第28回(平成27年) 人事院総裁賞「個人部門」受賞

小泉 敏章 氏 (61歳) 

(海上保安庁 総務部海上保安試験研究センター 化学分析課専門官)

  小泉さんは、分析・鑑定業務の第一人者として、高度な専門的知識等をいかし、多種多様な海上犯罪の証拠品等の分析・鑑定業務に長きにわたり地道に従事し、海上保安庁の犯罪捜査の信頼性向上に多大な貢献をしたことが認められました。

 
 

☆海上保安庁の業務としては、海難救助等は広く知られていますが、分析・鑑定業務はあまり知られていないと思います。小泉さんが従事してこられた分析・鑑定業務についてお聞かせください。
 
海上保安庁では、海洋秩序の維持のため、海上犯罪の捜査を行っています。この捜査に関連し、船舶衝突事件における塗膜片、海洋に違法排出された工場排水や油類など、現場で押収された証拠品が現場の部署から海上保安試験研究センターに送られてくることから、この分析・鑑定を行って、その成分や濃度の違いから犯罪容疑船舶を割り出したり、犯罪事実を立証するといった業務を行っています。
 私は、27年間の海上保安試験研究センター勤務の中で、様々な分析・鑑定業務に携わり、時には部署からの要請で現場に臨場することもありました。また、これらの経験をいかし、海上保安庁の教育機関である海上保安学校において、8年間にわたり犯罪鑑識担当の教官として初任海上保安官の育成にも携わり、約2千名の学生を現場に送り出しました。

☆専門的な知識や経験が求められる業務だと思いますが、小泉さんはどのようにして専門性を身につけられたのでしょうか。
 
私は、昭和49年3月に海上保安学校を卒業し、第三管区海上保安本部に所属する川崎海上保安署の巡視艇に配属されました。担当した最初の事件が工場排水の違法排出事件だったのですが、このときに海洋汚染事件の解明には化学の専門的知識が必要であると考え、巡視艇勤務をしながら夜間の大学に通い化学を学びました。
 そして、昭和54年に海上保安試験研究センターに配属となり、実際に分析・鑑定業務に従事しながら、厚生労働省や環境省が実施する研修、横浜国立大学の国内留学などに参加し、高度な専門的知識を身につけるとともに、多くの研究開発にも携わり、分析・鑑定能力の向上に努めてきました。

☆特に苦労されたことややりがいを感じられたこと、あるいは、印象に残っている事案等がありましたらお聞かせください。
 
過去に、海岸で不審物が発見され、現場の部署から「これは何ですか。調べてください。」という依頼がありましたが、試行錯誤しながら各種分析機器を駆使して不審物が大麻であることを特定できたことや、覚醒剤の大量密輸入事件では、容疑船の食堂で採取した微細物から覚醒剤の検出に成功して、この船の食堂で覚醒剤をバッグに移し替えた事実を特定し、犯罪の立証ができたときはやりがいを感じました。
 また、印象に残っている事案は、平成13年12月に発生した九州南西海域における北朝鮮工作船事件です。この事件では、私も現場となった沈没地点に行き、船内外から回収された多数の証拠品の分析・鑑定を行いましたが、このときはそれまでに経験した様々な知識・技術が大いに役立ちました。

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。
 長年、分析・鑑定業務に携わり、その中で問題が発生したときには、諸先輩や大学、研究機関、民間会社の研究者の方々から適切な助言を受けて成果を上げることができましたので、改めて感謝申し上げます。
 また、約1万3千人の海上保安庁職員は、国民の皆様の安全・安心な暮らしを確保するため、いろいろな分野で日々研鑽し、各種の事案に対応しています。
 私も一度定年退職し、現在は再任用という後輩職員に知識と技術を伝承するためには大変恵まれた環境に置かれていますので、残された時間、これまでに得られた知識と技術を後輩職員に伝え、海上保安庁の分析・鑑定技術の向上に努めてまいりたいと考えております。国民の皆様にも、今後とも海上保安庁に対する御理解と御支援を是非お願いいたします。

▲油の分析作業を行う小泉氏

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