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第1編 ≪人事行政≫

第2部 ≪平成11年度業務状況≫

第2章 職員の給与

第1節 給与に関する報告と勧告


1 給与勧告の仕組み
(1) 基本的考え方(給与勧告の意義等)

人事院の給与勧告は、公務員が民間企業の勤労者とは異なり、争議権などの憲法上の労働基本権が制約されていることの代償措置であり、民間企業における労使交渉等に代わるものとして、職員に対し、社会一般の情勢に適応した給与を確保する機能を有するものである。

人事院は、社会経済情勢全般の動向や広く国民各層の意見を踏まえながら、官民の給与を精確に比較し、職員の給与水準を民間の給与水準に均衡させること(民間準拠)を基本に給与勧告を行ってきている。このような勧告が実施され、職員に対して適正な給与が確保されることは、職場の労使関係の安定や人材の確保等を通じ、能率的な行政運営の基盤となるものと考える。

(民間準拠方式をとる理由)

人事院が民間準拠を基本に勧告を行っている理由は、1)国は民間企業と異なり利潤を追求するものではなく、市場原理による給与決定は困難であること、2)職員も勤労者であり、適正な給与の確保が必要であること、3)職員の給与は国民の負担で賄われていることなどから、「世間相場」により適切に決定するのが最も合理的であると考えられるからである。

(公務員の身分保障と給与)

公務員には「国は倒産がない」という意味で失業はないが、公務員の身分保障は、公務の中立性・安定性の確保を目的とするものである。このため、公務員には、政治的行為の制限、秘密を守る義務など罰則も伴う厳しい服務規律が課せられている。行政を取り巻く環境が複雑となる中、行政の公正性・専門性を確保しつつ、国民に対し質の高い行政サービスを提供するためには、良質な人材の確保が必要であり、職員に適正な処遇を確保することが不可欠である。

また、民間の給与水準は、失業率を含めてその時々の雇用情勢をも反映しており、人事院勧告を通じて、公務員給与を民間企業で働いている従業員の給与に合わせていくことが、最も合理的である。

(2) 官民給与の比較
(月例給)

官民の給与を比較する場合には、単純な平均値によるのではなく、官民ともに個々人の主な給与決定要素である職種、役職、学歴、年齢などを同じくする者同士を対比させることが最も適切である。このため、人事院は、毎年、「国家公務員給与等実態調査」及び「職種別民間給与実態調査」を実施して官民の4月分の給与を的確に把握し、ラスパイレス方式により精密な比較を行い、算出された較差を埋めることを基本に勧告を行っている。

この職種別民間給与実態調査は、給与改定の有無や賃金カットの有無にかかわらず実施しており、ベースアップの中止、ベースダウン、定期昇給の停止、賃金カットなど給与抑制措置等を行った事業所の給与の状況を含めて、官民の給与較差が算出される。

(特別給)

特別給についても、職種別民間給与実態調査により、民間の賞与等の過去1年間の支給実績を精確に把握し、これに職員の期末・勤勉手当の年間支給月数を合わせることを基本に勧告を行っている。この方式は、民間の支給状況が職員の期末・勤勉手当の支給月数に反映されるまでに1年以上の遅れを伴うものであるが、精確性や信頼性の点で優れており、各界の有識者からなる「公務員特別給の決定方法等に関する研究会」(座長:神代和欣横浜国立大学名誉教授)の報告(平成11年6月)においても、今後とも維持するのが適当であるとされた。

図2-1 給与勧告の手順


≪研究会の報告のポイント≫

  • 1 民間ボーナスの過去1年間の支給実績を調査し、毎年8月頃の人事院勧告により、公務員特別給の支給水準を定めるという「民間準拠」のシステムは、精確性、信頼性の点で優れており、今後も基本的に維持するのが適当
    2 このシステムの下では、公務員特別給の水準は前年の民間の実績を反映したものになることについて、人事院は十分な説明を行い、国民の理解・納得を得るよう努めるべき
    3 民間ボーナスに相当程度の変動があったと見込まれ、給与勧告を待たずに6月期の公務員特別給の改定について検討する必要があると認められる場合には、人事院が特別の調査等を行った上で、特別の勧告を行い、速やかに官民ボーナスの均衡を図ることが妥当
    4 年間支給月数の引下げが必要な場合は、当年は遡って引き下げることが難しいことから、12月期または3月期で必要な引下げを行い、翌年は本来の適切な配分を基礎に6月期を含めて調整し直すことを原則とする
2 公務員給与の実態調査

