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第1編 ≪人事行政≫

第2部 ≪平成12年度業務状況≫

第3章 職員の給与

第1節 給与に関する報告と勧告


1 給与勧告の仕組み
(1) 基本的考え方
(給与勧告の意義等)

人事院の給与勧告は、公務員が民間企業の勤労者とは異なり、争議権などの憲法上の労働基本権が制約されていることの代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した給与を確保する機能を果たすものである。

人事院は、職員の給与水準を民間の給与水準に均衡させること(民間準拠)を基本に、社会経済情勢全般の動向や広く国民各層の意見を踏まえながら給与勧告を行ってきている。また、勧告の際の官民の給与比較に当たっては、単純な給与の平均値比較ではなく、主な給与決定要素である職種、役職段階、年齢などを同じくする者同士を対比させ、精密に比較を行うこととしている。このような勧告が実施され、職員に対して適正な給与が確保されることは、職場の労使関係の安定を図り、能率的な行政運営を維持する上での基盤となるものと考える。

(民間準拠方式をとる理由)

人事院が民間準拠の原則に基づいて勧告を行っている理由は、1)国は民間企業と異なり、市場原理による給与決定は困難であること、2)職員も勤労者であり、適正な給与の確保が必要であること、3)職員の給与は国民の負担で賄われていることなどから、マイナス方向の調整の場合も含め、民間企業の状況を反映させる形で決定することが最も合理的であり、職員をはじめ広く国民の理解を得られる方法であると考えられるからである。

(公務員の身分保障と給与)

公務の中立性・安定性を確保するためには、不当な人事上の影響を排除し、職員が安んじて職務に精励できるよう、その身分を保障することが必要となる。さらに、適正な職務執行を確保するため、公務員には、秘密を守る義務、政治的行為の制限、私企業からの隔離など罰則も伴う厳しい服務規律が課せられている。このように、身分保障は、厳しい服務規律と相まって、適正な公務遂行を確保する役割を果たすものであることから、給与水準の問題とは、別の次元で判断される問題であると考える。

また、民間の給与水準は、失業等を含めてその時々の雇用情勢をも反映しており、人事院勧告を通じて、公務員給与を民間企業で働いている従業員の給与に合わせていくことが、最も合理的である。

(2) 官民給与の比較
(月例給)

人事院は、毎年、「国家公務員給与等実態調査」及び「職種別民間給与実態調査」を実施して官民の4月分の給与を精確に把握し、ラスパイレス方式により精密な比較を行い、官民の給与水準を均衡させることを基本に勧告を行っている。

この職種別民間給与実態調査は、給与改定や賃金カットの有無にかかわらず実施しており、ベースアップの中止、ベースダウン、定期昇給の停止、賃金カットなど給与抑制措置等を行った事業所の給与の状況を含めて、官民の給与較差が算出される。

(特別給)

特別給についても、職種別民間給与実態調査により、民間の過去1年間の賞与等の支給実績を精確に把握し、これに職員の期末・勤勉手当の年間支給月数を合わせることを基本に勧告を行っている。この方式は、民間の支給状況が職員の期末・勤勉手当の支給月数に反映されるまでに1年以上の遅れを伴うものであるが、精確性や信頼性の点で評価されている。

2 公務員給与の実態調査

人事院は、官民給与の精確な比較を行う基礎として、毎年、「国家公務員給与等実態調査」を実施している。

平成12年は、同年1月15日現在における給与法適用の常勤職員(休職者、派遣職員、在外公館に勤務する職員等を除く。)について全数調査を実施した。

調査事項は、職員の俸給及び諸手当、年齢、経歴、定年退職等による離職の状況等であり、例年とほぼ同様である。

図3-1 給与勧告の手順


平成12年の調査結果の主な内容は、次のとおりである。

(1) 職員構成の実態

ア 給与法の適用を受ける常勤職員の総数は、平成12年1月15日現在499,411人であり、その後の定年退職者等の離職者及び採用者を除いた同年4月1日における人員は487,084人である。以下に示す職員の在職状況及び給与は、この4月1日における人員を基礎としたものである。

イ 俸給表別の人員は、行政職俸給表(一)が221,692人(全体の45.5%)と最も多く、以下教育職俸給表(一)の59,856人(同12.3%)、税務職俸給表の54,499人(同11.2%)等の順となっている。(資料3-2)

