国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)行政区分 専門試験(多肢選択式) 試験問題例 例題1(政治学) 社会運動に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。 1. 社会的不満や社会不安の起動等を契機として社会の状況の一部ないしは全体を変革しようとする組織的活動を社会運動という。1960年代以降,西欧諸国ではエコロジー運動等,従来の階級運動や労働運動等とは異なるタイプの社会運動が出現するようになり,これは「新しい社会運動」と呼ばれる。 2. NPOとは,様々な社会貢献活動を行い,団体の構成員に対し収益を分配することを目的としない団体の総称であり,福祉やまちづくりなど様々な分野で活動が行われている。我が国では1995年に成立した特定非営利活動促進法により,NPOが簡易な手続で法人格を取得できることとなったが,2008年以降は景気悪化の影響を受け,同法により認証されたNPO法人の数は減少傾向にある。 3. 性差に基づく差別に対し是正を求める全ての思想・運動をフェミニズムという。フェミニズムはいくつかの政策実現に影響を与えており,我が国においては1985年に女子差別撤廃条約を批准し,1986年には男女共同参画社会基本法が施行されたほか,2012年には選択的夫婦別氏制度を導入するべく,民法が改正された。 4. 1960年代に先進国において多くの公害問題が発生し,我が国では四大公害訴訟に代表される事件において公害反対運動が活発になり,1971年には環境庁が設置された。公害反対運動の特徴としては,公害問題は全国規模で発生することから,特定地域の住民による住民運動の形をとらないことである。 5. 1954年の第五福竜丸事件等を受けて,放射性降下物の人体への影響に対する心配が高まったことで,原水爆禁止の署名運動が全国的に起こり,1955年には広島でパグウォシュ会議が開催された。この会議における核兵器廃絶の宣言を受けて米ソ間に歩み寄りの機運が生まれ,1968年には包括的核実験禁止条約(CTBT)が発効した。 例題1の正答 1 例題2(行政学) 我が国の国と地方公共団体との関係に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。 1. 1890年,プロイセンの制度に範をとり府県制が制定されたが,知事は,住民による直接公選ではなく,国の地方行政官庁として派遣される官選知事であり,知事の補助機関である職員にも国の官吏が存在していた。現在,我が国の都道府県知事は全員が直接公選となっている。 2. 憲法第65条によれば行政権は内閣に属することとされているが,これを実質的に担保するため,内閣総理大臣は,都道府県知事又は市町村長が著しく不適任であると認めるときは,地方自治法に基づく職務執行命令訴訟を経た上で,当該都道府県知事又は市町村長を罷免することができることとされている。実際に,住民基本台帳ネットワークシステムに接続しないこととした市町村長が罷免された例がある。 3. 地方六団体は,地方自治法に基づき,地方自治に影響を及ぼす法律又は政令その他の事項に関し,内閣に意見を申し出ることができるが,この意見申出に対して内閣にはいかなる場合にも回答義務が課されていないことから,実際にこの制度を利用して意見申出が行われた例は一度もない。 4. 地方自治に影響を及ぼす国の政策の企画及び立案並びに実施について,国と地方の協議の場に関する法律が平成23年4月に成立した。同法成立以前にも,実質的な協議の場として国と地方の協議は行われていたが,内閣総理大臣が参加することはなかった。 5. 地方分権の観点からは,地方公共団体の執行機関である教育委員会の事務についても自主性・自立性を尊重することが重要である。このため,例えば,いじめを苦に自殺しようとする生徒がいるにもかかわらず,対応策を取ろうとしない教育委員会があったとしても,文部科学大臣は教育委員会に対し,何ら助言を行うこともできない。 例題2の正答 1 例題3(憲法) 憲法第22条に関するア〜オの記述のうち,判例に照らし,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし,ア〜オの記述に掲げられた法律の規定には,現行において廃止・改正されているものも含まれている。 ア 憲法第22条の保障する居住・移転の自由は,自己の住所又は居所を自由に決定し移動することを内容とするものであり,旅行のような人間の移動の自由は含まれないため,旅行の自由は,国の内外を問わず,同条によってではなく,一般的な自由又は幸福追求権の一部として憲法第13条により保障される。 イ 憲法第22条第1項は日本国内における居住・移転の自由を保障するにとどまり,外国人に入国の自由は保障されないが,同条第2項にいう外国移住の自由はその権利の性質上外国人に限って保障しないという理由はなく,出国の自由は外国人にも保障される。 