人事院は、官民給与の精確な比較を行う基礎として、毎年、「国家公務員給与等実態調査」を実施している。

平成11年は、同年1月15日現在における給与法適用の常勤職員(休職者、派遣職員、在外公館に勤務する職員等を除く。)について全数調査を実施した。

調査事項は、職員の俸給及び諸手当、年齢、経歴、定年退職等による離職の状況等であり、例年とほぼ同様である。

平成11年の調査結果の主な内容は、次のとおりである。

(1) 職員構成の実態

ア 給与法の適用を受ける常勤職員の総数は、平成11年1月15日現在500,517人であり、その後の定年退職者等の離職者及び採用者を除いた同年4月1日における人員は488,592人である。以下に示す職員の在職状況及び給与は、この4月1日における人員を基礎としたものである。

イ 俸給表別の人員は、行政職俸給表(一)が223,539人(全体の45.8%)と最も多く、以下教育職俸給表(一)の59,597人(同12.2%)、税務職俸給表の54,408人(同11.1%)等の順となっている。(資料2-2)

また、職種別の人員を10年前の平成元年と比較すると、図2-2に示すとおりである。人員の増減をみると、行政職(14,790人)、海事職(252人)が減少しているのに対し、教育職(6,530人)、医療職(4,155人)、税務職(3,744人)は増加している。これらは、引き続く定員抑制措置の一方で、社会的要請が強い教育・医療関係等における業務の拡充、整備に対応するために必要な人材を確保してきたことを示している。

図2-2 職種別人員及び構成比


ウ 職員の最終学歴別人員構成比は、大学卒43.4%(うち大学院修了12.7%)、短大卒17.8%、高校卒37.0%、中学卒1.8%となっている。(資料2-2)

昭和44年以降の推移は、図2-3に示すとおりである。大学卒及び短大卒の占める割合は、それぞれ年々増加しており、平成11年には両者を合わせると61.2%に達している。これに対し、高校卒及び中学卒の割合は減少が進み、特に中学卒の減少が著しい。これは、社会一般の高学歴化傾向の進展に加え、教育・医療関係等の高学歴職種の増員が反映されたことによるものと考えられる。

図2-3 最終学歴別人員構成比の推移


エ 職員の平均年齢は40.7歳となっている。俸給表別では、指定職俸給表、任期付研究員俸給表を別にすれば行政職俸給表(二)の47.8歳が最も高く、以下教育職俸給表(四)の45.7歳、教育職俸給表(一)の45.4歳の順となっている。逆に、最も低いものは、医療職俸給表(三)の37.9歳で、次いで税務職俸給表の38.5歳となっている。(資料2-3)

平均経験年数は19.4年となっている。俸給表別では、指定職俸給表を別にすれば行政職俸給表(二)の27.3年が最も長く、次いで教育職俸給表(四)の22.3年の順となっている。(資料2-3)

平均年齢及び平均経験年数の推移は、図2-4に示すとおりである。昭和60年に定年制が実施され、その後は暫時低下傾向を示していたが、平成6年にその傾向が止まり、平成7年以降は上昇に転じている。

図2-4 平均年齢及び平均経験年数の推移


年齢階層別人員構成比の推移は、図2-5に示すとおりである。10年前の平成元年には、40・41歳の層に山があり、50・51歳の層に落ち込みがある人員構成となっていたが、平成11年においては、各年齢階層ごとに若干の差はあるものの、人員構成はほぼ平均化している。

