第20回(平成19年)「人事院総裁賞」職域グループ部門受賞者
 
 
受刑者の再起に向けて半世紀にわたり教育に情熱を注ぐ
 松本少年刑務所処遇部企画部門教育担当は、我が国で唯一の刑務所内中学校において、50年余りにわたり義務教育未修了の受刑者に基礎的な学力を与えてきました。きめ細かな指導で、学力を向上させることはもとより、努力の積み重ねの大切さや達成時の喜びなどを伝えて受刑者の更生意欲を高め、その円滑な社会復帰と再起に貢献したことが認められました。
 
法務省 松本少年刑務所 処遇部企画部門 教育担当
【業務内容】
 松本市立旭町中学校桐分校は、松本少年刑務所内に昭和30年4月に設置され、現在、処遇部統括矯正処遇官(教育担当)以下10名の教育職員が中心となって運営しています。
 桐分校は、全国の義務教育未修了の受刑者の中から希望者を募集して中学3年生に編入学させ、1年間中学生として勉学を続け所定の課程を修了した者に対し、旭町中学校の卒業証書を授与しています。日本で唯一の刑事施設内の公立中学校として、開校以来長きにわたって義務教育未修了の受刑者に基礎的な学力を付与し、また彼らが社会生活に適応するための能力を育成してきました。
【代表者】 和田 実 統括矯正処遇官 
【職員数】 10名
☆受賞の感想をお願いします
 桐分校において行う教育活動、そして人間としての関わりが、受刑者の改善更生及びその社会復帰に役立っていることを評価していただいたと理解し大きな喜びを感じています。
 今回の名誉ある賞の受賞に際し、「学校教育を授け、社会生活に必要な資質を具備させることが大切である」との信念の下、桐分校の設置に尽力していただいた方々の先見性と並々ならぬ努力とその後も関わり続けていただいたすべての方々に深く感謝いたします。
 さらに、今この瞬間も「学びたい。」「勉強をしたい。」と考えている全国の受刑者にとって大きな励みになるものと考えています。
 
この仕事のやり甲斐は
 勉学意欲にあふれて応募してきた生徒に対して、時には厳しく、時には優しく接し教えていくことにより、生徒の表情や考え方、物事に取り組む姿勢が変化していく様子を実感し、体感できることが一番のやり甲斐です。生徒達の勉強に対する純粋な思いを見る度に、ひとつのことに真剣に取り組むことの大切さを日々実感しています。
業務を行う上で特に苦労されることは
 まず第一に、生徒はそれぞれ様々な生育歴、犯歴を有していることなどから、入学時は多くの生徒の学力が低く、また、各生徒の学力格差が大きいことです。学習自体を軌道に乗せるための指導が困難な場合が多くあります。
 次に、対人関係につまづいたり、学習についていけない等の理由から中途で退学したいという者もいます。しかし、桐分校は、義務教育未修了受刑者の最後の救済の学校と考え、一人ひとりの心情把握に努め、きめ細かな指導や面接指導等により、激励、説得を行い最近16年間では一人の退学者も出していません。
特に思い出に残っていることは何ですか
 ある生徒がこんな感想を述べていました。「接する人達が皆本当に優しく、懲役受刑者の立場を忘れてしまいそうです。人間らしい扱いを受ければ、自分の中にも人間味を少しでも育ててみようとするのが当然です。松本へ着くまでは、かりかりしていて、人間嫌いの状態が続いていましたが、温かい同期生や先生方に接して、ほのぼのとした、自然な状態に戻ることが出来ました。」生徒は、入学当初は、険しい顔つきをしていることが多いですが、生徒や職員との触れ合いの中で次第に、柔和な顔つきになっていく姿が印象に残っています。
今後の抱負をお聞かせください
 桐分校が誕生し51年が経過した平成18年5月に、「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」(現在は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」と改称)が施行され、作業及び改善指導とともに、受刑者に対する矯正処遇の三本柱の一つとして教科指導が位置付けられたことで、桐分校の重要性や必要性が改めて見直されたと思います。今後も、当所にある石碑「継続は力なり」のとおり、今まで以上に献身的な指導により、多くの受刑者に基礎的な学力を付与し、彼らが社会生活に適応するための能力を育成することで、円滑な社会復帰に貢献してまいりたいと思っています。

桐分校における授業風景
 
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