ウ 職業の許可制は,職業選択の自由そのものに制約を課すもので,職業の自由に対する強力な制限であるから,その合憲性を肯定するためには,原則として,重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し,また,それが,自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的,警察的措置ではなく,社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置である場合には,許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては目的を十分に達成することができないと認められることを要する。 エ 法律に別段の定めがある場合を除き,司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が,他人の嘱託を受けて,登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し,これに違反した者を処罰する司法書士法の規定は,登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどに鑑みたものであり,公共の福祉に合致した合理的な規制を定めたものであって,憲法第22条第1項に違反しない。 オ 薬局及び医薬品の一般販売業(以下「薬局等」という。)の開設に適正配置を要求する薬事法の規定は,不良医薬品の供給による国民の保健に対する危険を完全に防止するためには,薬局等の乱設による過当競争が生じるのを防ぎ,小企業の多い薬局等の経営の保護を図ることが必要であることなどに鑑みたものであり,公共の福祉に合致した合理的な規制を定めたものであって,憲法第22条第1項に違反しない。 1. ア,ウ 2. ア,オ 3. イ,ウ 4. イ,エ 5. エ,オ 例題3の正答 4 例題4(行政法) 行政指導に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。 1. 租税法規に適合する課税処分については,税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示し,納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ,その後,その表示に反する課税処分が行われ,そのために納税者が経済的不利益を受けることになった場合において,その表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないときであっても,法律による行政の原理が貫かれるべきであるから,信義則の法理の適用によりその処分が違法として取り消されることはないとするのが判例である。 2. 行政指導は,法律の根拠は必要ないから,行政機関がその任務又は所掌事務の範囲を逸脱せずに行い,かつ,その内容があくまでも相手方の任意の協力によって実現されるものであれば,制定法の趣旨又は目的に抵触するようなものであっても,違法とはならない。 3. 水道法上,給水契約の締結を義務付けられている水道事業者としての市は,既に,マンションの建設事業主が,市が定めた宅地開発指導要綱に基づく行政指導には従わない意思を明確に表明し,マンションの購入者も,入居に当たり給水を現実に必要としていた場合であっても,その指導要綱を事業主に遵守させるため行政指導を継続する必要があったときには,これを理由として事業主らとの給水契約の締結を留保することが許されるとするのが判例である。 4. 行政手続法上,行政庁は,申請がその事務所に到達したとき,申請書の記載事項に不備があるなど法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請について,申請者の便宜を図るため,申請者に対し申請の補正を求め,又は申請により求められた許認可等を拒否することなしに,要件に適合するまで申請しないよう行政指導をすることができ,また,申請者が行政指導に従う意思がない旨を表明した場合であっても,申請書を受理せず返戻することが認められている。 5. 建築主が,建築確認申請に係る建築物の建築計画をめぐって生じた付近住民との紛争につき,地方公共団体の行政指導に応じて住民と協議を始めた場合でも,その後,建築主事に対し,申請に対する処分を留保されたままでの行政指導には協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明して申請に対し直ちに応答すべきことを求めたときは,行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り,行政指導が行われているとの理由だけで建築主事が申請に対する処分を留保することは,違法であるとするのが判例である。 例題4の正答 5 例題5(民法(総則及び物権)) 無権代理に関するア〜オの記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし,争いのある場合は判例の見解による。 ア Bは代理権がないのにAの代理人であると称して,Cとの間でA所有の不動産について売買契約を締結した。その後に,AがCに対してこの売買契約を追認したときは,代理権のある代理人が代理行為をしたことになるが,本人も相手方も,当該売買契約を遡って有効にすることを期待していないから,Aの追認の効果は,別段の意思表示がない限り,追認の時点から生ずる。 