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第1編 ≪人事行政≫

第2部 ≪平成11年度業務状況≫

第8章 職員の災害補償

第3節 災害補償制度の運営


1 精神疾患等の公務上災害の認定指針の発出

近年、公務においては、職員が仕事上の悩み等からうつ病等の精神疾患に罹患し自殺等の自損行為に及んだのではないかと疑われる事案が増えてきている。また、民間企業においても同様な傾向があり、これらの問題は社会的にも注目を集めているところである。

自殺事案については、原則として公務上の災害とは認められないが、それが公務上の災害に当たる場合もあることから、人事院では公務における自殺事案の発生状況等を踏まえ、遺族等に対する適正・迅速な補償の実施を促進するため、精神科医等で構成する「精神疾患等の公務災害認定基準検討専門家会議」を設置し、精神疾患等の公務上災害の認定指針について専門家の意見を聴きつつ検討を行い、平成11年7月16日に「精神疾患等の公務上災害の認定指針(職員局長通知)」として発出した。

(1) 指針の概要等ア 例示疾患

業務によって発症する可能性のある精神疾患等について、(ICD-10による疾患名)うつ病エピソード、急性ストレス反応等、(従来診断による疾患名)うつ病、反応性うつ病等を例示疾患として掲げている。

なお、例示疾患以外の精神疾患等であっても、公務上の災害と認められる場合があることを定めている。

イ 業務に関連した過重な負荷

例示疾患を公務上の災害と認定するためには、当該疾患の発症前に、業務上の諸事象が重積した結果、医学上、当該疾患を発症するに足る強度の精神的又は肉体的負荷を受けていたことが必要であることを定めている。

また、業務上の諸事象を、1)通常の日常の業務に比較して特に質的に又は量的に過重な業務に従事したこと、2)一定期間緊張を強いられる折衝等の業務に従事したこと、3)業務に関連してその発生状態を明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと等、項目ごとに分類している。

さらに、項目ごとに分類した業務上の諸事象をそれぞれ次のようにより具体的に例示している。

1)では、(a)制度の創設・改廃、大型プロジェクトの企画・運営等特に困難な業務を行った場合、(b)行政上の必要により期間の限られた業務を集中的に処理するなどのため、正規の勤務時間を超えて週数十時間にまで及ぶ過重な超過勤務等を4週間以上にもわたって行った場合、(c)配置換、昇任等に伴って不慣れな業務が質的、量的に重なった場合などを示し、

2)では、(a)極めて重要な対外折衝等を責任者として行った場合、(b)対人関係で予想を超えた軋轢を生じあるいはいわゆる板挟み状態となりながら折衝等の業務を行った場合などを示し、

3)の異常な出来事として、洪水、大地震、土砂崩れ、火災、爆発、重大な交通事故、航海中の行方不明、不祥事などを掲げ、業務に関連しての異常な出来事への遭遇の態様として、(a)調査作業等の職務遂行中自らが異常な出来事に巻き込まれた場合、(b)異常な出来事の発生下において救助作業などの緊急業務に従事した場合、(c)異常な出来事の発生を契機とした緊張を強いられる事態の後始末、事後対応などの収拾業務に集中的に従事した場合などを示した。

最後に4)として、この他、業務に関連して1)から3)までと同程度の精神的又は肉体的負荷を受けていたと認められるものを掲げている。

(2) 自殺等の自損行為

自殺等の自損行為による死亡等は、基本的には故意によるものである以上、原則として公務上の災害とは認められないが、それが例示疾患に起因すると認められるときには、公務上の災害と認められる場合があることを定めている。

さらに自殺等の自損行為による死亡等を公務上の災害と認定するためには、例示疾患の発症前に、(1)(イ)に掲げた業務に関連した過重な負荷を受けていたことが必要であることを定めている。

(3) 調査事項

精神疾患等に係る事案の認定に当たり、判断の基礎となる調査事項(災害の発生状況、業務従事状況、医師の所見、健康状況、私生活上の心配事等)を掲げ、これらの各事項を迅速かつ適正に調査すべきことを定め、また、調査に当たってはプライバシーに配慮することなどを定めている。

(4) 認定手続等

精神疾患等の発症には複雑、多岐にわたる要因が考えられることから、精神疾患等の個別事案の認定に当たっては、(3)の調査結果を基礎とし、医学経験則に照らして、総合的に判断する必要があるが、各省庁が個別事案の認定を行う場合には、取扱いの統一を図るため、人事院職員局に協議すべきことを定めている。

2 制度の運営の指導・調整

災害補償制度の適正な運営を図るため、平成11年度においては、各実施機関の補償事務担当者を対象に災害補償担当官会議、災害補償業務研究会(3日間)、本省庁災害補償実務担当者研修会(3日間)及び地方機関等災害補償実務担当者研修会(全国5地区各1日)を開催した。在宅で介護を要する重度被災職員の介護支援施策を推進し、介護支援事業の周知を図るため、本省庁及び全国4地区の補償事務担当者を対象に「在宅介護支援事業に関する連絡会議」(各1日)を開催した。

また、各省庁で発生した公務災害・通勤災害の認定、障害等級の決定等について、個別に協議や相談に応じるなどして、各実施機関に対する指導・調整に努めた。なお、これらの事務処理に当たっては、必要に応じ、内科学、整形外科学等の各分野別に委嘱している健康専門委員の意見を求めた。

3 年金たる補償に係る承認

各実施機関が、年金たる補償及び年金たる特別給付金の支給決定を行う場合には、あらかじめ人事院の承認を得ることとされているが、平成11年度におけるこれらの承認件数を補償等の種類別にみると次のとおりである。

表8 年金たる補償等の支給に係る承認件数


4 災害補償実施状況の監査

災害補償制度の迅速かつ公正な運営を図るため、平成11年度においては、本省庁、地方機関等22機関について災害補償の実施状況を監査し、その運用に誤りが認められたものについては、是正するよう指導・助言を行った。

5 民間企業の法定外給付調査

福祉事業に関する施策の基礎資料とするために、労働者災害補償保険法による給付以外に個々の企業が独自の給付を行ういわゆる法定外給付制度に関し、全国の企業のうち約4,500社を対象として平成11年10月1日現在の状況を調査した。

この調査は、毎年行っているが、平成10年10月1日現在の調査結果によると、業務災害に対しては68.3%、通勤災害に対しては61.6%の企業が法定外給付を行っている。


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