第30回(平成29年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

法務省 東京保護観察所 社会復帰調整官室

 医療観察制度の下、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った精神障害者を対象として、きめ細やかな処遇を通じて、病状の改善と再他害行為の防止を図り、もってその社会復帰を促進することにより、安全・安心な社会の実現に大きく貢献したことが認められました。

 

☆始めに、東京保護観察所社会復帰調整官室ではどのような業務を行っているのでしょうか。

 医療観察制度は、心神喪失等の状態で殺人や放火等の重大な他害行為を行い、不起訴や無罪等になった精神障害者を対象とする制度です。保護観察所には、この制度に従事する専門職員として、精神保健福祉に関する資格や実務経験を有する社会復帰調整官を配置しています。社会復帰調整官は、医療機関や保健・福祉等の関係機関等と連携し、この制度の対象となる精神障害者(以下「対象者」といいます。)に必要となる医療を継続できるよう見守り、他害行為の再発を防止するとともに、その社会復帰を促進しています。
具体的な業務としては、@地方裁判所の依頼に応じて審判の参考資料となる対象者の「生活環境の調査」を実施して報告すること、A入院決定を受けた対象者の退院に向けた働き掛けをする「生活環境の調整」、B地域社会において必要な医療の継続や生活状況を見守るなどの「精神保健観察」、C医療観察制度の基盤である医療・保健・福祉関係機関相互間の連携の確保に関する業務を実施しています。

☆医療観察制度が始まった後、保護観察所が取り扱う事件数が大幅に増加しているとのことですが、医療観察制度を取り巻く情勢についてお教えください。

  保護観察所が取り扱う事件数は、制度が始まった平成一七年度から大幅に増加しています。対象者が起こした事件の被害に遭われるのは、同居している家族等の場合も多いため、その後に同居することが難しく住まいを確保することが困難になる人が少なくありません。また、精神障害だけでなく薬物乱用等の問題が重複している人の増加や、その医療を担当する医療機関の不足、対象者の地域における社会復帰の促進に不可欠な入所・通所施設等の理解促進と態勢整備も課題です。
これらの課題について、保護観察所は、医療観察制度を共管している厚生労働省と共有し、その解決に向けた取組を進めています。また、医療・保健・福祉関係機関等の幅広い関係者の出席を求めて運営連絡協議会を開催し、医療観察制度の実施態勢の充実強化に努めているほか、その普及啓発活動にも取り組んでいます。

☆心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った精神障害者を対象として、きめ細やかな処遇を行うに当たり、御苦労された点や、留意されている点などをお聞かせください。

社会復帰調整官は、地域社会で生活する対象者宅を訪問したり、医療機関や地域の関係機関から通院状況や生活状況等の報告を受けるなどして、医療の継続状況等の見守りをしています。ほとんどの対象者は、医療を継続することによって生活が安定しますが、先に挙げたような薬物乱用等の問題が重複している対象者に加え、他害行為によって生じた人とのつながりの喪失等の問題が大きく影響する対象者もおり、より丁寧な手厚い対応が必要となります。
このような場合を含め、社会復帰調整官は、指定医療機関、都道府県や区市町村の保健・福祉関係機関等と協議し、定期的にケア会議を開催するなどして処遇に当たっています。

☆業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。

医療観察制度による処遇を受けている期間は、対象者自身や家族にとって、人生で最も不幸に感じられる期間かもしれません。社会復帰調整官は、そのつらい期間を通じて関わりを持ち、その過程で家族関係が再生したり、受け入れてくれた地域社会の方々と新たな関係を築くなど、対象者が少しずつ社会復帰の道をたどり地域社会において穏やかに過ごせるようになる姿を見守ることがやりがいになっています。

☆ 最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。

精神障害を患い、その病気の悪化によって図らずも他害行為に至った対象者が、適切な医療を継続して受け、地域社会において穏やかに生活できるよう働き掛けることは、対象者だけでなくその家族や社会にとっても大切です。 保護観察所では、今後も関係機関との連携を深め、更なる処遇の充実に努めてまいります。国民の皆様からも、犯罪や他害行為から離脱しようとしている人への支援について、御理解と御協力をよろしくお願いします。

▲対象者宅での訪問面接の様子(イメージ)

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