職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針案に対する意見公募の結果について 平成30年12月27日 職員福祉局職員福祉課 人材局企画課  「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針案」について、平成30年11月30日(金)から同年12月13日(木)まで、御意見の募集を行いましたので、その結果を以下のとおり公表いたします。    今回御意見をお寄せいただきました方々の御協力に厚く御礼申し上げます。 1.実施方法  (1) 募集期間:平成30年11月30日(金)から同年12月13日(木)まで  (2) 告知方法:電子政府の総合窓口(e-Gov)及び人事院ホームページへの掲載  (3) 意見提出方法:電子メール、郵送又はファックス 2.意見募集の結果  28名の方から御意見をいただきました。  お寄せいただいた御意見の概要及びそれら御意見に対する考え方は別紙のとおりとなります。  なお、取りまとめの都合上、頂いた御意見のうち、同趣旨のものは適宜集約し、また、パブリックコメントの対象となる事項についてのみ考え方を示させていただいております。 ※ 提出意見については、人事院事務総局人材局企画課(東京都千代田区霞が関1−2−3中央合同庁舎5号館別館7階)で確認できます。 3.発出する通知    職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針について(通知)(平成30年12月27日付け職職―268・人企―1440) 4.発出する日    平成30年12月27日 別紙 ○「基本的な考え方」関係 番号 御意見の概要 御意見に対する考え方 1  (合理的配慮の提供が円滑になされるためには)「各省各庁の長や同じ職場で働く者が正しい障害特性の知識の取得と理解を深めることが重要」とあるが、そのための研修等の時間が充分とられるのか記載からは読み取れない。  各省各庁の長や同じ職場で働く者が障害の特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることは重要であり、公務部門における障害者雇用に関する基本方針(平成30年10月23日公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議)において、各府省は、職場の同僚・上司の障害に対する理解を深めるための研修等の取組などを推進することとされております。 2 「障害者からの申出により・・」とあるが、申出がなくとも履歴書等で障害が疑われる場合は、採用省庁は本人に積極的に確認し、本人の特性に配慮した措置を講ずるよう改善してほしい。(「申出がなかったから・・」では、配慮とはいえない。)  合理的配慮の申出については、本人の申出が基本となるものと考えております。障害者が希望する措置の内容を具体的に申し出ることが困難な場合は、支障となっている事情を明らかにすることで足り、また、合理的配慮の手続において、障害者の意向を確認することが困難な場合、就労支援機関の職員等に当該障害者を補佐することを求めることができることとしております。 3  国は率先して障碍者の雇用促進に努めなければならないのであり、「過重な負担」の用語を多用しない表現にすべきである。  本指針案中「2 基本的な考え方」において、「国の機関は民間企業に率先垂範して障害者雇用を進める立場にあり、積極的に障害者の雇用を進めることとされている」と明記しています。「過重な負担」の用語は必要な箇所に使用しているものです。 4  「指針案」には、「障害者でない職員との均等な待遇の確保又は障害者である職員の『能率の発揮及び増進』の支障となっている事情を改善するため」という表現がある。これは、障害者を「能率の悪い者」とみなし、その対策としての合理的配慮、などと誤解され、障害者雇用促進法の趣旨が歪められる恐れがあるので、障害者雇用促進法にある「障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する『能力の有効な発揮』の支障となっている事情を改善するため」に変えるべきである。  国家公務員の「能率の発揮及び増進」は、全ての職員の保健及び安全保持を含んだものとして国家公務員法第71条や第73条において定められています。