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第1編 ≪人事行政≫

第2部 ≪平成11年度業務状況≫

第1章 職員の任用

第1節 採用試験


1 試験の概要

人事院が試験機関として自ら実施する採用試験は、表1-1のとおり14種類15回である。このほか、人事院の指定に基づき外務省が試験機関として実施する採用試験は、外務公務員採用I種試験、外務省専門職員採用試験の2種類、2回がある。(資料1-1)

表1-1 採用試験の種類

これらの採用試験のうち、I種試験、II種試験及びIII種試験は、主として各省庁に共通する官職を対象とするものであり、他の13種類の試験はそれぞれ個別の省庁の専門的官職を対象とするものである。

人事院が昭和24年1月に初めて採用試験を実施して以来、平成11年度末までのこれらの採用試験の実施回数は864回に及び、申込者数は約1,254万人、合格者数は約126万人、採用者数は約64万人である。

2 試験の周知と募集活動

平成11年度の採用試験全体の施行計画は、平成11年3月2日に官報公告を行い、あわせて新聞等の報道機関を通じて発表した。また、各採用試験の詳細については、受験申込受付期間を考慮し、14種類15回の採用試験を3回に分けて官報により告知したほか、政府広報を通じて新聞広告やスポット放送などを行うとともにインターネットによる情報提供も行った。

また、I種試験の受験者に対する支援として、申込者が受験、官庁訪問等を円滑に行えるよう、第1次試験の翌日の6月14日から7月2日まで、人事院1階ロビーに採用相談室の相談コーナーを開設して、より多くの受験者が気軽に採用相談が行えるように対応した。

募集活動としては、ポスター、受験案内、パンフレット等募集資料を作成し、全国の大学、高等学校、公立図書館、公共職業安定所等へ掲示を依頼して、採用試験の周知を図った。また、大学卒業程度の試験については、大学等の学生を対象とした採用試験制度の説明会に職員を派遣するとともに、公務の魅力や各省庁が期待する人材をPRするため、各省庁参加の学生説明会や公務講演会を開催し、トピックとなっている行政課題、行政施策をテーマとする大学での特別講座へ現役公務員を講師として派遣する等募集活動を積極的に行った。さらに、高等学校卒業程度の試験については、高等学校の就職担当教諭への説明会及び意見交換会を行うなど公務への人材誘致に努めた。

「女性公務員による女子学生のための霞が関セミナー」の開催

人事院は、「男女共同参画社会基本法」が制定され、今後、女性の活躍の場が一層広がっていくことが期待されることから、多くの女性に公務を志望してもらうよう、全国の女子学生を対象に、司会者、講演者をはじめすべてを女性公務員で構成する「女性公務員による女子学生のための霞が関セミナー 〜やりがいのある仕事と充実した私生活のために〜」を、平成12年3月22日、東京・霞が関で実施しました。

女子学生の関心は非常に高く、全国各地から約1,000人の参加が得られました。人事院上村任用局長のあいさつに続いて、労働省の藤井女性局長が「自身の経験による公務の魅力、働きがい、求める人材等」について講演を行いましたが、参加者は熱心に聞き入り真剣にメモを取っていました。

講演の後、参加者と若手女性公務員8人との意見交換会では、育児と仕事の両立、性別や出身大学による差はあるか、海外派遣のチャンスはあるかなど多方面に及ぶ熱のこもったやりとりが行われました。

アンケートによれば、参加者の評価は高く、このような催しは後輩のためにも是非継続してもらいたいとの意見が多く寄せられています。

人事院では、将来の行政を担う人材を確保するための様々な活動を行っており、各地の大学等においても採用試験等に関する説明会を実施していますが、女子学生を対象とした特別の説明会として、このセミナーのほかにも、大学施設等における「女子学生のための公務講演会」等を実施しています。

3 試験の方法

採用試験は、それぞれの試験の対象となる官職に有為な人材を確保するため、受験者について職務遂行に必要な能力を有するかどうかを相対的に判定することを目的としている。

そのため、試験は、官職の職務遂行に必要な知識、技術、その他の能力を検証する方法として、教養試験、専門試験、人物試験等の試験種目のうちから、それぞれの試験ごとに効果的な試験種目を組み合わせて実施している。例えば、I種試験においては、国家公務員として必要な一般的な知識及び知能をみるための「教養試験」、行政、数学等28の区分試験ごとに必要な専門知識、技術などをみるための「専門試験」、総合的な判断力、思考力等をみるための「総合試験」をそれぞれ筆記試験により行い、さらに、人柄、性向などをみるための「人物試験」を面接試験により行っている。

