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第1編 ≪人事行政≫

第1部 ≪人事行政の動き≫

第1章 人事行政この1年の主な動きと今後の課題

VI 給与勧告と適正な給与の実現


1 平成11年給与勧告のポイント

〜職員の平均年間給与、戦後初の減少〜

人事院は、平成11年8月11日、国会及び内閣に対して、公務員給与の改定について、次の点を柱とする勧告を行った。

1) 指定職・本省庁課長級の職員については給与改定を見送り、一般職員に限り0.28%の給与改定

2) 民間の動向に合わせ、期末手当・勤勉手当等(ボーナス)を0.3月分引下げ

3) 福祉関係職員の適切な処遇を図るため、福祉職俸給表を新設

これは、厳しい経済・雇用情勢の下、民間給与の的確な把握をはじめ、民間の給与抑制措置や雇用調整等の実施状況、規模の小さい事業所の実態について幅広く調査を行い、各界・各層からの意見聴取に努めた上で、様々な角度から人事院のとるべき措置について熟慮した結果であり、職員の平均年間給与は戦後初めて改定前と比べて減少する(行政職の場合、額で9.5万円、率で1.5%の減少)という、厳しい内容の勧告となった。

人事院勧告を小渕首相に手渡す中島総裁

2 給与勧告の基本的考え方

このような勧告を行うに至った人事院の基本的考え方は、次のとおりである。

まず、勧告は労働基本権制約の代償措置であり、その内容についても、民間の動向を的確に反映させ、仮に公務員に労働基本権があればどのような結果となるのか等を念頭に置いて、検討することが要請されている。このような観点を踏まえると、

などを考慮していく必要がある。一方、民間事業所の約4割では管理職に給与抑制措置が実施されていることから、厳しい経済・雇用情勢を勧告に反映させていく必要があることも考慮した。さらに、企業規模100人未満の事業所の給与改定の状況についても、特別に調査したところ、約半数の事業所でベースアップが実施されており、厳しい情勢下でも給与改善努力が行われていることも認められた。

これらの状況に加え、省庁再編等行政組織の合理化(局課の大幅削減)・定員削減(10年間で25%削減)・行政コストの削減(10年間で30%削減)など行政の減量化や効率化の取組の状況、さらに勧告は給与制度の改正の重要な機会でもあることなど、諸事情を総合的に判断し、勧告に至ったものである。

3 給与改定の主な内容

平成11年勧告における給与改定の主な内容は、次のとおりである。

1) 俸給表の改定

  • ・ 行政職俸給表(一)10級・11級(本省庁課長級)については俸給月額の改定を見送り、9級(本省庁準課長級)については抑制的に改定 「早期立ち上がり型」の給与カーブへの修正を推進する観点から、一層傾斜的に配分(引上げ額200円〜2,000円)し、中堅層職員の改善に重点 (各俸給表についても、行政職に準じた改定)
    ・ 初任給は、民間の動向を踏まえ、I種試験採用者は据え置き、II種・III種試験採用者は最低の0.1%(200円)の改定

2) 福祉職俸給表の新設

  •  高齢社会の到来等を踏まえ、福祉関係職員の人材確保、処遇改善の観点から、国の社会福祉施設等に勤務する生活指導員、保育士などの専門的な知識、技術をもって、指導、保育、介護等の対人サービス業務に従事している職員(約1,000人)を対象として、その職務の専門性にふさわしい適切な処遇を図るため、福祉職俸給表を新設
    <初任給を高めの水準とした「高原型」の給与カーブ、簡素な職制にふさわしい6級構成の俸給表>

3) 期末・勤勉手当等の支給月数

  •  民間のボーナスの支給割合との均衡を図るため、支給月数を年間0.3月分引下げ(年間平均4.95月)。この結果、平成11年12月期の公務員ボーナスは、前年同期と比べて8.6%の減少

4) 育児休業者に対する期末・勤勉手当等の支給

  •  民間の取扱いとの均衡を図る観点等から、基準日に育児休業中の職員のうち、算定期間に勤務実績がある職員に対し、在職期間等に応じて支給できるよう制度改正

なお、民間企業では業績等によってボーナスの水準が大きく変動する状況にある中、公務員特別給(期末・勤勉手当)の支給水準は、過去1年間における民間ボーナスの支給実績の調査に基づき法律改正が行われるため、上がるときも、下がるときも、民間の状況が公務に反映されるには、1年以上のタイムラグが生じているとの問題が指摘されていた。このため、各界の有識者からなる「公務員特別給の決定方法等に関する研究会」(座長:神代和欣横浜国立大学名誉教授)を設置して検討を行い、平成11年6月、同研究会から

などを主な内容とする報告が行われた。

4 平成11年給与勧告の取扱い

平成11年の給与勧告については、政府において給与関係閣僚会議が2回開催され、その取扱いが協議された結果、同年9月21日の第2回の同会議及び閣議で、勧告どおりの給与改定を実施することが決定された。

給与法等の改正法案は、平成11年11月8日、第146回国会(臨時会)に提出され、同月18日原案どおり成立し、同月25日に公布・施行された。

なお、同月11日、参議院総務委員会における改正法案の議決に際し、「人事院勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることを踏まえ、政府は人事院勧告制度を引き続き尊重すること、人事院は官民給与の精確な比較等により公務員給与の適正な水準の維持・確保に努めること」等を内容とする附帯決議が行われた(衆議院内閣委員会においても同旨の附帯決議(同月16日)がなされた。)。

5 今後の給与制度改正の方向 〜職務や能力・実績の一層の反映〜

ここ数年、多くの民間企業においては社会経済情勢が大きく変動し経営環境が変化する中で、事業の再構築に努めながら、企業競争力を支える人材を確保し、従業員の士気の向上や経営参画意識の醸成等を図るため、人事管理の改革の動きが強まっており、賃金面でも年功的な要素を縮小し、能力・成果を重視する方向で見直しが進められている。

公務においても、社会経済システムが変革する中、困難な行政課題に取り組むための高度の知識・専門能力を持つ人材の確保・活用の必要性や在職期間の長期化、公務組織の変化等に伴う今後の公務員人事管理の弾力化、多様化の進展等を踏まえながら、職員の職務を基本に個人の能力・実績に応じた給与体系への転換を図る方向で検討を進めている。

このうち基本的な給与を定める俸給表については、近時、各級の給与カーブの「早期立ち上がり型」への修正を進め、また、昇給停止年齢の引下げを行うなど、給与配分の適正化を積極的に進めてきているところであるが、各級の号俸構成や昇給制度などの枠組みは高度成長期以降、現在まで基本的に変わっておらず、現行のままでは、諸情勢の変化に柔軟・的確に対応することに限界が生じている状況となってきている。

今後、行政環境の変化や民間賃金の改革の動向など諸情勢の変化に柔軟かつ的確に対応して、職務や実績に応じた適正な給与処遇を推進していくため、これまでの一律的、画一的な昇給等の制度や運用の在り方について基本的な見直しが必要となっている。

具体的には、

などを可能とするシステムを目指し、俸給体系の基本的な見直しについて検討を進めているところである。

図2 民間企業の人事・給与制度(体系)改正等の状況



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