前(節)へ 次(節)へ

第1編 ≪人事行政≫

第2部 ≪平成11年度業務状況≫

第5章 研 修

第1節 研修の実施


人事院は、国公法及び同法に基づく規則10-3の定めるところにより、各省庁が実施する研修に関し、総合的な企画、調整等に当たるとともに、自ら実施することが適当と認められる研修についてはこれを計画し、実施することとしている。このため、人事院は、研修に関し広く必要な調査研究を行い、これらの結果を踏まえつつ、随時、研修担当官会議、研修所長等会議を開催するなどにより、研修の指導、調整に当たるほか、中央及び地方において、全省庁の職員を対象とした行政研修、本省庁職員研修、地方機関職員研修その他各種の研修を実施している。(図5-1)

図5-1 人事院研修の体系

1 研修の概要

平成10年度において人事院及び各省庁が実施した研修は、合計で、研修コース数17,374コース、研修人員464,621人となっている。また、研修時間20時間以上の研修は、研修コース数6,875コース、研修人員181,657人となっている(このうち、人事院が各省庁の職員を対象として実施した研修は、研修コース数130コース、研修人員5,336人となっている。)。

2 行政エグゼクティブ・フォーラム

人事院は、平成11年度、初めての試みとして、本省庁の局長、審議官及び管区機関の局部長を対象とした行政エグゼクティブ・フォーラムを実施した。

このフォーラムは、幹部職員が各界の有識者を交えてこれからの行政の在り方や公務員の役割について、基本に立ち返って考える機会を提供することを目的とし、東京をはじめ全国の9都市で延べ11回実施し、180人の幹部職員が参加した。

本省庁の局長、管区機関の局部長を対象としたフォーラムは、各界の有識者の講話と講師を交えた意見交換、本省庁の審議官を対象としたフォーラムはこれに加えて政治家を囲んでの意見交換、参加者相互の間での意見交換を実施した。

行政エグゼクティブ・フォーラムの実施状況は表5-1のとおりである。

行政エグゼクティブ・フォーラム

表5-1 行政エグゼクティブ・フォーラムの実施状況

3 行政研修

人事院は、各省庁の行政運営の中核となる各階層の職員を対象として、政策の企画・立案能力、管理的能力、社会的識見の向上を図ることを目的とした合宿を含む合同研修(行政研修)を実施している。

この研修では、我が国が直面する各種の重要な政策課題について対応策を研究する「政策課題研究」と研修員の所属省庁が抱えている個別の行政課題について問題点や解決策などを討議する「個別政策研究」が大きな柱となっている。あわせて、各種演習における討議や合宿生活を通じて研修員相互の理解を促進し、国民全体の奉仕者たる政府職員としての一体感を培うことをねらいとしている。

行政研修は、採用時の合同初任研修、初任行政研修をはじめ、本省庁の係長級、課長補佐級、課長級の各職員に対する研修など階層ごとに体系的に実施している。平成11年度からは、II種・III種等採用職員の幹部職員への登用施策の一環として、新たに行政研修(係長級特別課程)を実施した。(資料5-15-2)

(1) 国家公務員合同初任研修

I種試験(これに相当するものを含む。)に合格して採用された直後の職員を対象に、総務庁と共催で実施している。

平成11年度は、我が国の各界を代表する講師による「21世紀にこの国の行政を担っていく皆様に」、「若き公務員に期待する」、「国際化時代の日本」、「科学技術の動向」と題した講演のほか、局長・審議官級の幹部による各省庁横断的な行政課題についての講義、公務員の服務についての講義・事例研究、人事管理官及び先輩職員を囲んでの班別座談会を中心として実施した。

合同初任研修開講式

(2) 初任行政研修

将来、本省庁において政策の企画・調整の衝に当たることが見込まれる各省庁のI種試験採用者を対象として平成9年度から実施している。

平成11年度は、439人を対象に、各9週間の日程で4コースに分けて実施した。

初任行政研修は、研修員が行政の役割や公務員としての在り方を主体的に考え、各省庁の枠を超えた全政府的な立場から、社会の変革や新しいシステムの創造に取り組むための知識と素養を身につけることをねらいとし、「公務員倫理」に関する講義、演習のほか、地球環境、経済構造改革などの「行政課題研究」、5、6人が一組となり研修員が自主的に共同で設定した課題についてグループ討議しつつ研究論文をまとめる「共同研究」、水俣病、消費税導入、成田空港建設、長良川河口堰建設といった社会的、歴史的意味の大きい行政事例を題材として、政策決定の視点を多面的に考察する「行政政策史」演習等を行った。このほか、地方行政に携わる職員や地域住民との意見交換を通じて、地域の多様性、生活実態、住民の意識やニーズ等について認識を深める「地方自治体実地研究」、高齢者・障害者等の福祉施設での体験を通じて地域社会のあるべき姿や時代の変化に伴う国民のニーズと行政の関わり方等について認識を深める「ボランティア体験研修」など、体験型のカリキュラムも取り入れて、多様な構成としている。

