第17回(平成16年)「人事院総裁賞」職域グループ部門受賞者
 
 
「子供達が「食べる」楽しみを得ることを願って」
 千葉東病院摂食機能向上委員会は、我が国で初めて重症心身障害児の摂食機能向上訓練に取り組み、摂食機能の獲得・回復を図る「摂食機能療法」を確立し、今日では要介護高齢者にも活用されるなど、「食べる」ことの楽しみを取り戻し、生活の質を大きく向上させ、我が国の社会福祉に貢献したことが認められました。
 

 千葉東病院 摂食機能向上委員会
【業務内容】
 千葉東病院は、千葉市の東南部に位置し樹齢数十年の樹木に囲まれ、療養に最適な環境にあります。平成一六年四月に独立行政法人に移行し、腎疾患の高度先駆的医療並びに神経・筋疾患、呼吸器疾患、重症心身障害児の専門医療、エイズ治療拠点病院、結核の拠点病院に位置づけられ、新たなスタートとなりました。
 重症心身障害児病棟は昭和四七年に開設され、医師、歯科医師、看護師、児童指導員、保育士、栄養士、養護学校教諭など様々な職種のスタッフがお互い緊密に連携をとりながら医療と療育に力を注いできました。中でも「摂食機能向上訓練」に関しては、歯科医師を中心に摂食機能向上委員会を立ち上げ、毎年、研修会を実施するとともに、日常生活行動の一つとして口腔衛生の保持と毎食の摂食介助を行い、食事への楽しみを提供しています。
【代表者】 委員長  大 塚 義 顕 
【職員数】 13名
 
受賞の感想をお聞かせください
 昭昭和四七年に重症心身障害児を受け入れて三十有余年、私たちが日常業務として取り組んでいる重症心身障害児への摂食機能向上訓練がこのような大変名誉ある賞を受賞することになり、正直ただ感激の一言しか言い表すことができません。
私たちは、ヒトがこの世に生を受けた限り、皆平等に「食べる」楽しみを得る基本的権利があるとの考えに立ち、ひたすら職務を遂行してきました。これまで尽力され、関わられた多くの関係機関並びに諸先輩方に改めて敬意を表し、深く感謝する次第です。そして、この感激を安全で、美味しく、楽しく食事ができるように日々取り組んでいるメンバーらと分かち合い、なお一層精進せねばという思いを強くしています。
 
この仕事のやり甲斐は
 ヒトの最も基本的な欲求であり、かつ生命維持の原点である「食べる」ことを個々の状態に合わせ診断・評価し、支援することで重症心身障害児の肉体的、精神的な活動を促し、生活の質の向上が図られます。
 食事の際、重症心身障害児の満足げな笑みや日常の健康状態の改善など大きな変化がみられ、また、ご家族からの感謝の言葉、食べられるようになり、体力もつき、ご両親のもとで過ごせるようになった児の退院などは、何よりの励みであり、一番大きなやり甲斐を感じる時です。  
業務を行う上で、特に苦労されることは
 食べる機能の訓練は、当時の我が国では未知の分野であり、早期にはなかなか軌道に乗らず、隣接する養護学校の先生方やご家族の積極的な協力を得てスタートしました。当時、自食できる児は一人もおらず、全身の緊張感が強く、摂食時の顎のコントロールもできず、むせ・咳き込みが常でした。今日でも、この訓練は、訓練したからといって直ぐに結果がでるものではなく、その難しさとともに忍耐と根気が必要です。また、訓練が継続できないと摂食機能は停滞、後退してしまうため、長い視点で毎日欠かさず訓練を行うことが必要です。
特に思い出に残っていることは何ですか
 ある重症心身障害児のA君は、下顎が前に突出し、開口制限があり、口を大きく開けることができず、また、全身の緊張が強く舌の突出があり、食事の時に体の動きが固定されず、すべて食べさせるのに一時間以上もかかり、この訓練の難しさに戸惑いを感じていたところ、先輩から声をかけられ、私自身が寝ながら食べるという体験をしたことによって、声をかけてもらって摂取するときの安心感、いきなり食べ物を入れられた時の不安感、食事の姿勢、食事のペースがいかに大切かを痛感しました。 
国民に知ってもらいたいことはありますか
 重症心身障害児への摂食機能向上訓練は、児らに対する働きかけで得られるわずかな反応、十分動かすことができない筋肉で表す喜びや悲しみの表情、最後まで生き続けようとする生命力に原点があると考えています。
 健康な人にとって食事を摂ることは簡単なことで何も考えずに口に入れることができますが、重症心身障害児は一人では食べることも飲むこともできません。一人ひとりの人間性を尊重しながら健康な人に近づける努力を患児と一体となってしています。このような施設を社会の方々に是非知っていただきたいと思います。また、地域でこのような障害児に触れられたときは、一所懸命に生きている児らに声をかけて下さい。きっと素敵な笑顔が返ってきます。
今後の抱負をおきかせください
 当院に入院中の重症心身障害の患者の入院期間は一年から三〇年と幅広く、加齢と疾患による機能低下は避けられません。その中で摂食は、重症児(者)の栄養状態の確保・健康維持に欠かせない重要なものであり、歯科医師の指導の下に患者一人ひとりに合った訓練と介助の方法を組み立て、かつ定期的に評価し、技術の向上に努めています。
 今後は、地域の医療機関や福祉施設と連携して、摂食機能向上訓練を伝達普及し、重症心身障害のみならず、要介護高齢者や機能衰退のある高齢者、口腔機能に障害のある方々にも活用できるような支援体制を築いていきたいと考えています。


看護師による食事介護
 
 
 -総裁賞受賞者一覧に戻る-