これらの試験種目のうち、専門試験及び総合試験の内容については、試験専門委員として委嘱した大学の教授及び各省庁の専門的知識を有する職員等とともに審議を重ねたうえで決定している。

試験の実施後は、その結果の分析を通じて試験方法の検討を行うほか、必要に応じて各学校の教科内容の実態調査を行い、試験問題作成の参考としつつ試験の改善を図り、試験の妥当性、信頼性を高めるよう常に研究を続けている。

4 実施結果

人事院では、行政の高度化、複雑化、国際化等が進む中で、今後の行政を担うのにふさわしい多様な人材を安定的、継続的に確保していくことの重要性にかんがみ、情勢の変化に対応して試験内容、試験方法の改善を行うとともに、雇用環境等を踏まえた適切な募集活動、試験日程の設定等により、公正かつ効果的な試験の実施を図っている。

(1) 試験方法等の改善

平成11年度については、次のような試験方法等の改善を行った。

ア 試験施行日程

平成9年度に就職協定が廃止されたことに伴い、多くの民間企業が優秀な学生の確保を急ぐ余り、採用活動が一段と早期化してきたため、大学卒業程度の試験であるI種試験、II種試験、国税専門官採用試験、労働基準監督官採用試験及び法務教官採用試験の受付開始時期を早める(5月6日→4月2日)とともに、受付期間を延長(8日間→42日間)した。

イ 人物の重視

II種試験の人物試験においては、平成9年度の試験から、特に優れていると評価された者(最上位段階評価の者)については、一定の換算点を筆記試験の得点に加算する方式をとっているが、平成11年度からさらに最上位に次ぐ段階の評価を受けた者にも一定の換算点を加算する措置をとった。

ウ 試験方法

I種試験の教養試験について、行政を担う人材には、時代感覚、市民感覚が必要であるという今日的要請に応えるために「時事」を新設し、必須解答とした。また、「文章理解」等のいわゆる知能分野は、1題でより多面的な能力を検証できるよう問題の一層の質的改善を図り、同分野の要解答数を削減するとともに必須解答制に変更した。さらに、同分野の「判断推理」及び「数的推理」は、「判断・数的推理」と改称し、両分野を融合した出題とした。

なお、国税専門官及び労働基準監督官の各採用試験についても同様の改正を行った。

エ 試験地

受験者の利便を考慮し、II種試験の第1次試験地に「山口市」を新設した。

また、III種試験の第1次試験地「津山市」は、年々申込者数が減少傾向にあり、今後も大幅な増加は期待できないこと等から「岡山市」に統合した。

オ 区分試験の休止

III種試験の区分試験「建築」について、採用予定数の減少等に伴い、新たに「東北地域」及び「九州地域」を休止した。

(2) 実施状況

平成11年度に実施した採用試験の状況は、表1-2のとおりである。

表1-2 平成11年度国家公務員採用試験実施状況一覧


I種試験は、対象となる官職に必要とされる専門知識等に応じて28の区分試験に分けて実施している。同様にII種試験は12、労働基準監督官採用試験及び法務教官採用試験は2、III種試験は11、刑務官採用試験は2、航空保安大学校学生採用試験及び海上保安学校学生採用試験は3のそれぞれの区分試験に分けて実施している。

さらに、II種試験のうち区分試験「行政」及びIII種試験のうち区分試験「農業」、「農業土木」、「林業」以外の8の区分試験並びに刑務官採用試験については、合格者の地域的偏在を防ぎ、全国各地に所在する官署の採用に応じられるようにするため、地域別の試験に分けて実施している。(資料1-21-9)

申込者総数は、276,607人で、前年度に比べ38,977人(16.4%)の増加となった。このうち、人事院が試験機関となっている14種類の試験の申込者総数は274,253人で、39,008人(16.6%)の増加となっている。大学卒業程度の試験では136,054人で17,250人(14.5%)の増加、高校卒業程度の試験では138,199人で21,758人(18.7%)の増加となっている。

図1-1は、昭和60年度以降の申込者数の推移を示したものである。平成3年度までは減少傾向が続いたものの、その後は一転して4年度から6年度にかけて18%台から24%台の大幅な増加傾向を示した。しかし、7年度は1.4%の小幅な増加にとどまり、8年度からは11.0%、14.9%、5.2%と再び減少したが、11年度は16.6%と再度大幅な増加に転じた。

