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第1編 ≪人事行政≫

第1部 ≪人事行政の動き≫

第1章 人事行政この1年の主な動きと今後の課題

VIII 営利企業への就職及び兼業


1 営利企業への再就職の状況

平成11年に人事院が承認した営利企業への再就職の件数は62件であり、承認件数は5年連続して減少し、5年前と比較すると3分の1以下の件数となっている。このような大幅な減少の背景として、営利企業への再就職に対する国民の批判にこたえ、各省庁において自粛に努めたことが挙げられる。

この承認件数の中には、職員の有する専門的な知識や能力等を広く社会で活用する観点から、平成10年4月に設けられた透明度の高い再就職の仕組みである「公正な人材活用システム」によるものが3件含まれている。このシステムによる就職承認は平成11年4月に初めて行われたものであるが、今後、再就職に当たってこのシステムの一層の活用が期待される。

なお、人事院は、平成10年4月には再就職の承認基準を改正し、企業と省庁との関係についての規制等を強化したところであるが、今後も引き続き、営利企業への再就職の承認に当たっては、厳正な運用に努めることとしている。

表1 承認件数の推移(平成6年〜平成11年)

2 国立大学教官等による営利企業の役員兼業

国家公務員が営利企業の役員等を兼ねることについては、国公法により原則として禁止されているが、規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、認めることができることとされている(国公法第103条)。役員兼業を認めるためには、営利の追求を目的とする企業の役員の立場と全体の奉仕者という国家公務員の基本的性格の整合性が図られる必要がある。そのような観点に立って、今般、以下のような形態の役員兼業に途を開くこととした。

(1) 技術移転事業者(TLO)の役員兼業

人事院は、「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(平成10年法律第52号)に定める技術移転事業については、産業界における新たな事業分野の開拓、産業技術の向上や大学等における研究活動の活性化に寄与するなど高い公益性が認められることなどから、技術移転事業者(TLO)の役員に国立大学教官等が兼業することについて、一定の要件の下で認めることとした。そのための承認基準、承認手続等を定める規則の制定について、平成11年10月に意見募集(パブリック・コメント)手続を行うとともに、関係省庁等の意見を聴取しつつ検討を進め、平成12年3月31日に規則14-17(国立大学教員等の技術移転事業者の役員等との兼業)を公布し、同年4月1日から施行した。

(2) TLO以外の営利企業の役員兼業

国立大学教官等がTLO以外の営利企業の役員を兼業することについて関心が高まる中、平成11年6月、内閣総理大臣の指示を受けて関係省庁による「国立大学教官等の民間企業役員兼業問題に関する連絡会議」が設置され、同時に内閣総理大臣から人事院に対しても検討の要請がなされた。

国立大学教官等の役員兼業の問題については、全体の奉仕者としての公務員の基本的性格と営利企業の経営責任を担う役員の立場との調和をどのようにして図るかが基本となる。人事院は、上記の連絡会議に参加するとともに、専門機関としての立場から、公法学者をはじめ各方面の意見を広く聴きながら、この点を中心に検討を進めた。その結果、上記の連絡会議の取りまとめ(同年11月29日)においても人事院の考え方が反映され、次いで、人事院総裁も参加した関係閣僚等による申合せを経て、閣議了解が行われ(同年11月30日)、国立大学教官等の「自己の研究成果の事業化を目的とする民間企業の役員兼業」と「監査役との兼業」について、一定の要件の下、途を開くこととなった。

前者については、国立大学教官等の研究成果を事業化することに公益性があることを法律上明確化することにより、全体の奉仕者性との調和を図ることが可能との理解に立つものである。これを受けて、大学等における研究成果の事業化の公益性を明らかにする諸規定等が盛り込まれた産業技術力強化法(平成12年法律第44号)が制定され、平成12年4月20日から施行されている。

他方、後者については、監査役は企業経営の適法性をチェックするものであって営利追求を目的とした経営判断に参画しないことなどの点で国家公務員の全体の奉仕者性と矛盾しないとの考え方によるものである。

人事院は、これらの申合せ等を踏まえ、国公法第103条に基づき承認するに当たっての承認基準、承認手続等を定める規則の制定に向けて、関係省庁等の意見も聴きながら検討を進め、意見募集(パブリック・コメント)手続を行った上、平成12年4月19日に規則14-18(国立大学教員等の研究成果活用企業の役員等との兼業)及び規則14-19(国立大学教員等の株式会社等の監査役との兼業)を公布した。いずれも同年4月20日から施行している。


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