また、公務部門における障害者雇用に関する基本方針(平成30年10月23日公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議)において、障害者が活躍しやすい職場づくりの推進について記述されたことも踏まえているものです。 ○「合理的配慮の手続」関係 番号 御意見の概要 御意見に対する考え方 1  自閉症スペクトラムや知的障害の人の中には、本人がどのような配慮を必要とするのか認識できず、説明できない人がいる。このため、自閉症スペクトラムや知的障害などの特性を持つ人については、専門的な知識を持つ人があらかじめ面接や簡単なテストを実施して、必要とされる合理的な配慮を行う仕組みを設定する。 また、本人に代わり支援者が、申出を行うことも認める。  合理的配慮は、個々の障害者の障害の状態や職場の状況に応じて提供されるものであり、個々の事情を有する障害者と各省各庁の長との相互理解の中で提供されるべき性質のものであると考えております。なお、御指摘のような点もあることを踏まえ、障害者が希望する措置の内容を具体的に申し出ることが困難な場合は、支障となっている事情を明らかにすることで足り、また、合理的配慮の手続において、障害者の意向を確認することが困難な場合、就労支援機関の職員等に当該障害者を補佐することを求めることができることとしております。 2  3(1)@に「なお、合理的配慮に係る措置の内容によっては準備に一定の時間がかかる場合があることから、各省各庁の長は、障害者に対し、面接日等までの・・・」とあるが、「面接日等までの」を「採用試験・面接日等までの」とすべきである。  面接日等には、試験の実施日も含まれるものであり、各省各庁の長による周知の際にそのことが考慮されるものと考えております。 3  3(1)@に「希望する措置の内容を申し出ることが可能であることを周知すること、支障となっている事情を明らかにすることで足りることを周知すること」とあるが、申出が困難な場合もあるので、本人からの申出がなくとも、採用の際のエントリーシート等に障害が疑われる場合は、各省各庁の長は積極的に本人に確認し合理的配慮を実施するよう指針の改善をしてほしい。  合理的配慮の申出については、本人の申出が基本となるものと考えております。障害者が希望する措置の内容を具体的に申し出ることが困難な場合は、支障となっている事情を明らかにすることで足り、また、合理的配慮の手続において、障害者の意向を確認することが困難な場合、就労支援機関の職員等に当該障害者を補佐することを求めることができることとしております。 4  合理的配慮の手続の@ 障害者からの合理的配慮の申出内容、A 合理的配慮に係る措置の内容に関する話合い結果、B 合理的配慮の確定内容、および採用後における合理的配慮の提供内容等を記録に残すように指針に明記すべきである。  合理的配慮については、個別具体の状況に即して、きめ細やかに行われるべきものであり、例えば、同僚による個別の配慮も含めて、全ての記録を残すことは困難と考えます。 5  必要な合理的配慮の提供やその後のフォローアップにおいては、障害の内容に応じ、適切な医学的配慮が必要であり、そうしなければ、業務内容や執務環境等によって傷病等に至るおそれがある。防止のためには産業医の関与が不可欠であるので、いずれかの箇所においてその旨を記載していただきたい。  公務においては、健康管理医が置かれ、健康管理に関する助言指導を行うこととされており、必要な場合には健康管理医が関与することとなっています。 6  3(2)@に「採用時までに当該障害者に対して職場において支障となっている事情の有無を確認すること。」とあるが、当該障害者はまだ職場におらず、職場の状況を知り得ないので、支障の有無を確認することは不可能であるので、採用前に当該障害者が職場の状況を把握するための手順(職場体験等)から記載すべきである。  職場において支障となりうる事情は、募集から採用前までにも確認すべきものと考えます。なお、障害者に対しても必要な情報は提供されるものと考えています。 7  3(2)@に関し、公務員は人事異動が多いことが通常であることから、それを前提に、上司・同僚等の異動や本人の異動があった際にどのように対応するかを記載すべきである。  3(2)@では、職場の状況が変化した場合にも言及しています。別表の配慮事例としても「本人のプライバシーに配慮した上で、他の職員に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。」