第23回(平成22年)
 
 
人事院総裁賞選考を終えて
 
樋口 公啓 
東京海上日動火災保険株式会社
相談役
 
 人事院総裁賞の選考委員長を拝命して5年目になった。我々男性4名、女性3名、計7名からなる選考委員の仕事は、個人部門・職域部門の候補の中から、受賞候補を選定することである。
 選考委員会の当日は、全委員が事前に配付された資料を丹念に読み込み、それぞれに勉強した結論をもって集まる。選考委員の多様な経歴を反映して、議論は毎度百出する。それぞれの委員は自らの経験・知見を踏まえ全く違った視点からの結論を披露するが、不思議にもその結論が取捨不能の如くに分かれることはほとんどない。
 選考委員の多様な経歴をもってしても、個人や職域の候補そのものが多岐多分野にわたることからその評価が分かれることがある。しかし、委員の意見が出尽くしていくにつれ、全員が納得できる方向に自然と定まってくるように思える。
 23回目の本年度もこうした経過を経て、個人部門では、鹿児島県霧島市にある陵墓「高屋山上陵(たかやさんじょうりょう)」を単身で守って30年余の岩元氏、インフルエンザワクチンの臨床研究と普及に尽力された国立病院機構三重病院長の庵原氏の両氏が、職域部門では、膨大かつ貴重な日本古来の図書を注意深く後世に引き継ぐという地道な仕事に携わってこられた宮内庁書陵部図書課図書寮文庫出納係の皆さん、温室効果ガスという今日的な話題ながら既に約四半世紀も前から厳しい地理的環境の中で取り組んでこられた岩手県所在の気象庁大気環境観測所の皆さんの2部門が受賞となった。
 選考のプロセスに一言触れておけば、選考は全て選考委員会に一任されている。人事院事務当局の役割は、選考対象候補とその関連資料の提示に徹し、委員会の議論に加わることは全くない。人事院総裁、幹部の方々も、全ての選考が終了後入室してこられ、選考委員会の報告を受けて初めて我々との懇談に加わってこられる。
 今回受賞された皆さんは、全国津々浦々で黙々と地道な作業に従事されている公務員の代表としてふさわしく、最終的には全員一致での推薦となった。いずれにせよ、候補に挙げられた個人の方々と職域とも、各選考委員が改めて目を開かされ、思わず粛然とするようなご活躍ぶりであり、その中から特定の候補にしぼることには、今回もまた畏怖の念をすら共有するところであったと思う。したがって議論の過程では各候補につき色々な光が当てられ、受賞の結果に到らなかったことを惜しむ声も一再ならずあったことを付け加えておきたい。
 選考委員会に臨むつど人事院総裁賞の意義を改めて噛み締めさせられているわけであるが、日本の各地で我が国とその社会を支えられている多くの公務員の方々の献身的なご努力に対し、ここで重ねて心からの敬意と謝意を捧げたい。

 (人事院総裁賞選考委員会委員長)
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