また、職種別の人員を10年前の平成2年と比較すると、図3-2に示すとおりである。人員の増減をみると、行政職(-15,351人)、海事職(-222人)が減少しているのに対し、教育職(+6,209人)、医療職(+3,529人)、税務職(+3,201人)、公安職(+2,844人)は増加している。これらは、引き続く定員抑制措置の一方で、社会的要請が強い教育・医療関係等における業務の拡充、整備に対応するために必要な人材を確保してきたことを示している。

図3-2 職種別人員及び構成比


ウ 職員の最終学歴別人員構成比は、大学卒44.3%(うち大学院修了13.1%)、短大卒17.9%、高校卒36.2%、中学卒1.6%となっている。(資料3-2)

昭和45年以降の推移は、図3-3に示すとおりである。大学卒及び短大卒の占める割合は、それぞれ年々増加しており、平成12年には両者を合わせると62.2%に達している。これに対し、高校卒及び中学卒の割合は減少が進んでいる。これは、社会一般の高学歴化傾向の進展に加え、教育・医療関係等の高学歴職種の増員が反映されたことによるものと考えられる。

図3-3 最終学歴別人員構成比の推移


エ 職員の平均年齢は40.9歳となっている。俸給表別では、指定職俸給表を別にすれば行政職俸給表(二)の47.9歳が最も高く、以下教育職俸給表(四)の45.8歳、教育職俸給表(一)の45.6歳の順となっている。逆に、最も低いものは、任期付研究員俸給表を別にすれば医療職俸給表(三)の38.1歳で、次いで税務職俸給表の39.1歳となっている。(資料3-3)

平均経験年数は19.6年となっている。俸給表別では、指定職俸給表を別にすれば行政職俸給表(二)の27.5年が最も長く、次いで教育職俸給表(四)の22.5年の順となっている。(資料3-3)

平均年齢及び平均経験年数の推移は、図3-4に示すとおりである。昭和60年に定年制が実施され、その後は低下傾向を示していたが、平成6年にその傾向が止まり、平成7年以降は上昇に転じている。

図3-4 平均年齢及び平均経験年数の推移


年齢階層別人員構成比の推移は、図3-5に示すとおりである。10年前の平成2年には、40・41歳の層に山があり、50・51歳の層に落ち込みがある人員構成となっていたが、平成12年においては、各年齢階層ごとに若干の差はあるものの、人員構成はほぼ平均化している。

図3-5 年齢階層別人員構成比の推移


(2) 職員給与の実態

ア 職員の給与は、俸給及び諸手当から構成されている。

平成12年4月1日における職員の平均給与月額は、俸給356,757円、扶養手当12,673円、調整手当20,555円、その他21,416円、合計411,401円となっている。

また、行政職の平均給与月額は、俸給323,527円、扶養手当12,388円、調整手当19,435円、その他19,919円、合計375,269円となっている。(資料3-3)

イ 職員の給与決定上の学歴別、経験年数階層別の人員及び平均俸給額をみると、人員が最も多い階層は、高校卒は30年以上35年未満、短大卒は15年以上20年未満、大学卒は10年以上15年未満となっている。また、平均俸給額が経験年数1年未満の者の2倍に達するのは、高校卒及び大学卒はいずれも15年以上20年未満、短大卒は20年以上25年未満の階層となっている。(資料3-4)

ウ 扶養手当は、職員の56.6%が受給している。受給者の割合は、図3-6に示すとおりである。

図3-6 扶養手当受給者割合及び平均扶養親族数の推移


過去10年間の推移をみると、総体的に受給者割合及び扶養親族数は減少傾向にある。これは、出生率の低下及び共働き世帯の増加等の影響によるものと考えられる。

平成5年に受給者割合及び扶養親族数が、いずれも上昇に転じているのは、扶養手当の支給対象となる子等の年齢制限を18歳から22歳に引き上げた平成4年の制度改正によるものである。

エ 調整手当の支給地域に在職する職員の割合は、52.5%となっている。支給地域区分別の在職者割合は、甲地のうち、支給割合12%の地域(東京都特別区)が17.1%、同10%の地域(大阪市等)が16.6%、同6%の地域(福岡市等)が3.7%、乙地(広島市等)が15.1%となっている。