図2-5 年齢階層別人員構成比の推移


(2) 職員給与の実態

ア 職員の給与は、俸給及び諸手当から構成されているが、このうち俸給、扶養手当及び調整手当は、最も基本的なものである。

平成11年4月1日における職員の平均給与月額は、俸給351,755円、扶養手当12,635円、調整手当20,226円、合計384,616円となっている。

また、行政職の平均給与月額は、 俸給319,461円、 扶養手当12,319円、調整手当19,234円、合計351,014円となっている。(資料2-4)

イ 職員の給与決定上の学歴別、経験年数階層別の人員及び平均俸給額をみると、人員が最も多い階層は、中学卒では35年以上、高校卒は30年以上35年未満、短大卒は15年以上20年未満、大学卒は10年以上15年未満となっている。また、平均俸給額が経験年数1年未満の者の2倍に達するのは、高校卒及び大学卒はいずれも15年以上20年未満、短大卒は20年以上25年未満の階層となっている。(資料2-5)

ウ 扶養手当は、職員の56.5%が受給している。受給者の割合は、図2-6に示すとおりである。

図2-6 扶養手当受給者割合及び平均扶養親族数の推移


過去10年間の推移をみると、総体的に受給者割合及び扶養親族数は減少傾向にある。これは、出生率の低下及び共働き世帯の増加等の影響によるものと考えられる。

平成5年に受給者割合及び扶養親族数が、いずれも上昇に転じているのは、扶養手当の支給対象となる子等の年齢制限を18歳から22歳に引き上げた平成4年の制度改正によるものである。

エ 調整手当の支給地域に在職する職員の割合は、52.3%となっている。支給地域区分別の在職者割合は、甲地のうち、支給割合12%の地域(東京都特別区)が17.0%、同10%の地域(大阪市等)が16.6%、同6%の地域(福岡市等)が3.6%、乙地(広島市等)が15.1%となっている。

3 民間給与の実態調査

人事院は、適正な公務員給与を決定するために必要な民間給与の基礎資料を得ることを目的として、毎年、「職種別民間給与実態調査」を実施し、公務と類似の仕事をしている民間事業所の従業員について、その給与の実態を把握している。

(1) 調査の概要

平成11年の調査の概要は、次のとおりである。

ア 調査の対象事業所は、企業規模100人以上で、かつ、事業所規模50人以上の全国の民間事業所のうち、農林業及び一部のサービス業等を除いた35,776事業所である。

イ 実地調査を行った事業所は、層化系統無作為抽出法に従いながら、事業所を都道府県、政令指定都市、特別区及び熊本市別に、産業、規模等により1,054層に分け、経費、労力等を考慮して定めた抽出率を用いて、給与改定の有無にかかわりなく、無作為に抽出した7,566事業所である。

ウ 調査は、平成11年5月6日から同年6月16日の間において、61の人事委員会と共同により、平成11年4月分として支払われた給与月額等について事業所に赴いて面接調査により実施した。

その結果、調査を完了した事業所は、7,179事業所(調査完了率94.9%)である。(資料2-6)

エ 個人別調査の対象となった実人員は、公務員と類似の職務と考えられる94職種(うち、初任給関係職種19職種)に該当する常勤の従業員数473,871人(うち、初任給関係職種該当者79,602人)であり、調査職種該当者(母集団)の推定数は4,180,715人である。

オ 総計や平均値の算出に際しては、すべて事業所と従業員の抽出率の逆数を乗じて母集団に復元した形で行い、特定の地域、規模、産業に偏った結果が出ることのないように配慮している。

人事院勧告のための作業をする職員


(2) 民間給与の実態

平成11年の主な調査の結果は、次のとおりである。

ア 初任給

新卒事務員・技術者計の初任給は、大学卒は19万円台、短大卒は16万円台、高校卒は15万円台のいずれも前半となっている。その他の職種をみると、おおむね事務・技術関係職種の同一学歴の初任給より高くなっており、特に準新卒看護婦(士)(養成所卒)の初任給は大学卒を上回る20万円台となっている。(資料2-7)