と記載しています。 8  3(3)を次の文に変えるべきである。「合理的配慮の手続において、障害者の意向を確認することが困難な場合、個々の対象障害者を熟知した就労支援機関の職員等に当該障害者を補佐することを求める必要がある。」  障害者の意向を確認することが困難な場合にも多様な状況が考えられ、状況に応じて様々な対応ができるように記述しています。 9  3(3)には、就労支援機関の職員等の補佐についての記載があるが、公務員の場合、厚生労働省(ハローワーク等)等による民間企業向けの支援策を利用できないのであるから、これを念頭に、公務員のための適切な支援機関を設置するか、厚生労働省関係施策を活用できるよう措置した上で、その旨と併せて記載すべきである。  各府省から就労支援機関に相談することは可能であり、また、公務部門における障害者雇用に関する基本方針(平成30年10月23日公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議)に、ハローワークによる支援等について明記されています。 ○「過重な負担」関係 番号 御意見の概要 御意見に対する考え方 1  4(1)Aの「必要な施設の整備」、「援助を行う者の配置」のほかに「リハビリテーション訓練」を加えるべきである。  合理的配慮は、個々の障害者の状態や職場の状況に応じて提供されるものであり、状況によってはリハビリテーション訓練の機会の付与についても、「その他の必要な措置」に含まれるものです。 2  4(1)Aイのただし書を次のように改めるべきである。「ただし、新たな施設の整備、訓練等により当該職務の継続が可能である場合にはこの限りではない。このような配慮を尽くしても、当該職務の遂行を継続させることができない場合には、別の職務に就かせることなど、個々の職場の状況に応じた他の合理的配慮を検討することが必要であること。」  ただし書の部分は、配慮をしても重要な職務遂行に支障を来す場合についてもなお別の職種に就かせることなどの検討を求めるものです。 ○「過重な負担」関係 番号 御意見の概要 御意見に対する考え方 1  5(1)@に「業務への影響」とあるが、民間に向けた合理的配慮指針の同箇所の文中「生産活動やサービス提供への影響」という表現に比べると過重な負担とする業務の範囲を広く捉える形で不適切であり、例えば「政策立案や事務事業の実施への影響」のような表現に修正すべきである。  御指摘の部分の記述については、民間事業主等向けの合理的配慮指針に記載されている「生産活動やサービス提供への影響」に対応するものと考えています。 2  5(1)において合理的配慮が過重であるか判断する要素が列記されているが、「府省の予算・定員の状況」については、「予算がないから」という理由では、合理的配慮を拒否する理由にならず、合理的配慮の欠如であり差別につながることを明記すべきある。配慮を求められた場合には、できるだけの対応をしなければならないことを明確に記載してほしい。  本指針案においては、合理的配慮に係る措置が過重な負担に当たるか否かについて、5(1)の@からCまでの要素を総合的に勘案して判断することとしており、「予算がない」ことだけで判断することとはしておりません。また、合理的配慮については、3(1)B及び3(2)Bにおいて「障害者との話し合いを踏まえ、その意向を十分に尊重しつつ、具体的にどのような措置を講ずるかを検討」と記載しています。 3  5(1)C「府省の予算・定員の状況」の項目は削除すべき。  合理的配慮に係る措置が過重な負担に当たるか否かについて、5(1)の@からCまでの要素を総合的に勘案して判断する必要があると考えています。 4  「過重な負担」の判断は、誰によって、どのように行われるかを明示するとともに、その判断が適当かどうかを第三者も交えて検証する仕組みを構築すべき。  合理的配慮は、個々の事情を有する障害者と各省各庁の長との相互理解の中で提供されるべきものであり、過重な負担についても、指針案において掲げた考慮要素を総合的に勘案しながら、個別に判断する必要があるものと考えています。 5  民間向けの合理的配慮指針にある「公的支援の有無」に対応する項目を設けていないが、合理的配慮において財政上の措置は必須であるから、必要な財政措置をすべき旨を明確にすべきである。  公務部門における障害者雇用に関する基本方針(平成30年10月23日公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議)に、「施策の推進に必要となる定員及び予算については適切に措置するものとする。」