第23回(平成22年)「人事院総裁賞」個人部門受賞

 

 

新型インフルエンザワクチンの臨床試験を主導し、蔓延防止に尽力

  庵原さんは、新型インフルエンザワクチンの臨床試験を主導することにより、国産ワクチンの早期開発を実現し、安全で安心な国民生活の向上に貢献したことが認められました。

庵 原 俊 昭 氏 (61歳)

独立行政法人国立病院機構 三重病院長  

 

回総裁賞を受賞されましたが、どのようなお仕事に従事されているのですか。なかでも予防接種、
  ワクチンの臨床研究では、どのような研究を担当されたのですか。

 三重大学小児科に入局後、水痘ワクチンの研究を行い、水痘ウイルスの研究で留学しました。昭和63年に国立療養所三重病院に赴任後は、小児急性病棟の病棟主任として、肺炎、胃腸炎などの小児急性疾患医療を若手医師と一緒に行いながら、麻疹の病態について研究を行いました。

平成4年に副院長就任後は、外来診療を行いながら地域の小児科医と共同で、麻疹ワクチン、おたふくかぜワクチンの研究を行いました。平成17年に院長就任後も、病院管理と外来診療を行いながら、同年には「MR(麻疹風疹混合)ワクチン二期接種の免疫原性および安全性の研究」を行い、この成果を受け、平成18年4月からMRワクチン二期接種が開始されました。

平成20年には高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1ワクチンの研究を行い、プレパンデミックワクチン事前接種の検討資料を提供しました。

 

長年にわたり予防接種、ワクチンの臨床研究に従事されてきて、思い出に残っているエピソードはあ
  り
ますか。

最初の思い出は、恩師の井澤道先生(元三重大学学長)や神谷齊先生(国立病院機構三重病院名誉院長)に協力して白血病の子どもに水痘ワクチンを接種する研究を行い、日本では多くの反対があったものの、アメリカの方で先に業績が認められたことです。このとき、アメリカは先入観なくフェアに業績を評価する国と感じました。

次の思い出は、MRワクチン二期接種の研究を行うに当たり、三重県の小児科医に協力をお願いしたところ短期間に多くの保護者の協力が得られ研究がスムーズに進み、翌年にはMRワクチン二期接種が始まったことです。このときの厚労省の素早い対応には感心しました。
 最後のエピソードは、平成21年の新型インフルエンザワクチンの接種回数の問題です。最終的には成人は1回接種で決着しましたが、研究データを的確に評価できる人が少なく、研究者の孤独を感じました。

院長業務に加えて小児科外来の診療もご担当されてお忙しいと思いますが、臨床研究はどのように
 
進めてめていらっしゃるのですか。

臨床研究は一人でできるものではありません。MRワクチン、おたふくかぜワクチン、水痘ワクチンなどの研究は三重県下で開業している小児科の先生方や国立病院機構三重病院の職員の協力を得て進めています。また、インフルエンザワクチンの臨床研究では国立病院機構本部医療部研究課(現・総合研究センター)や国立病院機構病院の職員の方々、ワクチンメーカーの方々の協力で進めました。長い臨床研究生活の中で培った人とのつながりが臨床研究遂行のサポートとなっています。

平成21年4月発生した新型インフルエンザに対応するワクチンの臨床研究は、限られた時間の中で
  の戦いだったと思いますが、結果を出すため心がけたことはどのようなことでしたか。


この研究は国立病院機構が行った医師主導研究ですが、新型インフルエンザウイルス出現時から新型インフルエンザワクチンを接種するに当たっては臨床研究が必要と判断し、ワクチンが提供される前から研究計画を準備していました。また、国立病院機構は独立法人化後治験を推進するシステムを構築し、治験のノウハウを蓄積していました。今回の新型インフルエンザワクチンの臨床研究は短期間に結果を出す必要があったため、国立病院機構の病院に協力を依頼しました。日頃の臨床研究の積み重ねにより短期間に研究成果が得られたと思います。

今回受賞された感想をお聞かせください。

今回受賞を知った時はただ驚くばかりでした。医師になってから日々続けてきた臨床研究が認められたことを素直に喜んでいます。私の臨床研究は、無理な依頼にもかかわらず気持ちよく協力してくれた三重県下の小児科の先生方、先生からの依頼に快く協力してくれた保護者の方々と子どもたちを抜きには成しえませんでした。また、インフルエンザワクチンの研究は、国立病院機構本部医療部研究課(現・総合研究センター)をはじめ国立病院機構職員の協力により成し遂げられたものです。私の臨床研究を支えて下さった人たちとともに、この栄誉を受けたいと思っています。

最後に国民の皆様へメッセージをお願いします。

臨床研究は国民の協力により成しうるものです。多くの人の協力が短期間に得られると、その成果は短期間に医療現場に反映され、国の施策にも反映されます。ドラッグラグとかワクチンギャップとか言われていますが、国民の協力なしにはこの現実を克服できません。日本の医療レベルを高めるためには国民の協力が必要です。ご協力をお願いします。

研究に従事する姿
小児外来での診療
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