3 民間給与の実態調査

人事院は、適正な公務員給与を決定するために必要な民間給与の基礎資料を得ることを目的として、毎年、「職種別民間給与実態調査」を実施し、公務と類似の仕事をしている民間事業所の従業員について、その給与の実態を把握している。

(1) 調査の概要

平成12年の調査の概要は、次のとおりである。

ア 調査の対象事業所は、企業規模100人以上で、かつ、事業所規模50人以上の全国の民間事業所のうち、農林業及び一部のサービス業等を除いた34,960事業所である。

イ 実地調査を行った事業所は、層化系統無作為抽出法に従いながら、事業所を都道府県、政令指定都市、特別区、熊本市及び和歌山市別に、産業、規模等により1,046層に分け、経費、労力等を考慮して定めた抽出率を用いて、給与改定の有無にかかわりなく、無作為に抽出した7,556事業所である。

ウ 調査は、平成12年5月8日から同年6月16日の間において、62の人事委員会と共同により、平成12年4月分として支払われた給与月額等について事業所に赴いて面接調査により実施した。

その結果、調査を完了した事業所は、7,163事業所(調査完了率94.8%)である。(資料3-5)

エ 個人別調査の対象となった実人員は、公務員と類似の職務と考えられる94職種(うち、初任給関係職種19職種)に該当する常勤の従業員数461,844人(うち、初任給関係職種該当者62,386人)であり、調査職種該当者(母集団)の推定数は4,089,131人である。

オ 総計や平均値の算出に際しては、すべて事業所と従業員の抽出率の逆数を乗じて母集団に復元した形で行い、特定の地域、規模、産業に偏った結果が出ることのないように配慮している。

人事院勧告のための作業をする職員


(2) 民間給与の実態

平成12年の主な調査の結果は、次のとおりである。

ア 初任給

新卒事務員・技術者計の初任給は、大学卒は19万円台、短大卒は16万円台、高校卒は15万円台のいずれも前半となっている。その他の職種をみると、おおむね事務・技術関係職種の同一学歴の初任給より高くなっており、特に準新卒看護婦(士)(養成所卒)の初任給は大学卒を上回る20万円台となっている。(資料3-6)

イ 職種別給与

職種別の平均給与月額を事務及び技術関係職種についてみると、係長以下の職種については、平均年齢の違いや技術者の初任給月額が高いことを反映して技術関係職種の方が若干高くなっているものの、課長代理以上の職種については、事務関係職種の方が高くなっている。これは、事務関係職種の方が、給与水準が高い業種や大都市の大規模事業所の従業員をより多く含んでいることから、業種間、地域間、規模間の給与格差が反映されていることなどによるものと考えられる。(資料3-7)

ウ 給与改定、雇用調整等の状況

給与の改定状況については、ベースアップ実施事業所の割合は、一般従業員でみると52.9%であり、このうち定期昇給停止(0.9%)や賃金カット(0.5%)を行った事業所を除くと51.5%とおおむね半数となっており、また、ベースアップの中止(34.0%)、ベースダウン(1.1%)、未定(12.0%)となっている。これを管理職(課長級)についてみると、ベースアップ実施事業所は49.7%と約半数であり、このうち定期昇給停止(1.2%)、賃金カット(1.7%)を行った事業所を除くと46.8%となっており、一般従業員に比べより厳しい措置が行われている。(表3-1)

表3-1 給与改定の状況


また、雇用面では厳しい経営環境を背景に、採用の停止・抑制(41.6%)及び部門間の配転(30.0%)等の合理化措置が実施されているが前年の同種の調査結果に比べ、全般的に実施事業所割合は減少している。(表3-2)

表3-2 雇用調整等の状況


このように民間企業においては、人員の縮小、給与の抑制等様々な取組を行っていることが明らかとなったが、約半数の事業所では、低率ではあってもベースアップが行われるなど給与の引上げを行い、従業員の給与水準の維持・改善に努めていることが認められた。

エ 定期昇給制度の状況

定期昇給制度が「ある」とする事業所の割合は8割を超えているが、このうち、役職・資格、年齢、査定結果等の事由により定期昇給を行わない場合があるとする事業所が約5割となっている。

