第21回(平成20年)
 
 
舞台裏にスポットライト
 
大島まり
東京大学(情報学環・生産技術研究所)
教授
 
 私たちは、成功や華やかで目立つことに目を向けがちである。しかし、舞台と一緒で、表舞台には着目するが、表舞台を支えている舞台裏にはなかなか目を向けないものである。このたび、人事院総裁賞の選考委員を拝命し、選考委員会に初めて参加した。当初は、際立った実績を持つ、表舞台に立っている人を評価し選考するものだと思っていたが、選考のための資料を受け取り、目を通していくうちに、その考えを改める必要があることを悟った。 選考に際しては、個人部門の四名および職域部門の十六団体の候補から絞り込んでいく必要があり、どの候補者も甲乙つけがたく、非常に困難であった。多くの意見と議論が交わされた結果、今年は個人部門から三名、そして職域部門からは二団体が選ばれた。
 個人部門については、まず一人目は、海上犯罪捜査の第一人者として数多くの事件解明に貢献するとともに、独自に「航空事故捜査マニュアル」の作成や「判例等データベース」を構築した海上保安庁の寶井允宣氏が選ばれた。二人目は、貨幣の板厚を純正画一に製造する圧延作業に一貫して従事し、貨幣製造に貢献してきた造幣局の佐藤実氏である。最後に、小児喘息の治療や管理のレベルアップに努め、喘息死亡者数を激減させるとともに開かれた重症心身障害児(者)病棟を実現させるなど、医療・教育の充実に貢献した国立病院機構福岡病院の西間三馨氏である。この三名に共通することは、各人の仕事の第一人者であるとともに、自分の与えられた職域を越えて、次の世代に向けて自らの知見や経験をまとめガイドラインやマニュアル化を進めてきた点である。このことにより、後世にノウハウが伝承されるとともに、技術のレベルアップに寄与しているということで、満場一致で選ばれた。
 職域部門では、日本最南端の孤島である沖ノ鳥島の海岸保全事業を、厳しい自然環境条件の中で実施し、侵食の危機にある国土を守り経済水域の保全に貢献している国土交通省沖ノ鳥島保全事業実施グループが選ばれた。そして、「何時でも、何でも断らない救急医療、全診療科受入れ」を実践し、また救急救命士に対して気管挿管・薬剤投与実習などを行い、救急医療従事者の資質向上に貢献している国立病院機構熊本医療センターの救命救急センターが選出された。厳しくまた過酷な労働条件であると考えられるが、不断の努力によって国民の安心・安全に貢献する仕事内容と仕事ぶりに、大変感動した。
 努力やがんばりが軽んじられている昨今、舞台裏でこのように真摯にコツコツと仕事をされている方々にスポットライトを当てることは大変重要なことである。この選考委員会を通して、受賞者だけでなく多くの方々が国家公務員として日本そして私たち国民の生活向上に貢献し、通常目に触れることのない舞台裏で地道に仕事に打ち込んでいる姿に触れることができ、大変感銘を受けた。このような動きは、私だけでなく多くの人に対しても、仕事への励みになるとともに、これからもがんばろう!という原動力になるのではないだろうか。

 (人事院総裁賞選考委員会委員)
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