前(節)へ 次(節)へ

第2部 <平成8年度業務状況>

第1章 職員の任用

第1節 採用試験

4 実施結果


人事院では、行政の高度化、複雑化、国際化等が進む中で、今後の行政を担うのにふさわしい多様な人材を安定的、継続的に確保していくことの重要性にかんがみ、情勢の変化に対応して試験内容、試験方法の改善を行うとともに、雇用環境等を踏まえた適切な募集活動、試験日程の設定等により、公正かつ効果的な試験実施を図っている。

(1) 試験方法等の改善

平成8年度については、次のような試験方法等の改善を行った。

ア 試験日程

I種試験の第1次試験日を就職協定に配慮し前年度より1週間繰り下げた(ただし、第1次試験合格者発表日は7年度と同様7月1日)。これに伴い他の大学卒業程度の試験も日程を1週間繰り下げた。

イ 試験方法

なお、気象大学校、航空保安大学校、海上保安大学校及び海上保安学校の各学生採用試験の学科試験についても所要の改正を行った。

ウ 受験資格

III種試験の申込者及び合格者の高学歴化傾向にかんがみ、「行政事務」、「電気・情報」、「機械」、「土木」、「建築」、「化学」、「農業」「農業土木」及び「林業」区分の受験資格を変更し、本来想定している高校卒業程度の学歴を有する者が合格し、採用されやすいよう受験資格の上限年齢を段階的に平成8年度は1歳引き下げ、平成9年度はさらに1歳引き下げることとした。

(2) 実施状況

平成8年度に実施した採用試験の状況は、表1-2のとおりである。

I種試験は、対象となる官職に必要とされる専門知識等に応じて28の区分試験に分けて実施している。同様にII種試験は12、労働基準監督官採用試験及び法務教官採用試験は2、III種試験は12、刑務官採用試験は2、航空保安大学校学生採用試験及び海上保安学校学生採用試験は3のそれぞれの区分試験に分けて実施している。

さらに、II種試験のうち「行政」の区分試験、III種試験のうち「農業」、「農業土木」、及び「林業」以外の9の区分試験並びに刑務官採用試験については、合格者の地域的偏在を防ぎ、全国各地に所在する官署の採用に応じられるようにするため、地域別の試験に分けて実施している。(資料1-21-9

申込者総数は、294,469人で、前年度に比べ36,217人(11.0%)の減少となった。このうち、人事院が試験機関となっている14種類の試験の申込者総数は291,705人で、36,118人(11.0%)の減少となっている。これを試験の程度別にみると、大学卒業程度の試験は146,670人で875人(0.6%)の微増であったが、高校卒業程度の試験は145,035人で36,993人(20.3%)の大幅な減少となった。

また、図1-1は、昭和60年度以降の申込者の推移を示したものであるが、全体として漸減傾向の下で特に63年度及び平成元年度は大幅に減少(10%台)し、2年度からは、その減少が小幅(2年度2.2%、3年度0.2%)となった。しかし、4年度から6年度においてはそれぞれ18.2%、24.8%、18.2%の大幅な伸びを記録したが、7年度は1.4%の小幅な増加にとどまり、本年度は逆に11.0%の大幅な減少となった。

表1-2 平成8年度国家公務員採用試験実施状況一覧


図1-1 国家公務員採用試験申込者の推移


(試験機関が人事院であるもの)

これは、高校卒業程度の試験の申込者数の減少が影響したものであり,その要因としては18歳人口の減少、大学等への進学率の上昇、III種試験の行政事務、技術系区分及び農業系区分の受験資格年齢の上限を1歳引き下げたことなどが大きく影響していると考えられる。

なお、合格者総数は、前年度より978人(4.2%)少ない22,245人で、このうち、人事院が試験機関となっている14種類の試験では、合格者総数は、前年度より976人(4.2%)少ない22,159人となっている。