イ 職種別給与

職種別の平均給与月額を事務及び技術関係職種についてみると、係長以下の職種については、平均年齢の違いや技術者の初任給月額が高いことを反映して技術関係職種の方が若干高くなっているものの、課長代理以上の職種については、事務関係職種の方が高くなっている。これは、事務関係職種の方が、給与水準が高い業種や大都市の大規模事業所の従業員をより多く含んでいることから、業種間、地域間、規模間の給与格差が反映されていることなどによるものと考えられる。(資料2-8)

ウ 給与改定、雇用調整等の状況

給与の改定状況については、ベースアップ実施(58.0%)、ベースアップの中止(29.9%)、ベースダウン(1.1%)、未定・不明(11.0%)となっている。これを管理職に限ってみると、ベースアップ中止とベースダウンそれにベースアップ実施事業所のうち定期昇給停止、賃金カットを合わせると約4割の事業所で抑制措置がとられており、より厳しい措置が行われている。

また、雇用面では採用の停止・抑制(47.4%)及び部門間の配転(30.9%)等の合理化措置が実施され、前年の同種の調査結果と比べ、各項目とも増加を示す厳しい措置が認められた。このように民間企業においては、人員の縮小、給与の抑制等様々な取組を行っていることが明らかとなったが、約6割の事業所においてベースアップが行われるなど大部分の企業では給与の引上げを行い、従業員の給与水準の維持・改善に努めている状況が認められた。(表2-1)

表2-1 雇用調整等の状況


表2-2 給与改定の状況


エ 人事・給与制度(体系)の改正等の状況

民間企業では、近年、社会経済システムの変化や厳しい経営環境を背景に、給与システムの改革を積極的に進めている。平成11年は、このような人事・給与制度(体系)の改正状況の調査を行った。

何らかの人事・給与制度(体系)の改正を実施した(予定を含む)とする事業所は69.9%にのぼり、そのうち、役職、職能資格制度の見直し(43.4%)、業績評価システムの改善(44.8%)、基本給部分における年功部分の縮小・廃止、職能・成績部分の拡大(42.3%)がいずれも4割を上回っているなど、多くの企業で年功的要素を縮小し、職務や業績の要素を拡大する方向で、様々な制度改正が行われている。(表2-3)

表2-3 人事・給与制度(体系)の改正等の状況


(3) 特別調査の概要

民間における雇用情勢、春闘情勢が例年になく厳しい状況にあること、また、近時、特に地方において規模の小さい事業所の状況を勧告に反映させるべきである等の意見があることを踏まえ、このような事業所の状況についても幅広く把握し、勧告の際の参考とすることが特に重要と考え、企業規模30人以上100人未満の民間事業所における給与の改定状況や雇用調整等の実態等について特別に調査した。

ア 調査は、対象となる全国の民間事業所(本店)について、約12万事業所から3,000事業所を無作為に抽出し、平成11年5月から6月にかけて、実地調査(500事業所)及び通信調査(2,500事業所)により実施した。

その結果、集計した事業所は、972事業所(集計事業所割合32.4%)である。調査によって得られたデータは、事業所の抽出率の逆数を乗じて復元した。(資料2-9)

イ 給与改定及び雇用調整等の状況は、ベースアップの中止(34.0%)、ベースダウン(5.2%)、正社員の解雇(10.2%)と給与の抑制等の厳しい措置を講じている事業所の割合が本調査に比べて高いことが認められたが、約半数(49.9%)の事業所でベースアップが実施されており、厳しい経営環境の中にあっても、極力、従業員の給与水準の維持・改善に努めていることがうかがえた。(表2-4(1)(2))

表2-4(1) 特別調査の給与改定の状況


表2-4(2) 特別調査の雇用調整等の状況


ウ 役職段階の状況等は、役職段階のない事業所が約1割、「係員」という役職段階がある事業所は6割強にとどまっているほか、中途採用した事業所(66.2%)は、新規学卒者を採用した事業所(36.9%)を上回っている。また、給与の決定基準では、賃金表が「ない」事業所(50.6%)が半数を占めているなど、公務員給与の比較対象とするには制約があることも認められた。(表2-4(3)(4)(5))