また、定期昇給の仕方を役職別にみると、自動昇給(勤続年数、年齢等に基づいて機械的に昇給)と査定の組合せでの昇給が、すべての役職で最も割合が高く、また、高い役職ほど査定のみによる昇給の割合が高くなっている状況が認められた。(表3-3)

表3-3 定期昇給制度の有無別事業所割合


表3-4 役職段階別、定期昇給の仕方別事業所の割合


(3) 特別調査の概要

平成12年も平成11年に引き続き企業規模30人以上100人未満の民間事業所を対象として、給与の改定状況や雇用調整等の実態等について特別に調査した。

ア この調査は、平成11年特別調査で集計した972事業所を調査対象とし、回答のあった817事業所のうち規模不適等の事業所を除外した714事業所について集計を行い、調査結果は、事業所の抽出率を用いて復元した。

イ 給与改定の状況では、ベースアップを実施した事業所の割合は41.9%、ベースアップを中止した事業所は43.9%となっている。雇用調整等の状況では、賃金カットが15.6%と目立ち、正社員の解雇7.9%と、本調査に比べてより厳しい状況が認められた。(表3-5(1)(2))

表3-5(1) 特別調査の給与改定の状況


表3-5(2) 特別調査の雇用調整等の状況


人事院が、民調(職種別民間給与実態調査)を独自に実施する必要性

国家公務員の給与については、民間企業の従業員の給与水準に合わせること(民間準拠)を基本としています。

官民の給与を比較する場合には、単純な平均値によるのではなく、職種、役職段階、学歴、年齢など主な給与決定要素を同じくする者同士の給与を対比させることが最も適切であると考え、それに必要な個人別給与月額等の資料を得るため「民調(職種別民間給与実態調査)」を民間事業所にお願いしています。

民間と公務(行政職)の4月分給与を精密に比較


民間給与の実態については、厚生労働省、国税庁等の機関でそれぞれの行政目的にしたがって調査が行われていますが、これらのデータはパートタイム労働者が含まれていたり、上記の給与決定要素の調査がない平均値であったりするなど、官民の精確な給与比較に用いるのに必要充分なデータとはいえません。

また、民間企業における賃金等の勤務条件の改定は、春闘等を経て4月から実施するところが一般的であることから、改定後の状況をできるだけ速やかに調査し、把握する必要があること、勧告に当たっては給与改定の妥当性について労使双方のみならず、国民の理解を得る必要があることから、第三者機関である人事院が責任をもって迅速に調査を行い、適切に勧告することが求められています。

このような詳細な調査であることから、調査事業所側の調査票記入等の負担を考慮し、人事・給与関係の制度に精通している人事院あるいは人事委員会の職員を調査員として派遣し、できるだけ調査事業所に負担のかからないよう調査員が調査票に記入する方法をとっています。

調査事業所の担当者の方に対しては、公務員給与改定のため独自に調査する必要があることを説明した上で協力をお願いしています。平成12年においても、民間事業所の多大なご協力により、例年同様約95%のご回答をいただいたところです。

【参考】人事院調査、厚生労働省調査、国税庁調査の違い


4 官民給与の比較の結果

人事院において、前記「国家公務員給与等実態調査」及び「職種別民間給与実態調査」の結果に基づき、平成12年4月における官民の給与額をラスパイレス方式により比較したところ、民間給与が公務員給与を1人当たり447円(0.12%)上回っていることが明らかとなった。なお、全事業所の21.18%に当たる事業所において、支払は終わっていないが4月に遡って定期昇給分を含め平均1.90%の給与の引上げが実施されることが分かったが、昇給率を勘案するとその影響を加味するには至らなかった。

また、諸手当について、民間における家族手当、住宅手当及び通勤手当の支給状況について調査したところ、家族手当の支給額は職員の扶養手当の現行支給額を上回っており、住宅手当及び通勤手当は職員の住居手当及び通勤手当の現行支給状況とほぼ見合うものであった。

特別給については、平成11年5月から12年4月までの1年間において、民間事業所で支払われた賞与等の特別給は所定内給与月額の4.75月分に相当しており、職員の期末・勤勉手当の年間の平均支給月数(4.95月)を下回った。