イ 民法第117条により無権代理人が相手方に対して負う責任について,無権代理人が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき又は重過失によって知らなかったときは,無権代理人は責任を負わない。しかし,無権代理人が代理権を有しないことを相手方が過失により知らなかったときは,無権代理人は責任を負う。 ウ 無権代理行為の相手方は,本人が追認又は追認拒絶するまで不安定な状態に置かれるため,主導的に効果を確定させる手段として,本人に対する催告権を有している。この催告権とは,本人に対して相当の期間を定めて期間内に追認をするかどうかの確答をすべき旨の催告をなし得るとし,その期間内に本人が確答しなければ追認を拒絶したものとみなすものである。 エ Aの子であるBが,代理権がないのにAの代理人であると称して,Cとの間でA所有の不動産について売買契約を締結したが,AはBの無権代理行為を追認することを拒絶した。このAの追認拒絶により無権代理行為の効力が本人Aに及ばないことが確定し,その後,Aが死亡した結果,無権代理人BがAを単独相続しても,無権代理行為が有効になるものではない。 オ Aの子であるBが,代理権がないのにAの代理人であると称して,Cとの間でA所有の不動産について売買契約を締結したが,Aは,Bの無権代理行為に対する追認も追認拒絶もしないままに,死亡した。Aの相続人がBとAの配偶者Dの2名であって,Dが無権代理行為の追認を拒絶している場合でも,無権代理行為をしたBが責任を免れることは許されるべきではないから,当該無権代理行為は無権代理人Bの相続分に限って当然に有効になる。 1. ア,イ 2. ア,オ 3. イ,エ 4. ウ,エ 5. ウ,オ 例題5の正答 4 例題6(民法(債権,親族及び相続)) 多数当事者の債権債務関係に関するア〜オの記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし,争いのある場合は判例の見解による。 ア 民法第427条によれば,複数の債務者がいる場合において,別段の意思表示がないときは,各債務者はそれぞれ等しい割合でのみ債務を負うとされるが,この規定は契約によって生じた金銭の給付についての債権債務関係にのみ適用される。 イ AとBがC所有の不動産を共同でCから賃借している場合,AとBの賃料支払義務は,不動産の利用の対価であり,賃貸人との関係においては各賃借人は目的物の全部に対する使用収益をなし得る地位にあるから,賃貸人であるCは,賃借人であるAとBのいずれに対しても,賃料全額の支払を請求することができる。 ウ AとBがCから連帯して100万円を借り受けた場合,CがAに対してのみ債務の免除をしたときであっても,Aの負担部分についてのみBの利益のためにも免除の効力が生じる。よって,CがBに対して請求できるのは,100万円からAの負担部分を控除した額である。このように,一人の債務者に生じた債務の免除の効力が他の債務者に及ぶことで,求償の循環が避けられる。 エ 保証は,主たる債務者以外の第三者に債務を負わせることで,主たる債務者が弁済できないときに債権者に保証人の一般財産から債権を回収させる制度であり,債権者と保証人との間の契約に加えて,主たる債務者と保証人との間の契約が必要である。 オ 保証人は,主たる債務者がその債務を履行しないときに初めて自分の債務を履行する責任を負うのであるから,主たる債務者に資力がありかつ執行が容易であることを証明すれば,先に主たる債務者の財産に執行するよう債権者に求めることができる。連帯保証人も,連帯特約をしていない保証人と同様に,先に主たる債務者の財産に執行するように求めることができる。 1. ア,イ 2. ア,オ 3. イ,ウ 4. ウ,エ 5. エ,オ 例題6の正答 3 例題7(ミクロ経済学) ある独占企業の直面する市場の逆需要関数は,価格をp,需要量をdとすると,p=40-dである。一方,この独占企業の費用関数は,総費用をc,生産量をxとすると,c=4x+5で表されているとする。この独占企業の利潤が最大になる独占価格及び独占による死荷重の組合せとして正しいのはどれか。 1. 独占価格18,死荷重98 2. 独占価格18,死荷重162 3. 独占価格22,死荷重98 4. 独占価格22,死荷重162 5. 独占価格24,死荷重98 例題7の正答 4 例題8(マクロ経済学) ある経済のマクロモデルが次のように示されているとき,総需要曲線として正しいのはどれか。なお,物価水準をPとする。 Y=C+I C=20+(3/4)Y I=100-5r L=(1/2)Y+250-10r M=240 (Y:国民所得,C:消費,I:投資,r:利子率,L:実質貨幣需要,M:名目マネーストック) 1.r=-(1/20)Y+24 2.r=5Y+100 3.P=240/(Y+10) 4.P=240/(Y+100) 5.P=240Y+2400 例題8の正答 3 例題9(財政学・経済事情) 我が国の財政制度等に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。 1. 予算は衆議院で審議・議決された後,参議院において審議される。