カリキュラムの概要は表5-2のとおりである。

表5-2 平成11年度初任行政研修の内容

(3) 行政研修(係長級)

本省庁の係長級(これに相当する職を含む。)で勤務成績の優秀な職員を対象に実施している。

平成11年度は、経済のグローバル化をテーマに浜松市での実地研究も取り入れた「政策課題研究」のほか、各省庁行政についての「個別政策研究」、東ティモール等のケーススタディによる冷戦後の国際紛争への対応について研究する「国際関係演習」を中心に実施した。

(4) 行政研修(係長級特別課程)

平成11年度から、II種又はIII種試験等により採用された本省庁の係長級(これに相当する職を含む。)の職員で、各省庁が将来の幹部職員として計画的に育成しようとしている者を対象に、登用の推進策の一環として、行政研修(係長級特別課程)を実施した。11日間の日程で2回実施し、計96人が参加した。

カリキュラムは、今後の行政の在り方、情報公開、地方分権などについての「政策課題研究」、各省庁行政についての「個別政策研究」のほか、福祉の現場や地域に密着した行政の研究を通じ、多様化・複雑化する国民の価値観や行政ニーズへの認識を深めるとともに、国の施策が地方自治体を通じて国民生活等に及ぼす影響等の理解を深める「地方実地調査」、公務員倫理、国際情勢など幹部公務員に必要とされる基本的知識に関する講義等を行った。

「地方実地調査」は、いわき市における高齢者福祉、中心市街地活性化、環境保全・廃棄物処理(第1回)、また、津市における情報公開、高齢者福祉、中心市街地活性化(第2回)について実施した。

なお、各省庁における研修受講者の今後の計画的育成に資するよう、各省庁横断的な視点から研修受講者の能力・適性に関する評価を行った。

(5) 行政研修(課長補佐級)

平成11年度は、男女共同参画社会への課題、情報化社会と行政など各省庁が共通して抱える今日的な課題をテーマとした「政策課題研究」、各省庁行政についての「個別政策研究」のほか、公務員倫理演習、各新聞社の論説委員等による政治と行政の講義と質疑応答などをカリキュラムとするコースを7回と、II種・III種等採用職員を対象とするマネジメントコースを1回実施した。

様々な分野との交流を通じ幅広い視野を身につけ相互の理解を深める観点から、民間企業、地方公共団体のほか外国政府からも参加を得ている。

政策課題研究のテーマは表5-3のとおりである。

表5-3 平成11年度行政研修(課長補佐級)の政策課題研究テーマ

(6) 行政研修(研究職室長級)

各省庁の試験研究機関等に勤務する研究職の室長級職員を対象に、平成11年度は、研究の活性化をテーマとした「政策課題研究」や研究開発システム、組織マネジメント及び研究評価の在り方をテーマとした研究開発論、各試験研究機関の個別課題についての「個別研究」のほか、先端技術の研究者の講義や関西文化学術研究都市における先進的な研究組織・研究活動の見学などを含めて実施した。

(7) 行政研修(課長級)

従来、本省庁の課長級職員を対象として実施していた管理者研究会について、各階層ごとに実施する一貫した体系をもつ行政研修としての位置付けを明確にするため、平成11年度からは、名称を行政研修(課長級)と変更して実施した。

平成11年度は、日米関係、日本経済などに関するテーマによる「政策課題研究」、各省庁の行政政策についての「政策評価研究」のほか、企業経営者を講師とした経営戦略などを含めて、5回実施した。

政策課題研究のテーマは表5-4のとおりである。

表5-4 平成11年度行政研修(課長級)の政策課題研究テーマ

(8) 行政フォーラム

行政フォーラムは、長期間の研修の参加が困難な本省庁の課長級の職員に研修機会を提供する場として、霞が関近辺を会場とし、講義と質疑応答を合わせて3時間という参加の容易な形式で実施している。

平成11年度は、「21世紀日本の課題と展望」をメインテーマに、政治・経済、科学技術などの各分野から講師を招いて、4回実施した。

4 本省庁職員研修及び地方機関職員研修

人事院は、本省庁に勤務する係長級と課長補佐級の職員を対象に、本省庁職員研修を実施している。また、地方機関に勤務する職員を対象に、新採用職員研修、中堅係員研修、係長研修、課長補佐研修、課長研修の階層ごとの地方機関職員研修を体系的に実施している。(資料5-3)