図1-1 国家公務員採用試験申込者数の推移


なお、合格者総数は、前年度より3,129人(16.9%)少ない15,347人で、このうち、人事院が試験機関となっている14種類の試験では、合格者総数は、前年度より3,131人(17.0%)少ない15,266人となっている。(表1-2)

また、平成11年度の試験の申込者数の合格者数に対する倍率は、合格者数の減少もあり,大学卒業程度の試験は16.3倍で前年度に比べ3.0ポイント、高等学校卒業程度の試験は19.9倍で同7.6ポイントいずれも高くなっており、引き続き高い倍率となっている。(表1-2)

ところで、長引く不況等による社会経済情勢の変化、国際化の進展、国民の行政ニーズの複雑多様化等行政をめぐる環境の変化は著しく、行政がこのような状況に適切に対応していくためには、広い視野、先見性、創造性、変化への適応力等を備えた多様な人材の確保が従来にも増して必要となっている。これからの若年人口の減少及び就業意識の変化等を考慮すれば、「女性公務員による女子学生のための霞が関セミナー」、「学生のための霞が関ツアー」の開催など引き続き積極的な募集活動の質的強化を図っていく必要がある。

学生のための霞が関フォーラム


学生のための霞が関ツアー


以下、I種試験、II種試験及びIII種試験の実施状況等における特徴的な事項についてみると、次のとおりである。

ア I種試験

(ア) 申込者数は40,535人、合格者数は1,252人である。これを前年度と比べると、申込者数は4,781人(13.4%)と大幅な増加となった。一方、合格者数は13人(1.0%)増加した。(表1-2)

また、図1-2は、昭和63年度以降のI種試験の系統別申込者数の推移を示したものであるが、平成11年度は、法文系において3,309人(16.5%)、理工系において1,205人(10.7%)、農学系においては267人(6.0%)とそれぞれ増加し、平成7年度以降4年ぶりにすべての系統において前年度を上回った。

図1-2 国家公務員採用I種試験の系統別申込者数の推移


(イ) 申込者及び合格者を学歴別にみると、大学卒業者等(卒業者、在学者、中退者をいう。以下同じ。)の占める割合は、申込者の73.1%(前年度72.8%)、合格者で49.3%(同48.1%)となっており、また、大学院修了者等(修士・博士課程修了者、在学者、中退者をいう。以下同じ。)は、申込者の割合では24.2%(同24.3%)であるのに対し、合格者では50.5%(同51.4%)を占めている。

さらに、合格者について試験の系統別にみると、法文系では大学卒業者等が85.5%(同81.0%)と前年度に比べて増加し、大多数を占めている。これに対し、理工系及び農学系では大学院修了者等が多数を占め、理工系で74.5%(同73.5%)、農学系で69.7%(同67.8%)となっている。(資料1-10)

(ウ) 近年女性の進出が著しく、昭和60年度には3,378人であった申込者数が、平成11年度は10,652人となり、前年度に比べても1,171人(12.4%)増加している。一方、平成11年度の構成比は26.3%(前年度26.5%)と前年度に次ぐ高さとなった。また、合格者数は180人(同176人)で4人(2.3%)増加し、合格者中に占める割合は平成8年度の15.1%に次ぐ高さの14.4%となっている。(資料1-11)

(エ) 合格者の国・公・私立別の出身大学(大学院を含む。)数の推移は表1-3のとおりであり、平成11年度は国立及び私立大学が前年度を下回り、全体では84校(前年度98校)であった。

表1-3 国家公務員採用I種試験合格者の国・公・私立別出身大学数の推移


I種試験実施風景


イ II種試験

(ア) 申込者数は72,715人、合格者数は6,072人である。これを前年度と比べると、申込者数は8,473人(13.2%)増加したが、一方、合格者数は採用予定数の減少により470人(7.2%)減少させた。(表1-2)

(イ) 申込者及び合格者を学歴別にみると、大学卒業者等の占める割合は、申込者の81.8%(前年度81.4%)、合格者の83.2%(同84.3%)、大学院修了者等の占める割合は、申込者の10.4%(同9.6%)、合格者の15.2%(同13.7%)となっている。短期大学・高等専門学校等及び高等学校・その他の学歴を有する者は、申込者の割合が7.8%(同9.0%)に対して、合格者は1.6%(同2.0%)にとどまっている。(資料1-12)

(ウ) II種試験においても女性の進出は目覚ましく、申込者数については、本試験が創設された昭和60年度の10,233人に対し、平成11年度は23,766人と2.3倍になった。前年度に比べても2,709人(12.9%)増加している。(資料1-13)