表2-4(3) 特別調査の役職段階の状況


表2-4(4) 特別調査の採用の状況


表2-4(5) 特別調査の給与の決定基準の状況


4 官民給与の比較の結果

人事院は、前記「国家公務員給与等実態調査」及び「職種別民間給与実態調査」の結果に基づき、平成11年4月における官民の給与額をラスパイレス方式により比較したところ、民間給与が公務員給与を1人当たり1,038円(0.28%)上回っていることが明らかとなった。さらに、全事業所の21.28%に当たる事業所において、支払は終わっていないが4月に遡って定期昇給分を含め平均2.02%の給与の引上げが実施されているが、昇給率を勘案するとその影響は16円と算定されるため、これを加えた官民給与の較差は1,054円(0.28%)であった。

また、特別給については、平成10年5月から11年4月までの1年間において、民間事業所で支払われた賞与等の特別給は、所定内給与月額の4.95月分に相当しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(5.25月)を下回った。

5 平成11年の報告と勧告

人事院は、平成11年8月11日、国会及び内閣に対し、一般職の職員の給与等について報告するとともに、その給与の改定について勧告を行った。

厳しい経済・雇用情勢の下、人事院は、3のとおり、民間給与の的確な把握をはじめ、民間企業における給与抑制措置や雇用調整等の実施状況、さらに規模の小さい企業の実態についても幅広く調査を行うとともに、東京のほか全国26都市で有識者や中小企業の経営者を含めた各界、国民各層との意見交換を行ったほか、同年より新たに募集した「国家公務員に関するモニター」(500人)を通じて、広く国民各層の意見の聴取に努めた。

その上で、厳しい経済・雇用情勢等をどのように受け止めるべきか、各調査結果をどのように評価し、どのような措置を行っていくのが適当なのか、様々な角度から真剣かつ慎重な検討を重ねた。

その結果、月例給については、一般の職員については、官民較差に相当する改善が必要であるが、本省局長等の指定職俸給表の適用を受ける職員及び本省庁課長級職員については改定を見送ることが適当であると判断するに至った。また、特別給については、「職種別民間給与実態調査」の結果に基づき、民間の特別給の支給月数に見合うよう、引き下げる必要があると判断した。

(このような結論を得るに至った人事院の基本的考え方は、第1部第1章VI2を参照)

(1) 給与の改定の内容

平成11年の給与勧告の概要は、次のとおりである。

ア 俸給表の改定

行政職の職員の給与については、官民給与の較差に見合う引上げを俸給月額の改定により行うが、本省庁課長級の職員が格付けられている行政職俸給表(一)10級及び11級については、俸給月額の改定を見送ることとし、9級(本省庁準課長級)については抑制的な改定とする。また、俸給月額の改定を行う職務の級にあっても「早期立ち上がり型」給与カーブへの修正を推進する観点から、一層傾斜的な配分を行うこととし、中堅層職員の改善に重点を置いた改定とする。各俸給表についても、行政職との均衡を基本に改定し、上位の級について改定の見送り又は抑制を行う。

【行政職俸給表(一)の初任給】


指定職俸給表については、民間企業の役員給与との間に差が認められるものの、本年における特別の事情も勘案して、その俸給月額を据え置く。

イ 福祉職俸給表の新設

高齢社会の到来を踏まえ、福祉関係職員の人材確保、処遇改善の観点から、国の身体障害者更生援護施設、児童福祉施設等に勤務する生活指導員、保育士など、社会福祉に関する専門的な知識、技術をもって、自己の判断に基づき独立して、必要な援護、育成、更生のための指導、保育、介護等の対人サービス業務に従事している職員を対象として、その職務の専門性にふさわしい処遇が図られるよう福祉職俸給表を新設する。

福祉関係職員の処遇の確立に向けて -福祉職俸給表の新設-

新設された福祉職俸給表の概要

  • (1) 適用範囲

    • 国立身体障害者リハビリテーションセンター、国立光明寮、国立保養所、国立児童自立支援施設、国立知的障害児施設及び国立療養所等において、入所者の指導、訓練、保育、介護など社会福祉の専門的な対人サービスを行う生活指導員、職業指導員、心理判定員、職能判定員、児童指導員、児童自立支援専門員、児童生活支援員、保育士及び介護員約1,000人に適用されています。

