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第1編 ≪人事行政≫

第1部 人事行政の動き

第2章 人事行政この1年の主な動きと今後の課題

V 給与勧告と公務員給与水準の在り方の検討


1  平成14年給与勧告をめぐる情勢

人事院の給与勧告は、公務員に社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保するためのものであり、労働基本権制約の代償措置としての機能を有するものである。公務員給与については、代償機関である人事院が労使当事者以外の第三者の立場に立ち、労使双方の意見を十分に聴きながら、官民給与の精確な比較を基に給与水準及び制度について勧告を行うことにより、適正な給与が確保され、国民から理解と納得を得てきたところである。勧告が実施され、公務員に適正な処遇を確保することは、労使関係の安定を図り、能率的な行政運営を維持する上での基盤となっている。

人事院では、社会経済情勢全般の動向等を踏まえながら、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に、単純な官民給与の平均値によるのではなく、主な給与決定要素である職種、役職段階、年齢、勤務地域などを同じくする者同士を対比させて精密に比較(ラスパイレス方式)を行い、その結果算出された官民較差を是正するため、仮に公務員に労働基本権があればどのような結果となるのか等を念頭に置きつつ、具体的な俸給表や諸手当の改定・新設等を内容とする勧告を行っている。

平成14年の勧告は、我が国の経済情勢が一段と厳しさを増し、完全失業率が過去最悪の5%台で推移するという状況の下で行われた。人事院は、職種別民間給与実態調査において、4月分として個々の従業員に実際に支払われた給与を実地に詳細に調査するとともに、各企業における給与抑制の状況や、雇用調整の実施状況等について、例年よりも一層詳細に調査を行い、その的確な把握に努めた。

その結果、多数の民間事業所において、ベースアップの中止、ベースダウン、定期昇給の停止、賃金カットなどの給与抑制措置がとられていることが判明した。このような非常に厳しい民間給与の実態を反映し、平成14年4月分の月例給の官民比較の結果は、給与勧告制度創設以来初めて、公務員給与が民間給与を7,770円、2.03%上回ることとなった。人事院は、この官民較差を是正するため、俸給表の引下げ等を内容とする勧告を行うこととした。

2  平成14年勧告のポイントと基本的考え方

人事院は、平成14年8月8日、国会及び内閣に対して、公務員給与の改定について、次の点を柱とする勧告を行った。

・ 官民給与の逆較差(△2.03%)を是正するため、給与勧告制度創設以来初の月例給引下げ改定(俸給表の引下げ改定及び配偶者に係る扶養手当の引下げにより措置)

・ 期末・勤勉手当(ボーナス)の引下げ(△0.05月分)

・ 3月期のボーナスを廃止し6月期と12月期に再配分。併せて、期末手当と勤勉手当の割合を改定

・ 年間給与で実質的な官民均衡を図るため、12月期の期末手当等の額で調整

〜 平均年間給与は4年連続の減少(約△15.0万円(△2.3%))

この勧告を行うに当たって、人事院は、厳しい諸情勢を踏まえ、職員団体や各府省の人事当局から、俸給や諸手当の改定について従来にも増してきめ細かく意見聴取を行った。また、全国38都市で有識者や中小企業経営者との意見交換を行ったほか、「国家公務員に関するモニター」(500人)から広く聴取した意見も踏まえながら、給与改定について様々な角度から検討を行った。

公務員給与は、毎年4月時点で官民給与の比較を行い、民間給与との均衡を図ることとしており、この方式は長年の経緯を経て定着しているものである。人事院は、官民給与較差が初めて「逆較差」となったことをはじめ、給与を取り巻く諸情勢を考慮した結果、民間の給与水準が上がるときだけでなく下がる場合においても、情勢適応の原則に基づいて、公務員の月例給を民間の水準にまで引き下げ、いわゆる「逆較差」を是正することが適当であると判断した。月例給引下げの方法としては、官民較差の大きさ等を考慮し、月例給の中心である俸給を引下げ改定するとともに、民間における手当の支給実態等にかんがみ、扶養手当の改定などを行うこととした。