平成11年度の実施状況は、表5-5のとおりである。

表5-5 平成11年度本省庁・地方機関職員研修等実施状況

(1) 本省庁職員研修

II種又はIII種試験(これらに相当するものを含む。)によって採用され本省庁に勤務している職員を対象とし、将来の本省庁の中堅幹部としてふさわしい知識、能力を修得させるとともに、国民全体の奉仕者たる政府職員としての意識のかん養を図ることを目的として、階層別に実施している。

ア 係長研修

「政策課題研究」、「個別政策研究」を中心として年2回実施しており、平成11年度は、政策課題として「国際社会における日本の役割」(第1回)と「少子・高齢社会の到来に向けて」(第2回)を取り上げ、多角的、大局的、長期的な視点から課題を考えることを中心に実施した。

イ 課長補佐研修

平成11年度は、事例研究による問題解決能力や交渉スキルなど、管理監督者としてのマネジメント能力の向上を図ることをねらいとしたカリキュラムを中心に実施した。

(2) 地方機関職員研修

地方機関の実情を踏まえつつ、各階層ごとに求められる能力、識見等を付与し、あわせて政府職員としての一体感を培うことを目的として階層別に実施している。

その研修内容については、各階層のほとんどの研修において、公務員倫理に関する科目を取り入れているほか、事例研究や課題研究を取り入れるなど、具体的に理解や識見を深めさせるものとしている。

ア 管理監督者研修

課長補佐、課長を対象とした研修では、変化が激しい時代における管理監督者の役割に関する科目を取り入れるなど、新たな行政需要に的確に対応し得る地方機関の幹部の養成に努めている。

また、公務外の人材との相互理解を深めるために民間企業や地方公共団体の職員の参加も得ている。

イ 接遇研修・語学研修等

各省庁の庶務的業務又は窓口業務に従事している職員を対象とした接遇研修や外国人と交流する機会のある部署の職員を対象とした語学研修など、特定の業務に対応した研修を実施している。

ウ テーマ別研修

特定の問題を取り上げて研究、体験するテーマ別研修も実施しており、平成11年度は、障害者応接、ボランティア、研修講師の話し方技法等について、講義形式のほか、体験研修、討議方式により、12回行った。

5 派遣研修

人事院は、我が国における行政運営の国際化に的確に対応し得る人材の育成策として、各省庁の行政官を国外の大学院、政府機関等に派遣する「行政官長期・短期在外研究員制度」を、また、複雑かつ高度化する行政に対応する専門的な知識、技能を修得させるため、各省庁の行政官を国内の大学院に派遣する「行政官国内研究員制度(大学院コース)」、同じく司法研修所に派遣する「同(司法修習コース)」を実施している。

このほか、職員を民間企業に派遣して、民間企業の効率的な業務運営の手法を体験、習得させる民間派遣研修の制度を運営している。

(1) 在外研究員制度
ア 行政官長期在外研究員制度

この制度は、複雑・多様化する国際活動に的確に対応するとともに国際的視野を持って行政運営に当たり得る行政官の育成を図ることを目的に、各省庁の行政官を2年間諸外国の大学院等に派遣し、国際化する行政に必要な各分野の研究に従事させるものである。

派遣される研究員は、在職期間が6年未満の行政官で、各省庁の長が推薦する者のうちから、人事院の選抜審査及び大学院等の選考を経て決定している。

昭和41年度に発足して以来、平成11年度までに派遣した研究員の総数は、1,311人で、派遣先国別の内訳は、米国919人、英国194人、フランス112人、ドイツ46人、カナダ28人及びオーストラリア12人となっている。

派遣人員は、このところ毎年着実に増加しており、図5-2のとおり、平成11年度には過去最高の86人を派遣した。

平成11年度の国別の派遣先内訳は、表5-6のとおりである。

この制度の修了者は、帰国後、その多くが再び海外の第一線で活躍するとともに(第1回から第25回までの758人のうち、延べ520人が海外勤務を経験している。)、国内にあっても、国際的視野に立った行政施策の企画・調整の衝に当たるなど、我が国行政の国際的な活動において、大きな役割を担っている。

図5-2 行政官長期在外研究員派遣者数推移

表5-6 平成11年度行政官長期在外研究員派遣状況

イ 行政官短期在外研究員制度

この制度は、諸外国の専門的な知識、技能等を習得させることにより、増大しつつある国際的業務に適切かつ迅速に対処し得る人材の育成を図ることを目的に各省庁の中堅行政官を約6か月間又は1年間諸外国の政府機関等に派遣するものである。

