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第1編 ≪人事行政≫

第1部 ≪人事行政の動き≫

第2章 これからの行政における公務員の役割 〜副大臣制等の導入下における政と官〜

第四 新たな政官関係の下での人事管理システムの改革


国政における政治主導の強化や行政の在り方についての様々な変革の下でも、行政の専門家として政策の企画立案や行政執行に当たる公務員の基本的な役割は、今後ともその重要性において変わるところはないと考えられる。

新たな政官関係の下で、職業公務員の役割について広く理解を深め、行政に有為な人材を確保し、高いモラールを維持していくことは、行政における中立・公正性や専門性を確保し、国民に対する良質な行政サービスを提供する上で不可欠なものと考えられる。

人事院としては、これまでも幅広く人事管理システム全般について改革を進めてきているが、このような認識の下、今後とも公務員がその役割を十分に果たし、国民の期待にこたえられるよう、次のように人事システムを改革していくこととしている。

1 国民と同一の生活感覚・目線を持った公務員の確保・育成
(1) 多様な業務・生活体験の機会の付与

国家公務員の人事管理では、幹部要員に対して特別な人事ローテーションを組んで養成するシステムが採られているが、この人事ローテーションの一環に、税務署、職業安定所など行政の第一線の窓口で国民と直に接する現場体験を通じて、国民の生活感覚や悩みを知る機会を付与することや、官民交流による民間企業での勤務経験を組み込むことによって、国民としての常識を保持し、公に奉仕する意識を備えた公務員を育成していくことが必要と考える。また、海外ボランティア等を可能とし、業務以外の多様な経験を積む機会を意識的に与えるための休業制度の導入についても検討を進めることとしている。

(2) 弾力的・開放的な人材の登用と活用

公務員のこれまでの人事管理については閉鎖的、硬直的であるため、均質な人材が前例に倣った対応・判断を行い、その結果、公務の活力が損なわれているとの指摘がある。公務員が柔軟で弾力的な姿勢を保持し、状況の変化に的確に対応するためには、同質的な閉鎖的集団となることなく、異なる人材を取り込み活用する人事システムを構築し、専門能力を持つと同時に公務組織とは異なる組織等での経験やこれまでの幹部とは異なる感覚を有する人材を積極的に登用し、活用することが求められている。

人事院としては、このような観点から、公務外での多様な経験や専門的な知識等を有する人材の積極的な採用、女性職員の登用の拡大、II種・III種等採用職員からの幹部登用、技官人事の弾力化などに取り組んでいくこととしている。また、官民・省庁間の人事交流や国・地方間の双方向の交流の推進も重要である。

行政における企画と執行の分離が進む中で、企画立案に当たる公務員が行政の実務や政策対象となる現場の実態に明るくないという事態が生じないよう、企画立案部門の公務員にも現場経験を積ませることなどに配慮していく必要がある。

(3) 公務員としての使命感・倫理意識の高揚

公務員が国民に奉仕する意識と専門家であることの誇りを堅持できるような人事管理を進める必要がある。近年の公務員不祥事に照らすと、特に幹部公務員や行政権限の行使に当たる公務員には、国民全体に奉仕する精神を持つと同時に、国民と同一の生活感覚・目線に立って行政に当たるようにする必要がある。そのため、今後幹部研修において公務員として保持すべき基本的素養を高め、心構えを確認することや社会における生活者としての視点を取り入れることなどの方策について検討していくこととしている。人事院としては、これまでも人事院総裁賞を設け、行政の各分野において高い使命感を持って日夜職務に精励している職員を顕彰してきたところである。

2 高度の専門知識、能力を有する公務員の確保・育成

新たな政官関係の下において、政策の企画立案に当たる公務員の役割は、従来のような調整業務を主体とするものから所管行政の専門家としての業務を主体とするものに転換していくことが求められる。このため、引き続き行政の専門家として政策の企画立案にかかわることが期待される公務員には、担当分野の専門家として日常的に専門性を高める努力が求められる。

(1) 高度の専門能力を有する民間人材の採用システムの導入

行政に必要な高度の専門能力を持つ人材については、これまでも中途採用の拡大を図ってきており、既に、弁護士や公認会計士、金融、原子力の専門家などについて相当数の採用実績がある。さらに、民間人材の採用を円滑化するため、任期を定めた採用を行い、適切な処遇を確保し得る民間人材採用システムの整備について鋭意検討を進めている。

今後、官と民との間で人材の交流、流動化が円滑に進むためには、国際化の時代における行政の高度の専門性に対応し得る人材供給の基盤が整備される必要があり、その観点から政策研究機関としてのシンクタンクの充実が望まれる。

(2) 行政の専門性を高めるための研修、研鑽の強化

専門家には自ら積極的に研鑽することが求められており、公務員も行政の専門家としてその例外ではない。新しい政官関係の下で公務員が政策の企画立案等において大臣等を補佐し、適切な助言を行っていくためには、専門家としての高度の専門能力が不可欠である。また、これからの公務員については、国民及び国民を代表する政治家との関係において、所管行政において提起する政策の合理性や政策の結果等について説明することが求められるため、プレゼンテーションの能力も要請される。

このため、各省の人事管理において、一つのポストにおける在任期間の長期化など業務遂行の過程を通じて専門性を高めることや、職員が自己啓発しやすい環境をつくるような人事管理上の配慮を行っていくことが求められる。幹部職員の早期退職慣行を是正し、経験豊かな職員をスタッフとして活用することも組織の専門能力を高める上で重要である。

人事院では、内外の学術機関における高度の研究機会を付与すること、外国大学院への留学、国際機関等での勤務などの機会を充実すること、国際化等への対応の観点から職員の育成過程で博士号の取得を支援することなどに取り組んでいくこととしている。

また、人事院においては、各省の幹部・幹部要員を対象に階層別に実施している合同研修において、我が国が直面している様々な政策課題についての研究を通じて政策立案能力の向上を図ってきているが、新しい時代の要請に公務員がこたえ得るよう、公務員としての高度の専門能力等を高めていく観点から、公務員研修の充実、強化を図っていく必要があると考えている。

3 成績主義を徹底するための評価システムの整備

今後の新しい政官関係の下で、公務員が専門家集団としての誇りと使命感を保持し、その特質をいかして、適切な政策の企画立案や中立・公正な行政執行の面でその期待される役割を十全に果たしていくためには、能力、実績に基づく公正な人事管理を徹底していくことが求められている。

このような要請にこたえ、成績主義に基づく公正な人事を行う基礎として、公務員の能力、適性、実績を適切に評価するシステムを整備することが肝要である。人事院では、客観性、納得性のある評価システムの整備に向けて、幅広く検討を進めている。これにより、採用試験の別や採用年次などにとらわれない能力や適性に基づく弾力的人事配置や昇進選抜、職務や勤務実績に応じた給与処遇が推進され、政治を補佐する公務員の専門家集団としての機能が高められるものと考えている。


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