第23回(平成22年)「人事院総裁賞」職域部門受賞

 

 

     温室効果ガスを観測して約四半世紀、
     地球温暖化問題の科学的解明に貢献

 

  大気環境観測所は、 厳しい勤務環境の下、国際的な技術水準の確保に努め、長期にわたる温室効果ガスの観測により、地球温暖化問題の解明に貢献したことが認められました。

 

 

     気象庁 地球環境・海洋部 環境気象管理官付
     大気環境観測所

【代表者】 須藤 幸男 所長

【職員数】 5名

 

 

 

今回総裁賞を受賞されましたが、大気環境観測所ではどのような観測を行っている
  のですか。

  大気環境観測所は、岩手県大船渡市の太平洋に面した人里離れた小高い山の中腹にあり、地球温暖化の原因となる二酸化炭素、メタンなどの温室効果ガスをはじめ、上空のオゾン層を破壊する原因物質であるフロン類や、日射を遮ったり雲の生成に寄与したりして気候に影響を与える大気中の細かなちり(エーロゾル)など、地球環境や気候に関連する大気中の微量成分の観測を行っています。


現在では地球温暖化の原因として注目されている温室効果ガスの観測を24年前
  に開始された背景についてお聞かせください。

  昭和30年代から行われていた南極点やハワイでの観測から、昭和60年頃には、大気中の二酸化炭素が年を追って増えていることが分かっていました。しかし、当時アジアでは研究としての二酸化炭素の観測は一部で行われていましたが、定常的に観測しているところはなく、二酸化炭素濃度の地理的な分布と変動を把握するには、不十分な状況でした。地球規模での二酸化炭素の分布や変動の実態解明に貢献することを目的として、昭和62年1月に当観測所で、アジアで初となる二酸化炭素の定常観測を開始しました。


アジアの中で最長の記録とのことですが、観測データは地球温暖化対策にどのよう
  に活用されているのでしょうか。

 当観測所は、ユーラシア大陸と太平洋の間に位置し、両者の影響を受けるため、陸上の森林や海面を通じての二酸化炭素の吸収量や放出量を評価するのに適した観測データが得られます。その観測データは、世界気象機関の「温室効果ガス世界資料センター」を通じて全世界の研究者に公開されており、それを利用した科学論文が数多く発表されています。
 また、当観測所の観測データも用いた世界平均の温室効果ガス濃度の解析結果は、毎年開催される国連気候変動枠組条約締約国会議で配布されるなど、地球温暖化対策を検討するための基盤的な情報として利用されています。

温室効果ガスを観測する機器はどのようなものですか。

二酸化炭素が特定の赤外線を吸収する性質を利用し、赤外線を照射してその減衰量から二酸化炭素の濃度を分析機器により観測します。一方、メタンなどは、分子の種類によって物質中の移動速度が異なることを利用した分析機器を用います。観測に使用する機器は、百万分の一から十億分の一といった非常に僅かな濃度の変化を検出することのできる大変複雑で精密な機器です。


市街地から離れた場所で観測されている理由をお聞かせください。

 世界気象機関の全球大気監視計画は、温室効果ガスなどの地球規模での状況を長期間にわたって観測することを目的としていますので、同計画に貢献する観測所は、できるだけ人間活動の影響を受けにくく、周辺の環境変化が少ない場所に設置することが望ましいとされています。当観測所は、仙台市から100キロ以上、大船渡市の市街地から約10キロ離れており、庁舎の周辺には人家や工場などがありませんので、大変良い立地条件にあります。その反面、職員の生活環境という面では、不便さを感じることもあります。

人里離れた官署で勤務するご苦労があればお聞かせください。
 当観測所の生活用水は庁舎敷地内の沢水をろ過・殺菌したもので、取水口の日常的な点検、清掃が欠かせません。沢や取水口の周辺には、マムシやクマが生息していますから、点検・清掃の際には、長靴、クマ除け鈴、ヘルメットを必ず着用します。
朝夕の通勤は、未舗装で一車線の山道(市道)を車で20分ほどかけて登り降りします。大雨で路面が傷んでいたり、強風で木が倒れていたりして車が通れなくなった場合に備えて、スコップやチェーンソーなどを常備しています。大雪が降って登庁に苦労することも年に何度かあります。

今回受賞された感想をお聞かせください。
  温室効果ガス自体は、私たち人間に直接的な害をもたらすものではありませんが、地球環境にとっては、じわじわと体をむしばむ生活習慣病のようなものと言えます。私たちの業務は、血糖値や血圧を測っているようなもので、直接の問題解決にはなりませんが、地球環境の健康管理をする上での基礎になるものだと思います。そのような地味な業務を高く評価していただき、このような立派な賞をいただけたことは、大変光栄なことと感じております。

最後に国民の皆様へメッセージをお願いします。

  温室効果ガスの増加によってもたらされる地球温暖化は、人類の将来にかかわる重要な問題となっています。今回の受賞を励みとし、精度良い観測データを今後さらに10年20年と積み重ねることを通じて、地球温暖化などの地球環境問題の解決に少しでも貢献し続けたいと思っています。今後ともご理解とご支援をよろしくお願いいたします。
最後になりましたが、当観測所業務へのご理解とご協力をいただいております大船渡市の皆様に感謝申し上げます。


 

観測装置の清掃

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