参議院が衆議院と異なった議決をした場合には,両院協議会を開くが,それでも意見が一致しないときは,内閣総理大臣による財政演説を改めて行った後30日以内に衆議院で予算を再度審議する。 2. 継続費は,初年度に全額を債務負担し,その対象経費については特に制限がない。また,国庫債務負担行為は,初年度に限らず,5カ年度以内にわたって債務負担を行うことが可能であり,その対象経費は工事,製造その他の事業に限定されている。 3. 政府関係機関とは,特別の法律によって設立された法人で,その資本金の過半が政府出資である機関であり,予算について国会の議決を必要とする機関を意味する。2011年度当初予算においては,日本放送協会など七つの機関に関する政府関係機関予算が議決された。 4. 所得税と消費税を比較すると,所得税収は景気動向によって税収が変動しにくく,消費税収は景気動向によって税収が変動しやすい。また,消費税は同等の消費水準の人に同等の負担を求めるため,垂直的公平性に優れている。 5. 財政法においては,公共事業費,出資金及び貸付金の財源については,国会の議決を経た金額の範囲内で,公債を発行し又は借入金をなすことができるとされている。また,公共事業費の範囲については,毎会計年度,国会の議決を経なければならないとされている。 例題9の正答 5 例題10(経営学) 動機づけに関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。 1. 外的報酬が内発的動機づけに及ぼす影響力を,E.L.デシは統制的側面と情報的側面の二つに分けて定式化した。統制的側面は内発的動機づけを強化する影響力であり,成果主義のようにパフォーマンスと連動した報酬支払いをすると,認知された因果律の所在が外部から内部へ移される。一方,情報的側面は外発的動機づけを強化する影響力であり,活動の目的を有能さと自己決定の感覚を感じることから外的報酬の獲得にすり替える効果を持つ。 2. 動機づけ衛生理論の提唱者F.ハーズバーグは,広範な先行研究のサーベイを通じて,動機づけ要因と衛生要因を見いだした。動機づけ要因は,職務満足と職務遂行の関係を規定する要因であり,具体的には給与,対人関係,作業条件が挙げられ,従業員が職務にとどまる程度に仕事をする確率しか説明することができないとした。一方で,衛生要因は,職務満足と生産性の向上の関係を規定する要因であり,達成,承認,仕事そのものなどが該当するとした。 3. J.W.アトキンソンは,達成動機に関するD.C.マクレランドとの共同研究の成果を基に,達成動機づけの理論を構築した。アトキンソンの理論では,達成行動の頻度や持続性は,個人のパーソナリティ要因としての達成動機の強弱のみによって決定されるのではなく,個人が直面する達成状況における期待及び達成がもたらす価値によって影響を受けるとされた。 4. F.W.テイラーは科学的管理法によって,工員が故意に仕事をゆっくりと行う怠業と呼ばれる現象の解消を試みた。怠業は性質によって二つに分類され,賃金システムに起因する組織的怠業は,科学的管理法では克服できないが,楽をしたがるという人間の本能に起因する自然的怠業は,科学的な標準設定によって克服することができるとした。 5. 期待理論の代表的研究者E.E.ローラーは,外的報酬と内的報酬が動機づけに及ぼす影響力を詳細に検討した。外的報酬は成果と密接な関連を持つので,年功制のようなシステムの下では成果と満足感が正の相関を示すことになり,動機づけのレベルに対する説明力は高くなる。しかし内的報酬は,成果と密接な関連を持たないため,成果と満足感の相関関係そのものが安定しない。 例題10の正答 3 例題11(国際関係) 国際関係の歴史と概念に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。 1. 主権国家(sovereign states)という概念は,11世紀頃から国際社会に存在していた。例えば,中世ヨーロッパには大小あわせて約350の領邦がひしめきあっていたが,それらを統治する領主には,ローマ教皇やローマ皇帝の権威は及ばなかった。つまり,領邦国家は主権をお互いに認め合い,自立した存在として国際活動を展開していた。 2. 同盟(alliance)とは,何らかの仮想敵国に対して国家の間で軍事行動における協調行動に合意した状態を指す概念であり,日米同盟や北大西洋条約機構(NATO)などのように国際社会に平和や安定をもたらすために形成されるものである。実際,国際政治の歴史上,同盟の形成が戦争やその拡大をもたらしたような事例は存在しない。 3. 封じ込め(containment)という概念は,1930年代にドイツでナチズムのイデオロギーをもとにした拡張主義的な政策が展開されている状況下で,米国が英国などと共に,対独政策の戦略概念として採用された。しかし,その概念は軍事的なものよりは政治的なものであったので,結局,ナチス・ドイツの対外進出を阻止することはできずに第2次世界大戦の勃発を防ぐことはできなかった。 4. デタント(detente)は,緊張緩和を意味するフランス語で,冷戦の対立を緩和する政策概念として使われた。例えば,1960年代にフランスのドゴール大統領は,NATOの軍事機構脱退やソ連東欧圏への接近を「デタント」として正当化した。