      《具体的職務内容の例》

      • 国立療養所の児童指導員

        •  心身の障害のある児童に対する
          1) 身体面、情緒面等の発達状況の把握、家族関係等の情報収集。
          2) 年齢、性別、生活歴及び心身の健康状態を考慮した個別的な指導方針の決定及び指導計画の作成。
          3) 個別指導、集団指導及びグループ指導。 など

        国立療養所の保育士

        •  心身の障害のある児童に対する
          1) 身体面、情緒面等の発達状況の把握、家族関係等の情報収集。
          2) 療育方針の決定及び年間行事計画の作成。
          3) 基本的生活習慣の集団及び個別指導。 など

        国立保養所の介護員

        •  身体の障害のある者に対する
          1) 入浴、排泄、食事、衣類脱着の介助等の身辺介護。
          2) 居室の環境整備、衣類管理等の生活介護。
          3) 入所者及びその家族に対する介護方法の指導や自立、介護意欲に対する指導援助。
          など



    (2) 級構成・給与水準

    •  福祉関係職員は、簡素な職制により対人サービス業務を行っており、これにふさわしく6級構成の構造としています。
      また、福祉職俸給表新設前に適用されていた行政職俸給表(一)の水準を基本としつつ、採用当初から専門的な職務に従事する福祉関係職員にふさわしく、初任給を一定程度高めの水準とし、以降緩やかな給与カーブとしています。

○初任給の例


ウ 期末・勤勉手当等の支給月数の引下げ

民間の賞与等の特別給の支給割合との均衡を図るため、期末手当の支給月数を0.3月分引下げる。平成11年度の6月期の期末・勤勉手当は既に支給済みのため、12月期及び3月期で引下げを行うこととし、平成12年度以降については、民間の期別の支給状況等を踏まえて、各支給期の支給月数を定める。また、本省局長等の指定職俸給表適用職員に支給される期末特別手当についても、期末手当と同様に、0.3月分支給月数を引き下げる。

期末・勤勉手当等の支給月数の引き下げ


公務員のボーナス


エ 育児休業者に対する期末・勤勉手当等の支給

民間における支給状況等を考慮し、より円滑な育児休業の取得にも資するよう、期末・勤勉手当等の基準日に育児休業中の職員のうち、算定期間に勤務実績がある職員に対し、在職期間等に応じて期末手当、勤勉手当及び期末特別手当を支給する。

オ その他

宿日直手当について所要の改善を行う。

宿日直手当の改善


なお、民間賃金等の特に高い地域に支給される調整手当については、社会経済情勢の変化を踏まえた地域別の給与配分の一層の適正化を図るため、引き続き検討を進め、支給地域及び支給区分等の見直しについて成案を得ることとしている。

(2) 今後の給与制度改正の方向

近年、民間企業の賃金体系は、年功的要素を縮小し、職務や業績の要素を拡大する方向で様々な制度改正が図られてきている。人事院では、このような民間企業の賃金体系改革の動きや今後の公務員人事管理の弾力化等の進展等を踏まえながら、職員の職務を基本に、個人の能力・実績に応じた給与体系への転換が図られるよう、検討を進めている。

【「国家公務員に関するモニター」の結果】


このうち、基本的な給与を定める俸給表については、給与カーブの「早期立ち上がり型」への修正などを行ってきているところであるが、在職期間の長期化や職員構成の中高年齢化等が進むと予測される中で、今後、一層、職務に応じ能力や実績を反映した給与としていくことが必要となっている。また、グローバル化や情報化、社会経済システムの複雑化・高度化等が進む中で、職務も複雑化・高度化しており、また、平成13年には中央省庁の再編が実施される予定であり、これらに伴い、専門的なスタッフ職等を活用したより柔軟かつ多様な給与処遇を図っていく必要も生じてきている。

