第24回(平成23年)「人事院総裁賞」職域部門受賞

塀のない造船場で、地域と融和し、受刑者の社会復帰をたゆまず支える

  大井造船作業場は、外塀や鉄格子のない施設で24時間体制の泊込勤務を行い、50年間にわたり受刑者の円滑な社会復帰を支え、矯正行政への国民の信頼を高めることに貢献したことが認められました。

法務省 松山刑務所 大井造船作業場

【代表者】 阿部 誠治 場長

【職員数】 12名

☆松山刑務所大井造船作業場とはどのような施設なのですか。

 

 大井造船作業場は、外塀や鉄格子がない民間企業の敷地内で、受刑者の自覚や、受刑者と職員との信頼関係を基調とした本格的な開放処遇を日本で初めて実施した構外泊込作業場です。同作業場は、株式会社新来島どっくから、敷地内に泊込施設を付設し提供いただくなど、同企業の協力を全面的に得ながら、受刑者に一般の社会人と共同で作業させ、大幅な自治活動を認めることで、社会性の育成と社会生活への適応能力のかん養を図るとともに、充実した職業訓練を実施して各種資格を習得させることで、健全な社会復帰ができるよう努めています。

☆平成23年で開設50周年とのことですが、これまで開放的処遇を行うことでどのような成果を挙げられているのですか。

 

 大井造船作業場は、昭和36年9月19日に運営を開始して以来、3,547人の受刑者が就業しており、そのうち、仮釈放者は2,517人(平成23年6月末現在)と多く、その再犯率も低く抑えられるなど、受刑者の改善更生及び社会復帰に著しい効果を挙げています。これは、受刑者だけで自治会を構成させ活動を行わせるといった、受刑者の自律心や責任感を養う独自の処遇を展開してきたことに加え、職員が24時間体制で受刑者に接し、面接、生活指導及び夜間の集会指導等を行うことで受刑者の心情の変化を把握し、問題を抱える受刑者には個別に働き掛けるなど、たゆまずきめ細やかな処遇をしてきたことの成果だといえます。

自治会活動(班別会議)

☆造船場で受刑者はどのような作業をしているのですか。また、一緒に作業されている民間の従業員の方々の受刑者の評価はいかがですか。

 

 船体の一部となる部材の溶接作業、ガス切断、グラインダー作業を行っています。民間の現場監督者は受刑者を部下として、一般社員は受刑者を同僚として接しており、資格・免許の取得試験の前には、民間従業員の方々が講義や実技講習の講師となって受刑者の受験勉強を全面的にバックアップしてくれています。受刑者の謙虚な態度に感嘆し、部下として、あるいは同僚として受刑者を温かく見守ってくれています。

☆地域住民の皆様に受け入れられるよう様々な努力をされていますが、地域との交流や地域の声についてお聞かせください。

 

 開設当時は、懲役受刑者に対する忌避感があったと聞いていますが、50年の歴史の中で受刑者と職員の努力の結果、地域に受け入れられています。開設以来継続している町内清掃奉仕の際には、「おはようございます。ご苦労さま。」と声を掛けてくれます。受刑者も「おはようございます。」と笑顔で挨拶する、ごく普通の風景が見られます。また、受刑者の活動を発表する文化祭には、老若男女かかわらず地域から多数の方々に御来場いただき、彼らの活動に温かいまなざしを向けていただいています。

近隣地域の清掃活動

☆大井造船作業場でやりがいを感じることができるのはどのようなときですか。

 

 当場が開放的処遇施設とはいえ、厳正な刑の執行場所であることに変わりはありません。従って、受刑者として守るべきさまざまなルールがあり、作業場の雰囲気になじまない者が出てくることもあります。彼らの夜間の表情や態度で気持ちが沈んでいると感じた時は、激励の言葉を掛けるようにしています。
 やがて表情が明るくなり出所の日を迎える頃になって、「あの時に声を掛けてくれなかったら今の僕はありませんでした。あの笑顔に救われました。」と晴れ晴れとした顔で話してくれます。その姿を見て、この者は、もう刑務所に戻るようなことはないだろうと確信するのですが、その時が刑務官という職業を選択して良かったと感じる瞬間です。

☆今回受賞された感想をお聞かせください。

 

 このような立派な賞をいただき、大変光栄です。今回の受賞は、先輩諸氏と株式会社新来島どっくの関係者の方々の努力のたまものであって、改めて敬意を表したいと思います。また、受刑者の改善更生のため、家族と離れた泊込施設で治安維持の最後の砦として使命感に燃えて黙々と勤務する刑務官の業務を高く評価していただくとともに、自信と誇りを与えてくださり、本当にありがとうございました。今後も輝かしい伝統を受け継いで、日々努力を続けたいと思います。

☆最後に国民の皆様へメッセージをお願いします。

 

  私たち刑務官の職務は、我が国の治安維持の最後の砦として、刑を執行するということと、受刑者を改善更生させ社会復帰させるという二つの大きな目的があります。受刑者は刑期が終われば、必ず地域社会に帰ります。刑期が終了するまでの間、受刑者に対しては改善更生のための様々な処遇が講じられますが、再犯を防ぐためには地域社会に受け入れられることも重要です。国民の皆様には、再び地域社会に戻り、新たな道を進もうとする出所者を、温かい目で見守ってくださいますようお願いしたいと思います。

受刑者の作業風景

受刑者との面接

-総裁賞受賞者一覧に戻る-