と記載されています。 6  合理的配慮に伴う過重な負担について可能な限り具体的事例を掲載してほしい。  過重な負担については、本指針案において5(1)の@からCまでの考慮要素を挙げており、これらを総合的に勘案しながら、個別具体の状況において判断するものと考えています。 ○「相談体制の整備等」関係 番号 御意見の概要 御意見に対する考え方 1  6(1)Aの相談窓口の担当者について、しっかりとした知識のある担当者が配置され、本当に本人の状況を正しく把握できる人材が配置されるのか。知識のない人がしても意味がないと思うので、その点も明記してほしい。  本指針案では、相談窓口の対応者が、相談者の状況に応じ適切に対応できるよう各省各庁の長は必要な措置を講ずる旨を明記しています。 2  民間向けの合理的配慮指針にはある「不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め」という部分に対応する記載がなく、続く例示においても「就業規則その他の職場における職務規律等を定めた文書において(中略)不利益な取扱いをされない旨を規定し」に対応する記載がない。人事院規則において必要な措置を講じた上で、各省各庁においても諸内規でその旨を定めさせる必要がある。その旨をここに明記すべきである。  国家公務員法に平等取扱いの原則(第27条)について規定されており、直接不利益な取扱いは禁止されているため、改めて本指針案には記載していないものです。 3  6(1)の相談対応が蓄積される仕組みを作るべきである。  貴重な御意見として承り、今後の運用に活かしてまいります。 ○「別表」関係 番号 御意見の概要 御意見に対する考え方 1  知的障害及び発達障害について次の記載を補強するべきである。 「知的障害」「発達障害」については、個別の差が大きく、現状の表現だけで合理的な配慮を行うことは難しい。特に「発達障害」については、「自閉症スペクトラム」「ADHD」「LD」など、の違いがあり、さらに同じ障害でも人により必要な支援は異なる。専門的な知識、経験を持つ人が、あらかじめ面接や簡単なテスト(検査)などを行い、本人の特性、得意、不得意などを把握した上で、個々人が必要としている合理的な配慮を行うことが必要である。  障害については御指摘のような点もあることを踏まえ、合理的配慮は、個々の障害者である職員の障害の状態や職場の状況に応じて提供されるものであり、多様性があり、個別性が高い旨記載しております。 2  別表に4として「障害者の担当業務を定めるに当たっては、既存の業務にとらわれず、複数部門から業務を切り出すなど業務の再編を図ることで、公務部門全体の生産性が高められる点にも考慮すること」を追加する。  障害者の任用については、政府の方針において、個々の障害者がその障害の内容及び程度に応じて能力を発揮できる具体的な職域・職種・業務を把握し、用意した上で行うこととされています。 3  事例を追加すべき。  ※追加すべきとされた主な事例  ○視覚障害   ・職場介助者の配置   ・必要な支援機器、支援ソフトの導入   ・拡大文字、音声ソフト等の活用のための訓練   ・座席やロッカーなどの配置や建物内の表示や室内の表示の配慮   ・パソコンのオンライン環境の初期設定時の配慮   ・音声パソコンのアプリケーションのバージョンアップに対応するスキルアップ訓練   ・庁舎の改築や事務室内のレイアウト変更時の介助  ○精神障害   ・就労定着支援システムの活用   ・本人の状況や気分の変化を日常的に把握し、不調の傾向が見られたら迅速に対応  ○発達障害   ・就労定着支援システムの活用   ・本人の状況や気分の変化を日常的に把握し、不調の傾向が見られたら迅速に対応   ・仕事の指示は、否定型ではなく肯定型の構文にすること  ○全体   ・勤務条件に関する諸規程の改正  別表に示している事例は、各省各庁の長が対応できると考えられるものとして挙げたものです。なお、別表に記載されている事例はあくまでも例示であり、各省各庁の長が必ずしも実施するものではなく、また、別表に記載されている事例以外であっても合理的配慮に該当するものがある旨も明記しています。 ○指針全体に関するもの等 番号 御意見の概要 御意見に対する考え方 1  募集案内、意見公募など全般に対して、配慮がなさすぎるように感じる。  