第22回(平成21年)
 
 
品格ある仕事
 
秋山咲恵
株式会社サキコーポレーション
代表取締役社長
 
 初めて選考委員を拝命した時の感動は忘れられない。
 公務員といってもこれだけ様々な職種と厳しい環境での勤務があるとは。候補となった方々の一つ一つの仕事は全て永年にわたるひたむきなものであり、選ぶということが困難なことに感じられた。顕彰実施基準には、対象者として「一般職」「多年にわたり」「同一の職種に従事し、不断の努力により」「生活の著しく不便な地に勤務」「精神的・肉体的労苦の多い勤務」といった言葉が並ぶのであるが、いずれも「公務の信頼を高めることに寄与した」ことが求められる。つまり品格が必要なのである。
 折りしも政権交代を機に公務員に対する社会の風当たりの強い昨今、引き続き選考委員を拝命し、活発な議論の中からとりわけ優れた個人部門1名と職域部門4団体を選ぶことができて本当に嬉しく思う。
 個人部門は、独立行政法人国立公文書館業務課修復係長の有友至氏が選ばれた。日本の歴史的公文書管理は国際的に見ても遅れている。またここ数年の行政文書に関わる問題にも対応すべくその役割の重さは年々増している中で、伝統的技法の承継にとどまらず、新たな修復技法も確立された。国の歴史を支える個人として申し分のない仕事ぶりである。
 職域部門は、法務省民事局総務課登記情報センター室が、登記制度の信頼性を確保するための登記事務システム化において、約20年にわたる決して単純作業では済まない地道で手間のかかる仕事を完遂されたことで選ばれた。
 財務省沖縄地区税関石垣税関支署与那国監視署が、日本最西端の島にたった一人の国の常駐行政機関としての勤務をされていることから選ばれた。このことは、歴史的にも地理的にも密貿易のリスクの高い場所の国境配備が、これで本当にいいのだろうかという問題意識が提起されたことを記しておく。
 「海の掃除屋」として、瀬戸内において浮遊ゴミや流出油の回収作業を行っている国土交通省四国地方整備局海洋環境整備事業実施グループが選ばれた。夏場の炎天下、冬の風浪などに加えて、強烈な悪臭と闘いながらの正に3K仕事で、航行船舶の安全性や海洋環境に貢献し続けてこられたのである。
 そして、海上保安庁第三管区海上保安本部千葉ロランセンター南鳥島ロランC局。船舶の安全航行に必要な電波航法システムであるロランCの無線設備を保守運用するため、一般住民もいない絶海の孤島で、ライフラインを自ら確保しながらの勤務はさすがに過酷である。この仕事は近年のGPSシステムの普及などにより、その歴史的使命を終えることとなった。長年の過酷な仕事に敬意を表して最後の年に選ばれた。
 受賞された皆様には心よりのお祝いを申し上げるとともに、このような品格のある仕事が、各職域でこれからもずっと継承されてゆくことを願ってやまない。

 (人事院総裁賞選考委員会委員)
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