派遣される研究員は、在職期間がおおむね6年以上で、かつ、職務の級が行政職俸給表(一)の4級から8級まで(他の俸給表のこれに相当する級)の行政官で、各省庁の長が推薦する者のうちから、人事院が選抜審査を行って決定している。研究員は、諸外国の政府機関、国際機関等に派遣され、それぞれの課題について調査研究活動に従事する。

昭和49年度に発足して以来、平成11年度までに派遣した研究員の総数は、887人(衆議院事務局及び参議院事務局からの特別参加12人を含む。)で、派遣先国別の内訳は、米国436人、英国179人、オーストラリア55人、ドイツ44人、カナダ44人、フランス43人、その他86人となっている。(資料5-4)

平成11年度の国別の派遣先内訳は、表5-7のとおりである。

研究員が帰国後に人事院に提出する研究報告書は、海外の制度、実情に関する最新の情報であり、関連する行政分野における貴重な資料として、各省庁の行政に反映されている。

表5-7 平成11年度行政官短期在外研究員派遣状況

(2) 国内研究員制度
ア 行政官国内研究員制度(大学院コース)

この制度は、高度の専門知識、技能を持った行政官を育成し、行政の複雑・高度化、国際化に対処することを目的に、各省庁の職員を2年間国内の大学院の修士課程に派遣し研究に従事させるものである。

派遣される研究員は、在職期間が2年以上おおむね16年未満で、かつ、職務の級が行政職俸給表(一)の2級から8級まで(他の俸給表のこれに相当する級)の行政官で、各省庁の長が推薦する者のうちから、人事院の選抜審査及び大学院の入学試験を経て決定される。

平成11年度には、表5-8のとおり、17人の研究員を派遣した。

これまでの派遣者総数は、筑波大学大学院98人(昭和51年度から)、埼玉大学大学院97人(昭和52年度から)、横浜国立大学大学院30人(平成2年度から)、東京大学大学院43人(平成4年度から)、京都大学大学院12人(平成6年度から)となっている。

表5-8 平成11年度行政官国内研究員(大学院コース)派遣状況

イ 行政官国内研究員制度(司法修習コース)

行政が複雑・多様化するに伴い、政策立案の面において、高度の法律知識を有する職員が必要となっている。また、国際化の進展に伴って、国際交渉等の場においても法律知識を有し法律実務に精通した者を交渉当事者とする必要性が高まりつつある。

この制度は、各省庁の行政官のうち、司法試験に合格している者を司法研修所に派遣して、法律に関する理論と実務の研究に従事させることにより、複雑かつ高度化する行政に対応し得る専門的な法律的知識等を修得させることを目的としている。

平成11年度の新たな派遣はなかったが、昭和63年度に発足して以来、平成11年度までに派遣した研究員の総数は19人となっている。

(3) 民間派遣研修制度

平成11年度においては、地方機関からの派遣も含めて、6省庁から62人の行政官が民間企業に派遣され、業務を体験する方法により研修が実施された。

6 指導者養成研修等

人事院は、各省庁が行う研修のより効果的な実施に資するべく、各種の定型討議方式の研修の指導に当たる者のために人事院式監督者研修(JST)基本コース指導者養成研修、人事院式ミドルエイジ職員プログラム(JAMP)指導者養成研修などの研修を、研修担当者のために研修企画担当官研修、教官研究会などの研修を実施している。指導者養成研修等は、昭和27年以来、合わせて1,191回実施し、修了者総数は22,869人となっている。(資料5―5)

平成11年度の実施状況は、表5-9のとおりである。

なお、近年、公務員の倫理観の高揚が強く求められていることから、公務員倫理研修(KET)の指導者養成のための研修に特に力を入れて実施した。

各指導者養成研修等の目的は、次のとおりである。

このほかに、研修企画担当官研修及び教官研究会の修了者に対し、研修関係情報の提供・交換など相互の啓発と研修全般に関する知識や技能の向上を図るため、研修担当者研究会を2回実施した。

なお、JSTやJAMPなど各種の定型討議方式の研修は、各省庁、地方公共団体等においても実施されており、人事院は、これらの実施に当たって必要な指導、援助を行っている。

表5-9 平成11年度指導者養成研修等実施状況

7 各省庁が実施した研修

各省庁は、その所属職員を対象とした研修を実施するとともに、全省庁の職員を対象とした所管の行政分野についての専門研修、委託研修(実施を各種学校等に委託して行う研修)を実施している。

人事院は、各省庁が行う研修に関する調整、指導を行うため、研修の実施状況について報告を求めているが、その報告からは次のような特徴が見受けられる。

なお、規則9-8の定めるところにより、あらかじめ人事院が承認した研修に参加しその成績が特に良好であった者については特別昇給させることができることとされているが、平成11年度においてこの制度により人事院が承認した研修コース数は、31コースであった。


前(節)へ 次(節)へ
© National Personnel Authority