頂いた御意見は、関係者と共有させていただき、今後の参考とさせていただきます。 2  障害者雇用促進法では、国家公務員については、合理的配慮のほか差別禁止に係る規定についても適用除外とし、同様に国家公務員法に基づき措置することとしている。従って、今回国家公務員のための合理的配慮指針を策定するのであれば、差別禁止指針も策定する必要がある。採用自体が適正になされていなかったことを踏まえれば、まず取り組むべきは差別禁止の徹底である。  頂いた御意見は、関係者と共有させていただき、今後の参考とさせていただきます。 3  募集及び採用時において、合理的配慮を申し出たことによって、採用時に差別を受けることがないように明記してほしい。  合理的配慮を申し出たことにより、採用時に差別を行うことは、指針を発出する趣旨に明らかに反し、指針に明記するまでもなく認められないものと考えております。 4  採用後と同じように、募集時及び採用時においても相談窓口の設置等の相談体制の整備等を行ってほしい。  募集及び採用時における相談窓口は、募集及び採用の担当であることが明らかであることから、募集及び採用時における相談体制の整備等は求めていないところです。 5  体内型人工補助心臓を装着して心臓移植を待機している障がい者も働ける環境を整えていただきたい。  本指針案は、障害者全体を対象とする合理的配慮の考え方等を示したものです。 6  障害者のストレスや疲労に対して反応は人様々なので健常者の職員よりも細かい目配りをしてほしい。  本指針案では、合理的配慮は、個々の事情を有する障害者と各省各庁の長との相互理解の中で提供されるべきであることを示し、さらに、別表に「出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・退庁に配慮すること。」を記載しています。 7  障がい者の就労においては、障がい特性や状態を十分把握した上で、適材適所に配置すべきである。  障害者の任用については、政府の方針において、個々の障害者がその障害の内容及び程度に応じて能力を発揮できる具体的な職域・職種・業務を把握し、用意した上で行うこととされています。 8  職場に合わせるのが当然という発想からではなく、短時間勤務、在宅ワークなど障害者の特性に合わせた就労の見本を示すつもりで考えてほしい。  貴重な御意見として承り、今後の運用に活かしてまいります。 9  民間企業等の事例を確認の上、配慮を行うべきである。必要に応じて就業規則等を修正し、明示しておく必要がある。  国家公務員の勤務条件については、法律や人事院規則で定めており、今般、障害者雇用の促進に向けて、フレックスタイム制の柔軟化や休憩時間の弾力的な設定等ができるよう人事院規則の改正等を行いました。 10  人による支援の継続こそ、障害者雇用の根幹であり、そのことに言及すべきである。  本指針案において、合理的配慮は、障害者との話合いを踏まえ、その意向を十分に尊重しつつ、具体的にどのような措置を講ずるかを検討することとしており、また、援助を行う者の配置、相談窓口の担当者の適切な対応についても明記しています。 11  2の冒頭に国の率先垂範について述べているが、今回の指針案は厚労省が平成27年3月に策定した合理的配慮指針の内容とほぼ同一の内容であり、それから既に4年近くが経過し民間企業において様々な取組が進んでいることを考えると、率先垂範性が皆無である。民間における取組状況のトップランナー事例を踏まえて、真に先進的な指針とすべきである。  関係者により議論を重ねた上で策定され、実績のある民間事業主等向けの合理的配慮指針を踏まえて本指針案を策定したところです。本指針案については、今後、公務の実態、優良事例等も踏まえて、適宜、見直し・改善を図っていきたいと考えています。 12  別表については、民間向けの合理的配慮指針と同内容であるが、民間向けの合理的配慮指針は既に4年近く以前に策定されたものであり、厚生労働省においても事例集を作成し、既に第三版まで更新されているところであるから、これらの近年の事例の積み重ねを踏まえて見直し充実させるべきである。  関係者により議論を重ねた上で策定され、実績のある民間事業主等向けの合理的配慮指針を踏まえて本指針案を策定したところです。本指針案については、今後、公務の実態、優良事例等も踏まえて、適宜、見直し・改善を図っていきたいと考えています。 ○ 上記のほか、以下のような御意見を頂きました。