第17回(平成16年)「人事院総裁賞」個人部門受賞者
 
 
「法邦人の安心は現地で築いたネットワーク」
 気候、 風土、医療事情、治安等の勤務環境が極めて厳しいモンゴルに三度勤務するなど長年にわたり在外公館に勤務し、事件、事故に遭遇した邦人のために全力で対応し、また、本省においても援護班長として海外での大規模事故等の際に大使館等との調整、指示を迅速適切に行うなど、邦人保護の充実強化に貢献したことが認められました。

田附 富雄
外 務 省

  長野県出身。昭和五一年五月に外務省に採用され、モンゴルに三度勤務したのを始め、ジャマイカ、チェコなど約二〇年を在外公館に勤務。平成一六年二月より在サンフランシスコ日本国総領事館領事。妻と三女の五人家族。趣味は油絵、ゴルフ。特技として指圧・鍼灸の資格を持つ。六〇歳。
 
受賞の感想をお聞かせください
 この度の人事院総裁賞という栄誉ある受賞には大きな驚きと戸惑いを感じています。邦人援護業務を長年担当し、当然の職務として行ってきたことが今回の受賞につながったとうかがい大変感謝しています。
 厳しい環境の在勤地では、その都度在留邦人の方々と良好な関係構築に努め、また任国の方々とも非常に友好的な人的環境にありました。また、それを人一倍努力してきたと自負もしております。この栄えある受賞に当たり、改めて身が引き締まる思いであり、今後も在留邦人及び邦人旅行者の安全確保のために、精一杯貢献していく所存です。
 家族を長い間日本に残した在外勤務が続いておりますが、この受賞が私ども家族の絆を一層深く、強くしてくれることに心より感謝申し上げます。
 
この仕事のやり甲斐は
 海外で邦人が命に関わる事件・事故に遭遇した場合は、最優先で対応する心構えでいます。旅行中にスリ被害に遭う事例が極めて多く、その連絡は領事の携帯電話に年末年始であろうと週末祭日であろうと深夜であろうと入ってきます。旅程の関係で早い帰国を希望する被害者に旅券の再発給、盗られて無一文の方への対応、被害の状況を把握した時点で一刻も早く帰国できるよう遂行できたとき、仕事の充実感を味わうことができます。また、事故に遭遇したご遺族の心情を支えることも領事に与えられた仕事の一つです。月日が過ぎ、ご遺族から便りをいただくことがありますが、「あのときの励ましがあったお陰で・・・」の一言に接したとき、領事の仕事のやり甲斐を感じます。
 被害に遭われた方は海外にあって困っているのですから、その事実を真摯に受け止め、自分にでき得る限り対応する、つまり軽快なフットワークで対応すべしと肝に銘じております。これは、外務省の諸先輩から引き継がれた精神です。
これまでの業務を通じて、特に苦労されたことは
 共産党時代のモンゴルへは北京を経由し列車で行くため、丸二日間かかりました。冬はマイナス一五度から時にはマイナス二八度にもなり、加えて市内から二〇キロ以上の郊外に出るには同国政府の許可が必要であり、また、言論統制されていたモンゴルの方々との付き合いは不可能で、常に目に見えない抑圧を感じながら勤務していました。日本食は皆無で、醤油一本購入するにも、日本あるいは香港から購入しなければならない状況でした。大使館業務を続ける傍ら、もし手術を必要とするような場合はどうするか等々を常に心配しながら生活し、食の確保と精神的健康維持に気を使う日々でした。
 最近のモンゴルは、当時と大きく変わり、日本の経済援助で道路もよくなりつつあり、生き生きとした都市に変貌しています。
 
特に思い出に残っていることは
 在勤したモンゴルで邦人学生が地方旅行中に交通事故に遭い、脳障害が懸念されたため日本へ緊急移送したことがありました。
 当時のモンゴルの医療事情では検査・治療不可能との意向を受け、患者が海外旅行傷害保険に加入していることを確認した上でシンガポールにあるアシスタンス会社と本邦への緊急移送関係の連絡を取りました。モンゴル政府機関に、緊急移送機の離発着許可と車両入場許可を取った三〇時間後、シンガポールから医師と看護師を乗せたファルコン機が夕方のウランバートル空港に着陸しましたが、事前に手配をしていた救急車は所定の時間になっても来ませんでした。日没前に離陸しなければならず、私が私用車を運転し、空港から医師と看護師を病院に送り、直ちに患者を担架ごと車内に乗せ、飛行場に向かい無事機内に運び込みました。その後、日本から後遺症も残らず回復した旨の連絡を受け安堵しました。
 
国民に知ってもらいたいことはありますか
 海外で事件・事故に遭遇する可能性は自分も含め誰にもあります。最近は、海外旅行傷害保険の特約項目(移送費用)に加入した上で国外に出る方が増えてきてはいますが、保険に未加入であったため、結果として法外な治療費や移送費が自分や家族の負担として残るケースを見るときは非常に残念に思います。外務省も種々の広報を行っていますが、海外旅行される国民の一人ひとりが「自分の身は自分で守る」との意識を持って行動していただきたいと思います。
今後の抱負をお聞かせください
 今後は、領事の広域担当官(北米・カナダ西部地域)として、これまで培った領事の経験を活かし、業務量が繁忙な公館の領事担当者に対するきめ細かい実務指導を行い、在留邦人に対する支援サービスの向上が一層図れるよう努力したいと思います。
 また、在外で発生した事件・事故について迅速かつ適切な支援ができるような官民の協力体制を構築していきたいと思います。

          
病院での医師達との打合せ
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