第20回(平成19年)「人事院総裁賞」職域グループ部門受賞者
 
 
世紀を超えて富山平野を守る−日本の砂防技術は立山で生まれた−
 立山砂防事務所水谷出張所は、生活の著しく不便な地において、多年にわたり、砂防事業を実施してきました。社会から隔絶された地で合宿しながらの勤務は、大変な精神的労苦を伴いますが、「日本の砂防技術は立山で生まれた」と言われるほどの困難な砂防事業を行い、富山平野を土砂災害から守ることに貢献したことが認められました。
 
国土交通省 北陸地方整備局 立山砂防事務所水谷出張所
【業務内容】
水谷出張所は、世界有数の急流河川である常願寺川の上流部における砂防工事を担当するため、昭和26年に富山県の立山カルデラ(火山活動などによってできた東西6.5q、南北4.5qの窪地)の出口である水谷平(標高約1,120m)に設置されました。
 この砂防事業は、1858年の大地震による鳶山の崩壊により堆積した大量の土砂が大雨の度に流出し、甚大な土砂災害をもたらしてきたことから、明治39年に富山県によって着手された後、大正15年に国直轄とされ、開始以来約1世紀にわたり実施されています。
 水谷出張所への交通手段は立山砂防工事専用軌道(トロッコ)と林道のみで、いずれも立山砂防事務所から約2時間を要することに加え、豪雪地帯のため冬期は工事ができないことから、職員は毎年6月から11月初旬までの約5ヶ月半の間、立山カルデラに上山し合宿所で生活しております。
【代表者】 吉村 明 出張所長
【職員数】 4名
☆受賞の感想をお願いします
 今回の受賞は、生活が著しく不便な人里離れた地において合宿生活を行い、厳しい自然や気象と闘いながら砂防事業を遂行された先輩方や施工業者の皆様、また、職員の生活を支えてくれた賄いの方、看護師の方々の労苦に対して贈られた栄誉だと思います。また、全国で砂防事業に従事している職員にとっても励みになるものと思っています。
 
この仕事のやり甲斐は
 砂防事業の進捗により、国民の生命と財産が守られていることを実感できることです。昭和44年の集中豪雨は富山県に大きな被害をもたらしましたが、白岩砂防堰堤をはじめとする数々の砂防施設はその機能、効果を十分に発揮し、下流域を土砂災害から守っています。現在、設置された砂防施設は100基を超え、砂防施設の効果が遺憾なく発揮されていると思います。
業務を行う上で特に苦労されたことは
 立山カルデラ内は少量の雨でも落石、崩落が起こる荒廃地であり、大雨が降ると土石流が発生する危険が高いことから、常に気象状況に留意し、職員及び作業員の安全に配慮しています。土石流が発生すれば人命にかかわるため、降雨時における資材運搬道路の通行止や工事中止の指示は迅速な判断が求められます。工事中止は、その後の工程に大きく影響しますが、人命第一と考え決断しています。
特に思い出に残っていることは何ですか
 昨年、国土交通大臣が管内を視察された際、100年にわたり人知れず自然の脅威に立ち向かう砂防工事が続いていることに深い感銘を受け、職員一同に激励の言葉をかけていただいたことが一番の思い出です。また、合宿生活は、職員が家族同様の生活を送ることで一体感が生まれ、不便な生活環境の中でも楽しく過ごせることが思い出として残ります。
国民に知ってもらいたいことはありますか
 日本有数の観光地である立山黒部アルペンルートの隣りにありながら、人々の目に触れることのない立山カルデラにおいて、絶えず危険と隣り合わせという厳しい環境の下で、長きにわたり砂防事業に携わってこられた諸先輩の労苦は計り知れないものがあったと思います。砂防工事が、深い山の中で粛々と行われ、下流域に住む人々の安全を守っていることを是非知っていただきたいと思います。
今後の抱負をお聞かせください
永年にわたる砂防事業により立山カルデラには緑が復元しつつあります。一方、未対策の部分では土石流が発生するなど依然として荒廃した状況であり、引き続き砂防事業を継続していかなければなりません。
地道な公共事業ですが、諸先輩が残された業績と砂防技術を後世に伝えるとともに、これからも下流域の富山平野に暮らす人々の生命と財産を災害から守るため、職員一丸となって業務に精励していきたいと思います。 

日本一の高さを誇る白岩砂防堰堤
 
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