頂いた御意見は、障害者に対する合理的配慮を実際に行うに当たっての御意見として関係者と共有させていただき、今後の参考とさせていただきます。 番号 御意見の概要 1  原本の問題用紙を単純に拡大するのではなく、大学入試センター試験や文部科学省が定める拡大教科書の標準的な規格に準じ、弱視者用の適切な試験問題の作成をしてほしい。 2  視覚障害者を対象とする試験では、司法試験で実施されているように点字、拡大文字と並び、パソコンでの受験方法も第3の選択肢としてほしい。 3  試験実施の際の弱視者に関する視力基準と延長時間について、データに立脚した科学的な根拠に基づき、合理的な基準に改めてほしい。 4  募集・採用の際には、次のような事項に配慮をお願いしたい。  ・募集内容や求人条件は、視覚障害者が情報入手しやすい媒体で提供する。  ・職務上必要な要件として、「活字印刷文に対応できる」や「介助なしで職務が遂行できる」など、合理的な配慮を前提としないまま、一部の障害者を排除するような要件を設定しない。  ・採用試験は視覚障害者が対応しやすい媒体で行い、時間延長や、拡大読書器などの補助機器の使用、採光の状況など、本人の力が発揮できることを考慮して実施する。また、拡大文字については一人ひとりのニーズに合った文字サイズとするよう配慮する。 5  応募者宛てに送られる受験票等の郵送物(封筒自体を含む)に点字に加え、点字が触読困難な者に対するスマートフォンでも読み取り可能な音声コードを付けていただきたい。点字ができる視覚障害者は、視覚障害者全体の10%であり、音声コードに頼らないと郵便物の判別も困難な状況なのが実情である。 6  書類には、文字が見えない、見えにくい者でも自身で郵送物の内容がわかるように配慮してほしい。具体的には点字と音声コード(スマートフォンで読み取れる音声コード)を印刷してほしい。また、郵送物の受取人が視覚障害者かどうかわからない場合は、すべての封筒に音声コードを印刷して対応してほしい。 7  就業する際の雇用契約書など、サイン捺印をする書類は、必ず本人が読める形で印刷してほしい。(点字、音声コード(スマートフォンで読み取れる音声コード)を契約書に印刷してほしい。 8  次のような誤解がみられる。  ・視覚障害者は、点字の触読が出来る。(9割の視覚障害者が点字の触読が出来ない)。  ・だれかに代読してもらえばよい。(どんな郵送物かわからないものを他人に読んでもらうことは、不安がある。プライバシーもある。いつでも読めないことは、精神的な負担が大きい)  ・郵送物は、ヘルパーに読んでもらえばよい。(ヘルパーの時間は、非常に短く、代読時間が確保できない。代読保障がない)  ・OCRソフトを利用すればよい。(OCRソフトは、認識率が100%保障していないので、誤認識がある。日付や金額などは、誤認識があると特に困る)  ・要望がある時だけ配慮すればよい。事前の配慮は必要ない。(事前に配慮していないと対応が遅れ、晴眼者と同等にならない) 9  試験において視覚障碍者における合理的配慮としてプレックストークの持ち込み受験を許可し、その対応をお願いしたい。許可根拠としてすでに社会福祉士や精神保健福祉士などの国家資格において同等のプレックストークの持ち込み受験は実施されており、妥当な合理的配慮に当たると思われる。 10  視覚障碍者は、変化への対応が苦手である。次のような変化への配慮が望ましい。  ・音声パソコンのアプリケーションのバージョンアップに対応するスキルアップ訓練の受講が望ましい。  ・業務効率向上のためには、研修制度の一環として、職業訓練施設における所要の訓練が望ましい。また、訓練施設まで出向かなくてもJOBコーチによる指導でも解決することもあるので柔軟な対応があるとよい。 11  限定した職場や仕事であれば、優れた力を発揮できる人がいる。幅広い仕事につけることを前提とした募集・試験・採用・配置ではなく、職場・業務を限定した募集・試験・採用・配置の道を設定してほしい。 12  現在募集の行われている人事院の障害者採用試験募集要項においても、視覚障害・聴覚障害・上肢機能障害に対する合理的配慮の記載はあるが、発達障害に対する記載はないため、発達障害者に対する具体的合理的配慮の例も必要。 13  障がい者の残存能力、健康管理上の留意点などを専門の知見を持つものにより評価、助言を得られる環境設定をすべきである。 14  合理的配慮について、指針案では、「当該府省の予算や定員の状況に応じた負担の程度」としており、これまで長期間にわたって障害者雇用の不正があった状況と同様の体制の中で障害者雇用を推進しようとしている。