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第1編 ≪人事行政≫

第2部 ≪平成11年度業務状況≫

第10章 公平審査

第3節 災害補償の実施に関する審査の申立て及び福祉事業の運営に関する措置の申立て


災害補償の審査制度は、実施機関の行った公務上の災害又は通勤による災害の認定、障害等級の決定、治癒の認定その他補償の実施について不服のある職員等から審査の申立てがあった場合に、また、福祉事業の審査制度は、福祉事業の運営について不服のある者から措置の申立てがあった場合に、それぞれ人事院が事案を災害補償審査委員会の審理に付した上で判定を行うものである。

災害補償等の審査は、規則13-3に定められた手続に従って行われている。

平成11年度は、新たに受け付けた25件と前年度から繰り越した10件の計35件が係属したが、その処理状況は、判定を行ったもの11件であり、平成12年度に繰り越したもの24件である。判定の内訳は、申立人の申立てが認められたもの2件、一部認められたもの1件、認められなかったもの8件となっている。(資料10-3)

福祉事業の運営に関する措置の申立てについては、昭和51年度に本制度が実施されて以来、平成11年度までその例がない。

平成11年度に行った判定の要旨は、次のとおりである。(( )内の数字は、判定年月日である。)(表10-3)

表10-3 平成11年度災害補償審査申立事案判定一覧


1 申立てが認められたもの
(1) 指令13-21(脳挫傷等に係る障害等級の決定)(11.6.25)

元郵便局職員からの、通勤による災害と認定された脳挫傷等の治癒時に残存する障害は第12級と決定されたが、より上位の等級に決定されるべきであるとの申立てについて、脳に明らかな挫滅創を残し、抗てんかん薬を継続して投与されていることから、かなりの精神機能障害を残していると認められ、申立人は、話の内容が理解できなくなるなどとしていること、主治医は、申立人の労働能力を「軽度の単純労働」として、一般事務の仕事は難しく、他の人と組んで強くサポートしてもらわないと仕事はできないとしていること、電話の応対はできないこと、退職に係る書類の作成を主として同人の妻が代わってしていること等を総合すると、その労務遂行能力は、「軽易な労務以外の労務に服することができないもの」とみるのが相当であることから、神経系統の機能又は精神の障害は第7級第4号に該当し、顔面露出部にある5cmと8cmの線状痕(手術痕)が認められることから、醜状障害は第12級第13号に該当しているので、併合して、障害等級第6級として取り扱うべきであると判断し、申立てを容認した。

(2) 指令13-38(左下腿部筋断裂に係る公務上の認定)(11.10.22)

郵便局職員からの、郵便物の配達中に階段を駆け上がった際に発症した左下腿部筋断裂は、公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てについて、この災害は、段差の不規則な階段で、1段目を飛ばし2段目に右足を掛け、左足を急激にけり出したために、左下腿部が瞬間的に過伸展した状態で筋を不全断裂したものであって、かかる動作は一般的な動作とは異なるものとみるべきであり、そのため、左下腿部に過重な力が加わり被災したものであるから、公務との相当因果関係が認められるものと判断し、申立てを容認した。

2 申立てが一部容認されたもの

指令13-42(全身打撲等に係る治癒の認定)(11.11.26)

郵便局職員からの、通勤による災害と認定された全身打撲等について、治癒と認定された後も右腕の痛み等が続いているのは本件事故が原因であり、外傷性右上腕骨外顆炎、右上腕神経叢不全麻痺等と診断されて治療を受けていることから、治癒の認定に納得できないとの申立てについて、本件災害は、主として、申立人の主訴とする、右肘及び右前腕部の打撲であったと認められ、医師の所見、治療経過等からみて、治療を中止した平成9年9月30日までには、右腕の握力は低下しているものの、症状は固定し、補償実施上治癒と認定すべき状態に至っていたものと認め、治癒の認定に係る申立てについては棄却した。また、治癒認定時以前から認められた右腕の握力低下、右外顆部痛の症状は、本件通勤による災害が原因とみるべきであり、障害等級第14級に該当するものと認めるのが相当であると判断した。なお、治療再開後に診断された外傷性右上腕骨外顆炎については、治癒認定時に残存した障害としての症状とみるのが相当であり、右上腕神経叢不全麻痺等については、治療経過、検査結果等から、神経叢の麻痺そのものはなかったものと判断した。

3 申立てが認められなかったもの
(1) 指令13-18(頸椎捻挫、腰部捻挫に係る公務上の認定)(11.5.14)

郵便局職員からの、郵便配達作業に従事中、乗車していたバイクのチェーンが切れて急停止したため発症した頸椎捻挫、腰部捻挫は、公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てについて、バイク停止時に、転倒もせず、外傷もなく、車輪はロック状態ではなく空転しており、急停止のタイヤ痕もないことなどから、比較的緩やかに停止したとみるのが相当であって、急激で重大な衝撃があったとみるのは困難であり、さらに、頸部、腰部に、明らかに外傷性のものとするような所見は認められず、他方、本件災害発生前から、頸部痛、腰部痛等で通院、治療を続けていることのほか、他覚的所見に乏しいことなどの症状の経過、医師の所見等からみて、本件災害発生以前からの症状が引き続いているものとみるのが相当であることから、本件災害は公務上の災害とは認められないと判断し、申立てを棄却した。

(2) 指令13-28(神経性うつ状態等に係る公務上の認定)(11.5.14)