このような政策への反発から,1970年代に米国のニクソン政権は,核軍拡を推し進め,強硬な対ソ政策を展開した。 5. 人道的介入(humanitarian intervention)とは,主権国家内部で生じた大量虐殺や大規模な飢餓,難民・国内避難民の大量流出などの深刻な人道的危機に対して,人道救援目的で展開される国際社会の活動を指す概念である。人道的介入は,内政不干渉原則や武力不行使原則などと抵触すると批判される場合もあるが,20世紀末にはソマリア,ボスニア,コソボなどにおいて実施されている。 例題11の正答 5 例題12(社会学) 相互行為及びそれに関する用語等についての記述として最も妥当なのはどれか。 1. 象徴的(シンボリック)相互作用論とは,H.G.ブルーマーらによって提唱されたものであり,社会を,言葉などのシンボルを媒介とする人間の相互作用過程として見るものである。 2. ドラマトゥルギーとは,E.ゴフマンが用いた用語で,社会生活において自己を装うことに反発を感じた人々が,本当の自分を示して人間関係の回復を図ろうとする営みのことである。 3. 会話分析とは,H.サックスらが行ったもので,会話が行われる時間と場所に着目して量的な分析を行い,会話の文脈に依存しない客観的な行為の構造を明らかにするものである。 4. 生活世界とは,A.シュッツらが用いた用語で,グローバリゼーションの進展により世界全体が一つの生活空間となり,個々の人間関係もそれに応じて変化したことを説明する概念である。 5. 交換理論とは,G.C.ホマンズらによって展開されたものであり,異なる社会相互の接触により,モノや文化の交換が行われ,それが国際的な関係を活性化するというものである。 例題12の正答 1 例題13(心理学) 次のA,B,Cは記憶実験に関する記述であるが,それぞれの実験と関連の深い用語の組合せとして最も妥当なのはどれか。 A 実験参加者に英単語を呈示し,(1)その単語の文字が大文字か否かを判断する形態判断課題,(2)その単語が別の単語と韻を踏んでいるかどうかについて判断する音韻判断課題,(3)一部が欠けた文章の中にその単語が挿入可能かどうかを判断する意味判断課題,という3種類の判断課題を課した。その後,それらの単語について再認テストを抜き打ちで行ったところ,(3),(2),(1)の順で成績が高かった。 B 催眠教示によって,実験参加者を幸せな気分あるいは悲しい気分に誘導し,幸せな人物アンドレと不幸な人物ジャックという2人が登場する一つの物語を読ませた。翌日,気分誘導を行わない状態で物語の内容をできるだけ多く再生させた。その結果,幸せな気分で物語を読んだ群と,悲しい気分で物語を読んだ群とでは,物語全体の再生量に違いはなかったが,前者はアンドレについてのエピソードをより多く再生し,後者はジャックについてのエピソードをより多く再生した。 C 実験参加者に1〜6個の数字を与え,それらを覚えたまま,同時に言語的な推論課題をできるだけ速く正確に行うように要求した後,先に覚えた数字を再生させた。その結果,保持すべき数字の数が少ない場合は推論成績にほとんど低下が見られなかった一方で,数字が6個の場合は,推論成績に低下が認められた。 1. A 処理水準モデル,B 気分一致効果,C 潜在記憶(implicit memory) 2. A 処理水準モデル,B 気分一致効果,C 作動記憶(working memory) 3. A 処理水準モデル,B プライミング効果,C 作動記憶(working memory) 4. A 二重貯蔵モデル,B 気分一致効果,C 潜在記憶(implicit memory) 5. A 二重貯蔵モデル,B プライミング効果,C 潜在記憶(implicit memory) 例題13の正答 2 例題14(教育学) 教育方法に関する次の記述のうち,最も妥当なのはどれか。 1. コア・カリキュラムとは,時間割やベルが廃止された学習環境において,子どもが教師から配布された学習の配分表に従いつつ,自分のペースを中心に個別に学習を進める教育方法である。また,どの教科から始めてもいつ休憩しても良いとされ,大正期新教育において広く展開された。 2. CAIとは,通常は1学級を単位として,学級の子ども全員に同一内容を同一時間に指導する形式の教育方法である。一斉指導,一斉教授とも呼ばれ,コンピュータによる情報伝達の仕組みを参考に考案されたものである。 3. 習熟度別学習とは,学習内容の習熟の程度に応じて能力別又は進路別に編成された学級や学習集団,又は個別の形態において,創意・工夫された適切な指導を受けながら全ての子どもに目標とされる学習内容を確実に身につけさせる教育方法である。 4. NIEとは,主に小学校段階の四則計算の指導で行われ,「一般から特殊へ」の原則に従って教科書に段階的に配列された練習問題を決められた順序で解決させることにより,子どもの学力の向上を目指す教育方法である。 5. インクルージョンとは,学校教育で,障害をもつ子どもと健常な子どもとを分離し,特に障害をもつ子どもを特別支援学校に入学させて,障害の内容や程度に従って児童・生徒をクラス分けし,それに応じたカリキュラムを実施する,障害をもつ子どものみを対象とした教育方法のことである。 例題14の正答 3