第18回(平成17年)「人事院総裁賞」職域グループ部門受賞者
 
 
「巡回診療、感謝の言葉を励みにこれからも」
 沼田病院巡回診療運営委員会は、長年にわたり利根沼田地域内の山間へき地に点在する無医地区を対象とした巡回診療車による診療を行っており、地理的、気象的な悪条件を克服しながら、山間へき地の無医地区に暮らす高齢者等への医療サービスを地道に継続し、地域住民に大きな安心感を与え、医療福祉の向上に貢献したことが認められました。
 
沼田病院 巡回診療運営委員会
【業務内容】
 沼田病院は、沼田市に位置し、谷川岳、赤城山などの山々や尾瀬・日光などに囲まれたのどかで恵まれた環境にあります。二次医療圏は群馬県の3分の1弱の広大な面積で、山間へき地を擁し、約10万人が住んでいます。当院は、がん等の政策医療とともに、へき地医療拠点病院、第二種感染症指定医療機関、災害拠点病院、エイズ診療協力病院、神経難病基幹協力病院等の役割を担っています。
 巡回診療は、現在、29カ所8コースを週2回、医師、看護師、事務職員、運転手等が巡回診療車に搭乗して行っています。
【代表者】 委員長  前村 道夫
【職員数】 12名
 
受賞の感想をお聞かせください
 昭和45年に巡回診療を開始して、爾来35年間。日常業務として地道に取り組み継続してまいりましたが、このような大変名誉ある賞を受賞することは、正直、ただ感激の一言です。
巡回診療の今日があるのは、草創期当時の当院職員を始め、周辺1市2町6村(直近の合併により1市1町3村)広域圏の様々な方々の熱意と努力があったからこそであり、様々な障害を乗り越えてきた先人の貴い使命感に負うところが多大です。
 これまで巡回診療に尽力されかかわられた多くの方々、関係機関並びに諸先輩方にあらためて敬意を表し、深く感謝申し上げる次第です。そして、この感激を職員一同共有し、なお一層の精進に結びつけるべく、今後の日常業務に励み専念したいとの思いを強くしています。
 
この仕事のやり甲斐は
 巡回診療は山深い山間へき地に車で出向いて行う診療ですから、「わざわざ遠い街中まで移動しなくても済む」と特に高齢の方には大変感謝され、また、「巡回診療のおかげで長生きできる」などと言われ、大きな励みになりました。深々と雪の降る日は、路面の雪と悪戦苦闘し、定刻を大幅に遅れて到着することもしばしばありました。そんな時でも屋外でじっと我々の到着を待っていた多くの患者は不満を言うどころか、この悪天候によく来てくれたと感謝され、来る道中の苦労も一瞬で吹き飛び、こんなにも我々を頼りにしている方がいることに大きなやり甲斐を感じました。
業務を行う上で、特に苦労されることは
 今でこそ道路が整備され危険箇所はほとんどありませんが、以前は細く曲がりくねった、一歩間違えば崖下に落ちるような悪路を通行せねばならず運転手の腕を頼りに巡回診療に出かけておりました。
 また、当時は地域に配備された除雪車が不足していたため、冬場山間部はほとんど除雪されておらず、今のように四輪駆動ではなかった巡回診療車は雪深い日には度々立ち往生し、その都度職員が懸命に雪かきをしてなんとか巡回診療地にたどり着いていました。
特に思い出に残っていることは何ですか
 除雪などの車外行動がすぐできるようにと冬場の巡回診療は職員全員長靴とズボンをはいて搭乗したこと、雪の重みで車両の通行を妨げていた木の枝をどけようと巡回診療車の屋根に登った職員が道路に転落したこと(大事には至らなかった)など、冬場の雪にまつわる思い出はいくつもあります。
 また、巡回診療に来ないため徒歩で自宅まで様子を見に行ってお亡くなりになっているのを発見したり、診察時に具合が悪い方を、救急車さながら病院まで運んだこともありました。
国民に知ってもらいたいことはありますか
 近年の道路整備や自家用車の普及によって山間へき地の交通事情はかなり改善されてきましたが、過疎進行に伴いバス路線は廃止縮小を余儀なくされ、自家用車を利用できない住人にとっての交通事情は決して良くはありません。
 少子高齢化が進む中、へき地では高齢者だけで生活している世帯が増加していますが、こうした世帯の大部分は自家用車を利用できない方々です。近隣に住む家族や隣人が移動面で手助けをしている場合も多いのですが、家族や隣人にも高齢化の波は押し寄せるため、支援にも限界があります。道路事情がいくら改善されても、自家用車がいくら普及しても、自分が住んでいる地区から一歩外へ出るのが容易ではない多くの山間へき地住人がいることを知っていただければと思います。
今後の抱負をおきかせください
 当院の存在意義は地域住民の健康管理にあり、当院の基礎は巡回診療から成っているといっても過言ではありません。多くの先人たちの苦労が結集されて今日の当院や巡回診療が存在するわけで、その先人たちの思いを我々は引き継いでいかねばなりません。今後、少子高齢化社会が進めば以前にも増して巡回診療の必要性は強まると考えられます。採算性の問題や過疎による受診者の減少、医師不足など、巡回診療をめぐる状況は厳しいのですが、当院の原点に帰ってこれら困難を克服するとともに、職員一同今回の人事院総裁賞受賞を励みに、より良い巡回診療をめざして努力したいと思っています。

巡回診療車内で診察を待つ患者
 
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