第22回(平成21年)「人事院総裁賞」個人部門受賞

 

 

国民共有の知的資源、歴史的公文書を500年後、1000年後の未来に

 有友さんは、歴史公文書等の修復技法に創意工夫を施し、良好な状態で後世に残すとともに、修復技術を国内外に広めるなどアーカイブズ文化の発展に貢献したことが認められました。

有 友  至

独立行政法人国立公文書館
 業務課 修復係長

 昭和554月に国立公文書館に採用。以来、公文書等の修復業務に従事。
 平成144月から現職。家族は、妻と二人の息子。趣味は車、温泉めぐり。59歳。

受賞の感想をお聞かせください

  突然受賞を知らされ本当に驚いたというのが、本音です。
 時間が経つにつれてこの素晴らしい賞をいただけた実感と喜びがわき出てきました。
 今回は個人部門での受賞とのことですが、私を通じて私を支えてくださった国立公文書館の職員の方々、また全国で修復保存に携わっている方々全員への励ましと声援をこのような形でいただいたものと感じています。

 

この仕事のやりがいは

 公文書の修復は、紙質の違い、記録方法等、非常に多くの要素にかかわっていかなければなりません。
 和紙は虫に喰われて穴だらけになり、昭和20年代に作成された洋紙の文書は、酸性化でポロポロ崩れていく。日本の歴史記録を後世に残すためには、これら放置すれば一年ともたず滅失するかもしれない資料を、わずかでも欠けるようなことのないよう注意深く作業を進めていかなければなりません。
 劣化した資料を修復し、国民の皆様へ劣化した資料を手にとって触っても問題のないように直し、利用して喜んでもらえるのが、一番の励みになっています。 

これまでの業務を通じて特に苦労されたことは

 修復作業には、伝統的な修復方法(裏打ち等)がありますが、やはりかなりの養成期間が必要になります。
 作業の効率化を進めるために、リーフキャスティング(日本製)という欧州で開発された機械を導入しましたが、マニュアルもない状態での設置のため当初は、試行錯誤の連続でした。現在は、導入後10年を過ぎ、和紙、洋紙、竹紙(中国に多い)等ほとんどの紙に対応可能なところまで、漕ぎつけました。 

特に思い出に残っていることはありますか

 やはり海外からの研修生の受け入れになります。
 初回のガーナ国から始まり、インドネシア国・アチェ州、アフガニスタンなど三ヶ国からの研修生の受入れを行い、文化の違いに戸惑いを覚えましたが、大変貴重な経験を積ませていただきました。
 なかでも、アフガニスタン公文書館職員の言葉は、印象深く残っています。「我々はアフガンの歴史を後世に残すために日本の修復技術を学びにきた。」
 経済的に文化遺産に予算をまわせない国では、身近のものを使用しての修復しかできません。日本の修復技術は、刷毛、糊、紙といった最低限のもので作業をこなすことができるので、こういった国の内情に適した方法です。
 同じように文化遺産を残そうと、努力しているインドネシアのアチェはご存じのように津波で多くの方が亡くなり、公文書館等も人員・設備に多大な被害を受けたそうです。しかし、現在、イスラム教の本の修復作業を行うなど、多くの損害資料を修復する努力をし、東京外語大、ドイツ・ライプチヒ大などの支援を受け、修復実績をあげています。
 自国の歴史を残そうと努力している方たちに日本の修復技術を体得してもらい実際に結果が出ていることが本当にうれしく、言葉がうまく通じなくとも心の通う友ができたことが、一番の思い出になっています。


国民の皆様に知ってもらいたいことはありますか

日本は和紙の文化が長く、丈夫で長期間の保管ができると考えられていると思います。しかし、ある時期に作られた洋紙は、保存するのが非常に難しいものです。数十年の経過により触れればポロポロ崩れていくようなことが起こることはなかなか理解されないことと思います。こうした洋紙を用いたものの保存にはかなりの困難を伴うようになってきています。
 国立公文書館は、歴史資料を守り、国民の皆様に利用していただくため修復・保存に力を入れています。これらの作業は、機械化が難しく、人手や時間がかかる地道な作業ですが、今後とも丁寧な作業を心掛けていきたいと思います。

今後の抱負をお聞かせください

 日本の歴史記録を残すためにも、全国の公文書館への修復部門の設置が重要視されていかなければならないと思いますので、これからも修復保存に係る技術の向上に貢献させていただき、また後継者の育成にも力を注ぎたいと思っています。



 部分的虫直し作業の様子

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