また、合格者数は創設当時の602人に対し、平成11年度は1,642人と2.7倍となったが、前年度より107人減少した。しかし、合格者全体に占める割合は27.0%と前年度(26.7%)を上回っている。

(エ) 申込者及び合格者の出身大学(大学院を含む。)を国・公・私立別にみると、申込者では私立大学が57.0%(前年度56.6%)、国立大学が31.1%(同30.2%)を占め、合格者では私立大学が48.0%(同49.6%)、国立大学が45.0%(同43.6%)となっている。また、合格者の出身大学数は285校(同281校)で、このうち、私立大学は178校(同174校)と全体の62.4%(同61.9%)を占めている。(資料1-141-15)

(オ) 平成10年度から行政区分に導入した他地域受験制度による申込者数は5,507人で、申込者の10.0%を占めている。これを地域別にみると関東から他の地域への申込者数が1,636人(29.7%)を占め、他の地域から関東への申込者の1,404人(25.5%)を上回っており、申込者のUターン化傾向を示している。なお、この傾向は近畿及び九州においても同様となっている。(資料1-16)

(カ) II種試験は、原則として受験する年の4月1日現在における年齢が21歳以上29歳未満の者を対象としているが、21歳未満の者でも短期大学・高等専門学校等の卒業者又は卒業見込みの者には受験資格を与えている。これらの者の申込者全体に占める割合は2.9%(前年度3.5%)、合格者全体に占める割合は0.7%(同1.1%)となっており、減少傾向にある。

ウ III種試験

(ア) 申込者数は108,995人、合格者数は5,270人である。これを前年度と比べると、申込者数は16,409人(17.7%)増加したが、一方、合格者数は採用予定数の減少により2,658人(33.5%)減少させた。(表1-2)

申込者数については、近年、18歳人口の減少や大学等への進学率の上昇などを背景として減少傾向にあった。特に、平成8年度及び平成9年度に、行政事務及び技術系区分の受験資格の上限年齢(23歳未満)を1歳ずつ引き下げ、21歳未満にしたことも大きな要因となり、大幅に減少した。平成11年度においては、平成8年度以来3年ぶりに10万人を超えた。区分別に前年度と比べると、行政事務で3,840人(30.0%)増加し、郵政事務Aでは20,028人(43.5%)の大幅な増加となったが、郵政事務Bでは、採用予定数の大幅な減少が影響し、7,620人(32.0%)の減少となった。なお、税務は212人(4.3%)増加し、技術系区分では51人(1.0%)と僅かながら減少した。(資料1-6)

(イ) III種試験は高校卒業程度の試験として実施しているが、受験資格を税務では20歳未満、行政事務及び技術系では21歳未満、郵政事務A・Bについては25歳未満としている。受験資格年齢の低い行政事務、税務、技術系の区分の学歴の状況についてみると、これらの区分全体に占める高校卒業者等(卒業者、在学者、中退者をいう。以下同じ。)の割合は、申込者で53.2%(前年度55.4%)と4年連続して5割を超え、合格者では47.8%(同50.2%)と減少はしたものの約半数を占めている。

一方、郵政事務の区分は、近年の厳しい就職事情や受験対象年齢層の就職意識の多様化等を反映し、申込者に占める大学卒業者等の割合は前年度の47.4%から56.9%へと更に増加した。(資料1-17)

また、合格者についても、大学卒業者等が76.8%(同67.3%)となり、4年連続で申込者、合格者とも、大学卒業者等の割合が高校卒業者等を上回り、過去最高となった。

(ウ) 女性の申込者及び合格者についてみると、申込者数は46,717人(前年度38,853人)で申込者全体の42.9%(同42.0%)、合格者数は2,095人(同3,212人)で合格者全体の39.8%(同40.5%)となっており、全体に占める割合をみると申込者数、合格者数とも、前年度とほぼ同様な状況となっている。(資料1-18)

(エ) 他地域受験制度による申込者は、8,351人(前年度5,466人)で、申込者の7.7%(同5.9%)を占めている。これを地域別にみると東北地方から関東地方へ、九州地方から関東地方への申込みが多く、関東地方への申込者が全体の46.6%(同54.4%)を占め、首都圏における人材確保に寄与している。(資料1-19)

エ 視覚障害者の試験実施結果

点字試験の申込者数は、II種試験1人(前年度1人)、拡大文字試験及び試験時間延長措置による試験の申込者数は、I種試験1人(同2人)、II種試験1人(同3人)、III種試験4人(同2人)であった。

なお、いずれの試験においても合格者はいなかった。


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