第24回(平成23年)「人事院総裁賞」個人部門受賞

1,400℃の輻射熱下における貨幣溶解作業に尽力

  谷野さんは、純正画一な貨幣の製造を行うため、高温の輻射熱の下での溶解・鋳造作業に長年従事し、貨幣品質の向上及び安定に貢献したことが認められました。

谷 野 嘉 明 氏 (60歳)

独立行政法人造幣局 広島支局 溶解課 総括作業長

☆溶解課の業務や谷野さんが従事されているお仕事の内容をお聞かせください。

 

 溶解課の業務は、貨幣を製造する最初の工程です。溶解課には、材料、溶解及び鋳造という3つの工程があります。貨幣には品位割合が定められていることから、この品位となるように材料を配合し供給する材料工程があり、次に配合された金属を高周波電気炉(4トン用)により、約50分で溶湯とする溶解工程、絶え間なく溶解炉から溶湯を連続鋳造装置の鋳型で鋳塊とする鋳造工程があります。貨幣の品位は、高温で金属を溶解し鋳造することにより決定されるため、後で調整ややり直しができない大変重要な作業です。

☆溶解作業は高温で危険を伴うものと思いますが、どのような作業環境なのですか。

 

 溶解作業は、金属を溶かして鋳型に流しこむ作業ですが、素材によっては、1,400℃の高温の溶湯からの輻射熱にさらされる作業もあります。冬といえども、汗をかかずしてできる作業ではありません。溶解炉と鋳造装置が連動する作業であることから、装置の騒音で声が聞きづらくても手や目で合図して、意思疎通を図って作業を行っております。

溶湯温度の確認作業

☆現在は作業現場の統括責任者として、日々どのような点に配慮されているのですか。

 

 同じ勤務時間帯に働く16名の作業員の責任者として業務を行っていますが、始業前のミーティング等を利用して、常に部下の健康状態の把握に努めています。部下と短時間での会話、例えば「おはようございます。」という言葉の中でも、常に顔色や体調を伺うようにしています。
 また、勤務が二交替制勤務であることから、一直勤務においては、前日の設備の稼働状態の把握、二直勤務においては、現在の設備の稼働状態の把握に努めて得た情報を、部下に必ず周知して、安全な作業ができるように心がけています。

☆平成12年度には500円硬貨の改鋳が行われましたが、どのような役割を果たされたのですか。

 

 新しい材料の鋳造を行うには、本局研究所にある小型の溶解設備で操業条件の設定等のテストによりデータの蓄積・分析を行い、大量生産に向けた準備を行いますが、市中で流通している500円貨幣を白銅からニッケル黄銅へ短期間で改鋳することが求められたことから、十分な準備期間もなく、新たな溶解及び鋳造作業を確立しなければなりませんでした。
 500円ニッケル黄銅貨幣に対する偽造抵抗力は、最新の技術を盛り込むこととなり、貨幣に要求される規格の設定を行うため、短期間に配合の異なるテストを行うとともに、多量のサンプルを採取しての基準値設定に必要な作業を行いました。

500円ニッケル黄銅貨幣

☆谷野さんにとって仕事のやりがいとはどのようなものですか。

 

 溶解作業は1,000℃を超える高温の金属を扱う作業であり、また、連続鋳造装置により鋳造していることから、常に溶解炉から溶湯を流し続けることが求められます。これらを全て管理するためには、溶解作業独特のセンスのようなものが必要になりますが、一つの兆候でも見逃した場合、連続鋳造作業が停止し、数時間の復旧時間がかかる場合もあります。また、常に安全作業ということが求められていることから、自分自身は当然として、部下の作業についても注意を払う必要があります。作業がトラブルなくまた安全に終わることが、日々の喜びでもあり、やりがいでもあります。

☆今回受賞された感想をお聞かせください。

 

 定年退職を迎える年に、このような名誉ある賞の受賞を知らされ本当に驚いております。今でも受賞の実感がわかず、私のようなものが受賞してよいものか戸惑っておりますが、この賞は造幣局に対して賜ったものと理解し、私はその中の一人であるという気持ちで、この喜びを造幣局の皆さんとともに分かち合えたらと思っています。個人部門での受賞とのことですが、これまで造幣局を支えてこられた諸先輩方、現在造幣事業に携わっている方々、そして二交替制勤務に協力をしてくれた家族に感謝し、皆でこの栄誉を受けたいと思います。

☆最後に国民の皆様へメッセージをお願いします。

 

 ただいま造幣局では地方自治法施行60周年を記念して、各47都道府県の記念貨幣を製造しています。このうち500円記念貨幣については、日本で初めて製造する「バイカラー・クラッド貨幣」であり、異なる金属を組み合わせた二色三層の複雑な構造をしています。また、こういった貨幣に限らず、重厚で品格のある勲章や褒章、精巧で美麗な金属工芸品を製造して国民に魅力的な製品も提供しています。是非とも「ものづくり造幣」の技術と挑戦を見ていただきたいと思います。

作業風景

作業風景

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