点の位置を地球規模で正確に求めるものです。長年の観測結果から、地球のプレート運動によって当観測所の位置が西北西に年間約三センチずつ動いていることも明らかになりました。
 このように、宇宙空間を隔てたマクロ的な距離を測り、地球規模で位置を測定するという独特のスケール感がやり甲斐です。
業務を行う上で、特に苦労されることは
 天文観測は当然ながら夜間の作業であり、また、測地観測についても対象となる多数の人工衛星が昼夜を問わず不規則に飛来します。
このため、夜勤が多いことに加えて勤務時間が不規則となることから、職員の健康管理を第一に考え、また、いかにして業務効率を良くするかが最も苦労するところです。
特に思い出に残っていることは何ですか
 人工衛星レーザー測距観測は世界各国の約四〇ヶ所で行われていますが、これらの観測局の中で代表的な観測対象である「LAGEOS(ラジオス)」という測地衛星について、平成一六年二月期の測得データ数で世界一となったことが、最近の最も印象深い出来事です。
 これは、気象条件及び観測装置の性能や観測体制等に関して世界トップクラスの観測局に比べて不利な条件の我々にとっては「大金星」であり、決して狙ってとれるものではありませんが、我々の情熱と努力が実を結んだ結果であり、非常に嬉しく、その後の自信となる出来事でした。
国民に知ってもらいたいことはありますか
 海上保安庁といえば巡視船や航空機による海上警備・救難活動という印象を持たれがちですが、海上交通の安全確保に不可欠な海図や航海暦等の刊行、様々な安全情報の提供、灯台等の航路標識の維持・管理、海上交通管制等の任務を遂行しています。
 当観測所で行っている天文観測は、航海暦の基礎となる天体暦の精度検証が目的であり、測地観測は、海図の測量基準を国際基準(世界測地系)に常時結合させておく必要があるため、国際協力の下で共同観測を行っています。また、測地観測の成果は、巨大地震の発生原因の一つとされるプレート運動による地殻変動を検出することに役立てられており、地震防災にも有効に活用されています。
今後の抱負をおきかせください
 今回の受賞は、諸先輩から我々に受け継がれてきた仕事への情熱と、より良いデータを取得しようとする日々の努力が実を結んだものであると思っています。
 また、下里水路観測所開設五○年という節目の時期の栄誉ある受賞ですが、これまでの職務遂行に対する評価というだけではなく、今後とも職務に専心することを期待して授与されたものであると認識し、今後とも引き続き、より良いデータを取得することに努めることは無論のこと、自身の健康管理にも万全を期し、今後携わる全ての職務に全力で取り組むことで国民の奉仕者たる公務員として国民の信頼に応えてまいりたいと思います。
屋外での人工衛星レーザー測距観測
 
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