元航空大学校職員からの、2か月間の安静加療を要するとの医師の診断にもかかわらず、1週間の休暇しか認められず、また、約1年間にわたり、上司、同僚から、暴力や侮べつ的な発言が続いたため、症状が悪化したとする神経性うつ状態等は、公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てについて、申立人の従事した業務は、特段、複雑、困難なものではなく、また、休暇期間を1週間と限定されたと認めるに足りる証拠はなく、これが申立人の病状に特段影響したものとは認められず、職場内で若干のいざこざや強い言葉で注意されたことなどがあったことは認められるが、これらは申立人の態度が引き起こしたものであり、申立人の体には暴力によるとみるべき痕跡はなく、治療も受けていないこと及び上司等の厳しい注意は、申立人の職務や勤務態度等に関するものであり、その内容は、侮べつ的な発言と認めることはできないことなどから、申立人の主張するような暴力や侮べつ的な発言があったと認めることはできず、本件災害は、申立人の従事した業務及び職場内の人間関係などが有力な原因となって発症、増悪したものとは認められず、以前から引き続いている症状が、自然経過的に悪化していったものとみるのが相当であると判断し、申立てを棄却した。

(3) 指令13-35(変形性脊椎症に係る公務上の認定)(11.7.22)

元郵便局職員からの、大型郵便物の区分作業中に発症した変形性脊椎症は、公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てについて、変形性脊椎症は徐々に起こるもので本件災害によるものとは認められず、本件腰痛はこの脊椎の退行変性からきたものというより急性腰痛症とみるのが相当であるが、被災時の動作は、大型郵便物の区分作業においては通常行われる動作で、その他突発的な出来事があったという事情もないなど、大型郵便物の区分作業において行う通常の動作の範囲内のものであったと認められることから、本件災害は、公務と相当因果関係をもって発生したものとは認められないと判断し、申立てを棄却した。

(4) 指令13-46(脳出血による死亡に係る公務上の認定)(11.12.24)

元税務署職員が転勤直後に脳出血を発症して死亡した災害は、公務上の災害と認定されるべきであるとの遺族からの申立てについて、転勤後発症に至るまでの7日間の業務は総務課課長補佐として通常の業務であり、転勤に伴う引っ越し作業には職員が多数応援し、例年の転居作業と異なる特段の事情はなかったことなどから、二、三年ごとに転居している本人にとって特段の負担となったとみることはできず、総務課の業務が初めてであったという事情が重なったとしても、これらが本件症状を発症させるほどの強度の精神的、肉体的負荷となったとみることはできないことから、本件災害は公務と相当因果関係をもって発生したものとは認められないと判断し、申立てを棄却した。

(5) 指令13-2(脳梗塞に係る公務上の認定)(12.1.7)

郵便局職員からの、日締計算事務に従事中に発症した脳梗塞は公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てについて、申立人は、以前から左内頸動脈等に形成不全を有しており、そこに自然経過的に何らかの血管病変を起こして、たまたま勤務中に脳梗塞を発症したものとみるのが相当であり、本件災害は、業務によって疾病を発症させるほどに強度の精神的又は肉体的負荷があったとは認められず、公務と相当因果関係をもって発生したものとは認められないと判断し、申立てを棄却した。

(6) 指令13-18(外傷性くも膜下出血等に係る公務上の認定)(12.3.24)

郵便局職員からの、勤務時間中の交通事故で発生した外傷性くも膜下出血等の負傷は、公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てについて、見通しのよい片側一車線の道路を走行中蛇行運転となり、センターラインを越えて対向車線側のガードレールに衝突したものであり、公務遂行中の事故ではあるが、その原因としては私傷病である糖尿病からきた低血糖発作による意識傷害とみることが、医学経験則上相当であり、また、業務が忙しかった等、事故原因を公務に求めるに足るだけの特段の事由もないことから、当該事故は申立人の素因に起因するものであり、公務との相当因果関係が認められないと判断して、申立てを棄却した。

(7) 指令13-19(脳出血による死亡に係る公務上の認定)(12.3.24)

元郵便局職員の妻からの、貯金・保険外務業務に従事し、事務室で事務処理中に脳出血を発症し、死亡した災害は、人間ドックで入院治療を指示されたにもかかわらず休務できずにそのまま従事したこと、同僚が休務して業務繁忙であったため、精神的、肉体的に過度の負担がかかったことから、発症し、死亡したものであるから、公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てについて、本人の業務は、業務量及び災害発生当日、直前の1週間等の勤務状況のほか、超過勤務時間数等からみても、本件症状を発症させるほどの強度の負荷のかかるものであったとは認められず、また、人間ドックの検査結果、主治医の治療状況及び各医師の指導、助言からすると、入院して治療すべき状況にはなく、入院を医師から指示されたという事実は認められないことなどから、本件災害は、公務と相当因果関係をもって発生したものとは認められないと判断して、申立てを棄却した。

(8) 指令13-20(腰痛等に係る公務上の認定)(12.3.24)

元皇宮警察本部職員からの、勤務時間中に公務に準じる式典に参列しようとして発症した腰痛等は、公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てについて、当日指示されていた作業を中断して式典会場に赴いており、式典には、表彰受賞関係者などのほか、特に命じられた者等が参列することとされ、勤務時間中である申立人が式典参列を認められていたとみることはできないから、職務あるいは職務に準じる行為中とみることはできず、また、係長から勤務に復帰するよう指示されたにもかかわらず従わなかったことから勤務離脱の状態にあると認められるので、このような状態の下で係長らに連れ戻されたことが、職務遂行中の出来事であったと認めることはできないから、本件災害は、公務と相当因果関係をもって発生したものとは認められないと判断して、申立てを棄却した。


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