このような状況を踏まえ、職務内容の複雑化・専門化や在職期間の長期化など公務部内における状況の変化に適切に対応できるよう、現行の俸給体系の在り方について基本的な見直しを行う必要がある。

具体的には、

などの方向を念頭に置いて、広く関係者等の意見を聴取しつつ検討を進めることとしている。

6 給与勧告の取扱い

平成11年の給与勧告について、政府は、給与関係閣僚会議を2回開催(8月13日及び9月21日)し、その取扱いを協議した。その結果、9月21日、第2回の同会議及び引き続き開かれた閣議において、内容、実施時期とも勧告どおり実施することを決定し、政府において給与法等の改正法案を国会に提出するため、所要の準備を早急に進めることとなった。なお、閣議決定に先立つ8月24日、衆議院内閣委員会において、人事院勧告の趣旨説明及び審査(閉会中)が行われた。

公務員の給与改定に関する取扱いについて

(平成11年9月21日 閣議決定)

1 一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員の給与については、去る8月11日の人事院勧告どおり改定を行うものとする。

なお、この給与改定を行うに当たっては、公務能率及び行政サービスの一層の向上を図るとともに、官庁綱紀の厳正な保持、公正な公務運営の確保に努めるものとする。

2 特別職の国家公務員については、おおむね1の趣旨に沿って、その給与の改定を行うものとする。

3 1及び2の給与改定については新たな追加財政負担は要しないが、我が国の財政事情がますます深刻化していることを考慮すれば、行財政改革を引き続き積極的に推進し、総人件費を極力抑制するとの基本方針は堅持する必要がある。

そのため、行政事務・事業の整理、民間委託、人事管理の適正化等行政の合理化、能率化を積極的に推進する等の措置を講ずるとともに、定員については、「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画」(平成11年4月27日閣議決定)を踏まえ、各省庁とも、一層の新規増員の抑制及び定員削減の実施を図ることとし、引き続き国家公務員数の一層の純減を行う。さらに、公庫、公団等についても厳しい定員削減を実施する。また、地方公共団体に定員の増加を来し、人件費の累増をもたらすような施策を厳に抑制する。

4 公庫、公団等の役職員の給与については、次によるものとする。

  • (1) 役員の給与については、国家公務員の指定職の俸給が据え置かれること等を踏まえ、国家公務員の例に準じて措置することとする。
    (2) 職員の給与については、国家公務員の本省庁課長級の職員の俸給が据え置かれること等を踏まえ、国家公務員の例に準じて措置されるよう対処する。
    また、給与改定を行うに当たっては、事務・事業の合理化、能率化を積極的に進めるものとする。

5 地方公共団体において地方公務員の給与改定を行うに当たっては、現下の極めて厳しい財政状況及び各地方公共団体の給与事情等を十分検討の上、国と同様、行政の合理化、能率化を図るとともに、既に国家公務員又は民間の給与水準を上回っている地方公共団体にあっては、引き続きその適正化を図るため必要な措置を講ずるよう要請するものとする。

人事院総裁談話

平成11年9月21日 人事院総裁 中島 忠能

本日の閣議において、先に人事院が行った勧告どおり、公務員の給与を改定することが決定されました。

極めて厳しい諸情勢の中にあって、職員の給与を情勢適応の原則に従い適切に決定することは、公務員の給与について国民の理解を得るとともに、能率的な行政運営を確保する上で、必要なものと確信します。

関係各位におかれましては、引き続き速やかな改定の実現に向けてご尽力を賜りたいと存じます。

公務員各人においては、現下の社会経済情勢の下、国民の公務に寄せる要請が一段と厳しさを加えていることに思いを致し、全体の奉仕者としての使命感、倫理観を確認しつつ、一層職務に精励されるよう、改めて強く求めます。

人事院としても、公務員が高い使命感と誇りをもって職務を全うし、また、より一層簡素で効率的な国民本位の行政運営の実現に資するため、時代の要請にこたえ得る柔軟で開かれた人事システムの構築に取り組んでいきたいと考えております。


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