5 平成12年の報告と勧告

人事院は、平成12年8月15日、国会及び内閣に対し、一般職の職員の給与等について報告するとともに、その給与の改定について勧告を行った。

完全失業率が過去最高の水準にあるなど引き続き厳しい経済・雇用情勢の下、人事院は、3のとおり、民間給与実態に関し、ベースアップ中止や賃金カット等を含めた改定状況や、採用の停止・抑制や希望退職者の募集など人事管理面での合理化努力について、幅広く調査を行い、これらの的確な把握に努めるとともに、東京のほか全国33都市で有識者や中小企業の経営者を含めた各界との意見交換を行ったほか、前年に引き続き「国家公務員に関するモニター」(500人)を通じて、広く国民の意見の聴取に努めた。

その上で、公務における業務の効率化等の取組の進展も念頭に置きながら、平成12年の給与の改定について様々な角度から検討を行った。

その結果、月例給については、俸給表の改定を行わないこととし、家計負担等を考慮すると子等の扶養親族を有する中堅層職員について措置する必要が認められることから扶養手当について改定を行うこととした。また、特別給については、「職種別民間給与実態調査」の結果に基づき、民間の特別給の支給月数に見合うよう、引き下げる必要があると判断した。(このような結論を得るに至った人事院の考え方の概要は、第1部第2章Vの2を参照)

また、報告の中で、個人の能力・実績をより重視した給与体系の実現に向け、俸給体系の見直しを進めることを表明した。(その概要は、「(2)職務と能力・実績に応じた給与システムの改革」を参照)

(1) 給与改定の内容
ア 扶養手当の引上げ

職員の家計負担の実情に配慮して、扶養親族である子等に係る扶養手当を、2人目までについては1人につき月額500円、3人目以降については1人につき月額1,000円引き上げる。


イ 期末手当等の支給月数の引下げ

民間の賞与等の特別給の支給割合との均衡を図るため、12月期の期末手当及び勤勉手当の支給月数を合わせて0.2月分(期末手当0.15月分、勤勉手当0.05月分)引き下げる。また、本省局長等の指定職俸給表適用職員に支給される期末特別手当についても、期末手当との均衡等を考慮し、12月期に0.15月分引き下げる。


ウ 調整手当の支給地域等の見直し

民間賃金等の特に高い地域に支給される調整手当については、社会経済情勢の変化を踏まえた地域別の給与配分の一層の適正化を図るため、地域における民間賃金、物価、生計費の実情に応じて、次のとおり支給地域及び支給割合の見直しを行うこととする。なお、支給地域の指定解除及び支給割合の引下げを行う地域については、所要の経過措置を講ずることとする。


(2) 職務と能力・実績に応じた給与システムの改革

近年、我が国の社会経済システムの大きな変革の中で、多くの民間企業では能力や成果・業績を重視した人事・賃金体系への改革を進めている。公務においても、行政をめぐる大きな環境の変化の下で、国民の理解を得ながら、公務組織の活性化を目指し、人事管理全般の改革と併せ、個人の能力・実績をより一層重視した給与体系の実現に向けた見直しを進めていくことが重要と考えられることから、平成12年の報告においては、以下に述べるような見直しの基本的な検討の方向を表明した。

ア 施策の検討の基本的方向
(ア) 改革の基本的方向
1) 高い専門性を有する職員の処遇

国際化や情報化が進展する中で、行政部内の重要政策の策定、困難な国際問題の調査・折衝等、特別の分野の高度の知識・専門的能力を持った人材を公務内外から広く採用・育成することが重要となっており、これら人材を適切に評価・活用できるよう、処遇の枠組みを整備していく必要がある。この一環として、勧告と同日に国会及び内閣に対して、一般職の任期付職員制度について特別の俸給表の新設を含む意見の申出を行った。

2) 専門職・スタッフ職の活用と処遇

高度化・専門化する行政課題に的確に対応しつつ、行政のスリム化や在職期間の長期化に対処していくには、従前のライン職を重視した人事管理から専門職・スタッフ職を活用した人事管理へ転換を進めていく必要がある。これらの職の評価・処遇は、組織上の位置付けとともに役割や貢献度を反映したものとしていくことも必要である。

3) 実績重視による動機付け

勤続・経験による年功を重視した今までの給与処遇は安定的であり、任用面での職員の不満を緩和し、全体の士気を維持する効果を有していたが、限られた原資の中での効率的な給与配分や職員各人へのインセンティヴを考慮すると、より勤務実績を反映しやすい給与システムを検討する必要がある。