また、本年度の各試験の倍率は、表1-2のとおり前年度に比べ若干下がったものの引き続き高い倍率となっている。

ところで、近年の社会経済情勢の変化、国際化の進展、国民の行政ニーズの複雑多様化等行政を巡る環境の変化は著しく、行政がこのような状況に適切に対応していくためには、広い視野、先見性、創造性、変化への適応力等を備えた多様な人材の確保が従来にも増して必要となっている。今後の18歳人口の減少及び就学構造の変化等を考慮すれば、引き続き、募集活動の質的な強化を図っていくことが重要である。

以下、I種試験、II種試験及びIII種試験の実施状況等における平成8年度の特徴的な事項についてみると、次のとおりである。

I種試験実施風景


ア I種試験

表1-3 国家公務員採用I種試験合格者の国・公・私立別出身大学数の推移


イ II種試験 ウ III種試験 エ 視覚障害者の試験実施結果

点字試験の申込者数は、I種試験2人(前年度2人)、II種試験5人(同2人)、拡大文字試験及び試験時間延長措置による試験の申込者数は、I種試験2人(同2人)、II種試験3人(同5人)、III種試験10人(同7人)であった。この結果、点字による試験を導入した平成3年度以来、II種試験において初めて1人が合格した。また、拡大文字等による試験においても、平成6年度のII種試験(2人)に続き、III種試験で1人の合格者があった。

オ 民間企業の採用活動との関係

就職協定協議会(大学等関係団体と企業等関係団体で構成)は、平成8年度の大学生の就職協定期日について、7年度と同様に、「企業説明会及びリクルターとの接触開始は、7月初旬以降を目標とする。採用選考開始は、8月1日前後を目標として、企業の自主決定とする。採用内定は10月1日」と取り決めた。

公務におけるI種試験については、試験日程を就職協定に合わせて設定し、民間企業と並行して官庁訪問、採用選考を行うことができるようにしたことから、例年同様順調に人材の確保を図ることができたものと考えられる。

なお、平成9年度の就職採用活動については、平成9年1月20日、大学側と企業側との間において、これまでの就職協定は締結されず、大学側は「平成9年度大学及び高等専門学校卒業予定者に係る就職事務について(申合せ)」を、企業側は「新規学卒者採用・選考に関する企業の倫理憲章」を定め、これらによって就職採用活動が行われることとなっている。

雇用関係指数の変化と国家公務員採用試験申込者数の推移

我が国の雇用情勢は、昭和61年12月から平成3年までの「超大型景気」を背景に企業が積極的な人材確保を展開したため、空前の人手不足時代が到来した。その影響もあり、国家公務員採用試験の申込者は平成3年まで減少が続いた。その後、平成4年からは景気が徐々に減速、新規学卒市場が一転して「買い手市場」になったこともあり、国家公務員採用試験の申込者は大幅に増加した。平成8年12月現在、景気は「緩やかな回復傾向にある」ものの、有効求人倍率は依然厳しい情況にある。

このように、景気動向と雇用情勢が、国家公務員試験の申込者数にも大きく影響しているようである。

点字試験から初めての合格者

点字試験は、国家公務員採用I種試験及びII種試験の「行政」区分について、平成3年度から実施しているが、平成8年度のII種試験「行政・北海道地域」で、初めての合格者が出た。

平成7年度までの実施結果は、申込者がI種試験で9名、II種試験で26名であり、すべて第1次試験で不合格であった。

平成8年度の実施結果は、I種試験で2名、II種試験で5名の申込みがあり、II種の第1次試験で1名合格し、その者が最終合格となったものである。

今回の合格者は、札幌出身で、筑波大学附属盲学校高等部から明治学院大学法学部に進学し、高等部時代には親元を離れて寮生活をし、大学進学後は横浜のアパートで一人で暮らし、大学まで電車で通っていたという青年である。

本人は、持ち前の性格で、官庁訪問も積極的に行い、10月1日には晴れて労働省北海道商工労働観光部職業安定課に内定となった。

人事院としても、合格者の今後を大いに期待したい。


前(節)へ 次(節)へ
© National Personnel Authority