令和3年人事院勧告・報告時における川本総裁記者会見の概要 令和3年8月10日  【冒頭発言】 川本でございます。本日はお越しいただき、ありがとうございます。 本日、人事院は、国会及び内閣に対し、国家公務員の給与の改定を勧告し、本勧告どおり実施されるよう要請をいたしました。また、公務員人事管理に関する報告を行いまして、国家公務員の育児休業法の改正についての意見の申出をいたしました。先ほど私から菅総理大臣に直接お渡ししてきたところです。 本年の給与勧告において、月例給については、民間給与との較差が極めて小さいことから、改定しないことといたしました。ボーナスについては、公務が民間を上回ったことから、年間4.30月分に引き下げることといたしました。給与勧告と併せて「公務員人事管理の報告」を行ったところです。この報告では、国家公務員が置かれている課題を捉えた上で、それらにどう対応していくか、といった視点で具体的な取組の方向性を示しています。 私は、これまでの仕事を通じて、「問題解決」という点に最も関心を持っておりました。問題解決のためには、まずは課題を認識することが重要となります。私は国会での所信表明の際、次の3点を課題認識として表明したところです。1番目は、行政組織の経営管理力を高めることにより、個々の公務員が意欲を持って全力で仕事に取り組める環境を実現することであります。2番目は、時代環境に適応する能力の確保です。また、3番目には国際性と開放性について述べました。今回の「公務員人事管理の報告」においても、これらの課題認識も念頭に置いた上で、お二人の人事官や事務総局と議論を重ね、次の4つの点を具体的な課題として認識し、それらへの対応策を示したところです。その課題とは、1番目に、人材の確保と育成です。2番目に、良好な勤務環境の整備。3番目といたしまして、妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援。4番目は、定年の引上げ、能力・実績に基づく人事管理の推進でございます。特に、公務員志望者の減少、若手職員の離職増加、社会全体のデジタル化といった状況において、人材の確保は喫緊の課題であります。国家公務員が社会環境の変化に的確に適応していくためにも、例えば、官民の人材の流動性を高め、民間の知見を積極的に公務に取り入れていくことは重要と考えております。また、長時間労働の是正は当然のことながら、テレワークを積極的に活用するなど、働きやすい勤務環境を整備することが求められております。特にテレワークの推進は、業務プロセスの変革やデジタルトランスフォーメーションの推進を通じた行動変容の観点から重要と考えております。さらに、長時間労働の是正の観点からは、人事院としても最大限努力してまいりますが、国会対応業務の改善を通じた超過勤務の縮減も喫緊の課題です。そこで、今回、国会等の一層の御理解と御協力のお願いを報告文にも記しています。 今回の給与勧告・報告を菅総理大臣にお渡しした際、総理からは、「勧告については、しっかりと受け止めて、政府内で議論していきたい」とのお話がありました。また、「公務員人事管理に関する報告」については、総理から大変多くのお言葉をいただきました。冒頭、プレスの皆さんがいらっしゃるところですけれども、「新しい時代にふさわしい、例えばデジタル化や不妊治療の休暇を始め、報告で示された取組を、人事院と関係省庁で協議して前に進めていきたい」とのお話がありました。その後さらに加えまして、「働き方改革を進める観点からの長時間労働の是正や、厳しい状況にある公務員の人材確保など、これまで十分に対応できていなかったものも多い」との御認識を示され、「この報告で示された取組は、全てやらなければいけないことばかりであり、これらを、是非、前に進めて欲しい。期待している」とのお言葉をいただきました。 また、加藤官房長官からは、政府としても、人事院の取組と連携し、魅力ある国家公務員の勤務環境の整備に取り組んでいただける旨のお話があったと聞いております。 さらに、国家公務員制度担当の河野大臣からも、今回の「公務員人事管理に関する報告」について、先ほど記者会見において、「画期的な報告」、「意欲的な取組」として期待を寄せていただき、内閣人事局としても協力し、共に改革を進めていただける旨のお話があったそうです。 人事行政に関わる様々な取組については、総理、官房長官、河野大臣からのお言葉を受け止めつつ、人事院としてしっかり検討し推進してまいります。 最後になりますが、今回の報告文で示した各種取組を通じて、国家公務員がその能力を十分発揮し、誇りをもって職務に邁進できる公務職場を実現していくことが人事院のミッションの一つと考えております。人事院は、制度官庁として、各府省相手・職員相手の仕事が多くなりますが、その先には、当然のことですが、行政サービスの受け手、国民の皆様がいらっしゃいます。したがって、「B to B」という意識にとどまらず、「B to B to C」という意識を持って対応していくことが必要と考えております。 いずれにせよ、今回お示しした具体的な取組については、スピード感を持って着実に前進させていきたいと思っております。私からは以上でございます。