現在示されている指針案では、権利条約第27条や障害者にとってのディーセントワークの実現は困難である。 15  講じるべき措置の内容を検討する前に障害内容の把握・理解が必要であり、これを的確に行うには、当該各省各庁には障害特性に関する専門知識がない可能性が高いのであるから、必要に応じ産業医、主治医、支援機関などの助言を受ける必要がある。 16  視覚障碍者は、@他人の手を借りずに独自で処理可能なもの。Aほんの少し視力や声掛けしてもらうことでできるもの。B運転のようにどうしてもできないものの三種に分類できる。これらの特徴を早期に把握することが望まれる。 17  視覚障害を持つ弱視者等が働き続けるために必要な合理的配慮 (1)支援機器、支援ソフトについて  視覚障害を補うための機器やソフトウェアの導入によって、視覚障害者にもできる業務を広げることができる。  次のような配慮をお願いする。  1.必要な支援機器、支援ソフトについて、本人とよく話し合い、積極的に導入する。  2.OSに備わっている画面拡大や配色変更、画面の読み上げといったアクセシビリティ技術が利用できる環境を整える。  3.IT化や職場内のシステム構築にあたっては、支援ソフトを組み込めるよう、全体のシステム管理の枠組みに組み込むようにする。  4.単に「セキュリティー上の理由」といったことで支援機器や支援ソフトの導入を拒まず、どのようにしたら導入できるかを検討する。 (2)研修について  採用時だけでなく、適時適切な研修を受けられることは、働き続ける上でとても大切である。次のような配慮をお願いする。  1.各種の研修は、本人が受けやすい形で実施する。特に資料は対応しやすい媒体で可能な限り事前に提供する。  2.パソコンソフトのスキルアップなどについては、視覚障害者を対象とした研修機関を積極的に利用できるよう配慮する。 (3)業務内容について  配属や部署内での担当を決める際には、次のような配慮をお願いする。  1.業務内容を決定する際には、本人と十分に話し合いをし、決定していく。  2.業務内容については、できないと思われることも工夫次第でできることもあり、まずはチャレンジする機会を与える。  3.仕事量について、段階を踏んで増やすなど、時間的な配慮を行う。 (4)職場環境について  勤務する職場の環境については、職務や生活がスムーズに行えるよう、次のような配慮をお願いする。  1.職場内での移動等について本人と十分に話し合い、安全で、安心して働ける環境を作っていくようにする。  2.座席やロッカーなどの配置については、本人とよく話し合いをする。また、採光についても十分配慮する。  3.建物内の表示や室内の表示等についてはわかりやすいものにする。  4.周囲の人にちょっとした手助けを依頼しやすい環境になるよう、周知啓発に配慮する。 (5)異動、転勤、昇進について  長期間働き続けるために、異動や昇進に関する配慮もとても重要。次のような配慮をお願いする。  1.異動、転勤にあたっては、本人の特性に配慮する。また、所属が変わっても、同じ配慮が受けられるようにする。  2.昇進試験にあたっては、対応できる媒体で行えるようにするとともに、時間延長や採光などについての考慮を行う。  3.昇進条件を対応不可能なものに設定しない。 (6)健康状態の変化等について  視力の変化、中途の視覚障害者になる場合もあるので、健康管理やリハビリテーションに関する次のような配慮をお願いする。  1.眼や身体の疲労に配慮する。また、通院を必要とする場合には、勤務時間などに配慮する。  2.視力や視野の低下など障害の状況が変化した場合に、それに応じた支援機器や支援ソフトの導入を検討する。その際には、上司、システム担当者、本人で十分に話し合いを行う。  3.視力などの変化により、新たに支援機器や支援ソフトの研修が必要な場合には、それらを受講できるよう配慮する。 (7)相談体制について  視覚障害を持つ労働者と省庁の間の相談体制の整備が必要。次のような配慮をお願いする。  1.職場環境について相談しやすい環境を整える。  2.定期的に相談できる機会を設けるとともに、随時受ける体制を整える。  3.相談内容に応じて、適切な相談先を選定できるよう柔軟に運用する。例えば先輩や上司・職場内のスタッフ部門の他、外部の専門家(医療関係・リハビリ機関・福祉団体など)とを交えるなど、柔軟に対応する。