(イ) 能力・実績の反映のための評価システムの充実

職務や能力・実績に応じた人事管理を推進するためには、評価システムを充実させることが重要である。その際、行政課題や組織目標における各職員の職責や役割を明確化・具体化していく努力が必要であり、職務遂行上の目標や改善努力すべき点の理解を通じ、職員の育成・能力開発に資するとともに、職員の役割の自覚・評価の納得性を得ることが可能となると考える。

イ 新たな時代に応じた俸給体系の見直し

現行の俸給体系については、能力・実績をより重視する方向にある民間企業と比べ、年功的・一律的との指摘も多く行われてきている。今後、在職期間の長期化や職員構成の中高年齢化が進む中で、現行のままでは、各級の高位号俸を受ける職員数の一層の増加や、民間賃金のすう勢との乖離などが生ずるという問題がある。

このような状況を踏まえ、現行の総合給型の俸給体系の基本的な枠組みについて見直しを行う必要がある。具体的には、

1) (i)職員の職務を基本としつつ、(ii)・勤務に伴う能力の伸長や経験の蓄積、(iii)・職務遂行上の優れた成果や実績、という三つの要素を踏まえて、現行俸給表の構造を基本的に見直すとともに、各級の号俸構成や特別昇給を含む昇給制度、現行の一律的な昇給期間の在り方などについても見直すこと

2) 本省課長級等の管理職員や専門的知識、経験等に基づき重要な事項を担当するスタッフ職員等については、実績等の給与への反映を強化することなどについて、俸給表の区分や級構成の在り方等幅広い視点をも踏まえつつ、検討を行っている。

今後、引き続き関係者等の意見を聴取しつつ、早期に成案を得るよう検討を進めることとしたい。

6 給与勧告の取扱い

平成12年の給与勧告について、政府は、給与関係閣僚会議を勧告当日(8月15日)及び9月19日の2回開催し、その取扱いを協議した。その結果、9月19日、第2回同会議において勧告どおり実施することが認められ、その後開かれた閣議において、内容、実施時期とも勧告どおり実施することを決定し、政府において給与法等の改正法案を国会に提出するため、所要の準備を早急に進めることとなった。なお、閣議決定に先立つ8月24日、衆議院内閣委員会において、人事院勧告の趣旨説明及び審査(閉会中)が行われた。

公務員の給与改定に関する取扱いについて

                       〔平成12年9月19日 閣議決定〕

1 一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員の給与については、去る8月15日の人事院勧告どおり改定を行うものとする。

なお、この給与改定を行うに当たっては、公務能率及び行政サービスの一層の向上を図るとともに、官庁綱紀の厳正な保持、公正な公務運営の確保に努めるものとする。

2 特別職の国家公務員については、おおむね1の趣旨に沿って、その給与の改定を行うものとする。

3 1及び2の給与改定については新たな追加財政負担は要しないが、我が国の財政事情がますます深刻化していることを考慮すれば、行財政改革を引き続き積極的に推進し、総人件費を極力抑制するとの基本方針は堅持する必要がある。

そのため、行政事務・事業の整理、民間委託、人事管理の適正化等行政の合理化、能率化を積極的に推進する等の措置を講ずるとともに、定員については、「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画」(平成11年4月27日閣議決定)、「新たな府省の編成以降の定員管理について」(平成12年7月18日閣議決定)に基づき、各省庁とも、一層の新規増員の抑制及び定員削減の実施を図ることとし、引き続き国家公務員数の一層の純減を行う。さらに、公庫、公団等についても厳しい定員削減を実施する。地方公共団体についても、国の措置に準じて措置するように要請する。また、地方公共団体に定員の増加を来し、人件費の累増をもたらすような施策を厳に抑制する。

4 公庫、公団等においてその役職員の給与改定を行うに当たっては、国家公務員の例に準じて措置されるよう対処するとともに、事務・事業の合理化、能率化を積極的に進めるものとする。

5 地方公共団体において地方公務員の給与改定を行うに当たっては、現下の極めて厳しい財政状況及び各地方公共団体の給与事情等を十分検討の上、国と同様、行政の合理化、能率化を図るとともに、既に国家公務員又は民間の給与水準を上回っている地方公共団体にあっては、引き続きその適正化を図るため必要な措置を講ずるよう要請するものとする。


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