なお、公務員の給与水準を引き下げる方法として、毎年行われる昇給を延伸するとの考え方もあるが、昇給率の高い若手・中堅職員に専ら負担を強いること、昇給は良好な成績を上げた職員に対する給与制度上の措置であり、官民比較の結果として生じた較差を埋めるための方法として用いることは適当ではないことなどから、今回の措置としては適当ではないと考えた。

特別給についても、民間ボーナスの支給割合に見合うよう、4年連続で支給月数を引き下げることとした。

平成14年勧告においては、厳しい諸情勢の下、公務員の給与水準を引き下げる必要があると判断したが、公務の活力を維持するためには、実績を上げた職員に対してそれに応じた処遇をすることが重要であり、そのためには、各府省において特別昇給や勤勉手当(ボーナスのうちの考課査定分)をその本旨に則して一層活用する必要がある。人事院としても、勤勉手当の割合の増加を図るほか、特別昇給や勤勉手当についてよりめりはりのある運用の推進を図るための指針を示すことを報告において表明した。

人事院勧告を小泉首相に渡す中島総裁


3  給与改定の内容

平成14年勧告における主な改定の内容は、以下のとおりである。

(1) 俸給表の引下げ
  •  すべての級のすべての俸給月額について引下げ(平均△2.0%)。級ごとに同率の引下げを基本とするが、初任給付近の引下げ率を若干緩和、管理職層については平均をやや超える引下げ率での改定
    特例一時金(年間3,756円)は廃止
(2) 扶養手当の改定
  •  配偶者に係る支給月額の引下げ(16,000円→14,000円)、子等のうち3人目以降の支給月額の引上げ(3,000円→5,000円)
(3) 期末・勤勉手当の引下げ等
  • ・ 年間支給月数を△0.05月分引き下げ、年間4.65月分に(3月期の期末手当で引下げ)
    ・ 民間のボーナス支給回数と合わせるため、3月期の期末手当を廃止し、6月期、12月期に配分
    ・ 民間の支給状況等を踏まえ、期末手当と勤勉手当の割合を改定(平成15年度から)

また、実施時期については、従来、4月に遡って改定していたが、平成14年の改定は俸給月額等を引き下げる内容であるため、遡及することなく実施することとし、引下げ改定に伴う日割計算等の事務の複雑化を避けるため、改正給与法の公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときは、その日)から実施することとした。また、4月からの年間給与で実質的な官民均衡を図るための所要の調整を、改正給与法施行後に支給される平成14年12月期の期末手当等の額において行うこととした。

4  平成14年給与勧告の取扱い

平成14年の給与勧告の取扱いについては、9月27日の第2回給与関係閣僚会議において完全実施の方針が承認され、これを受け同日の閣議で、勧告どおりの給与改定を実施することが決定された。

給与法等の改正法案は、平成14年10月18日、第155回国会に提出され、同年11月15日、原案どおり成立し、同月22日に公布された(同年12月1日に施行)。

なお、衆議院総務委員会(平成14年11月7日)及び参議院総務委員会(同月14日)における改正法案の議決に当たり、政府及び人事院に対し、今回の月例給与のマイナスが公務員の士気や民間賃金・経済に与える影響等を重く受けとめ、公務員の適正な処遇の確保に努めること、年間における官民給与を均衡させる方法等を決定するに当たっては、職員団体等の意見を十分聴取し、理解を得るよう最大限の努力を払うこと等を内容とする附帯決議が行われた。(詳細は第2部第3章第2節1を参照)

この勧告が実施されたことにより、職員(行政職)の平均で、勧告前の年間給与6,424,000円が勧告後では6,274,000円となり、約15万円(2.3%)の減となった。これは4年連続の引下げであり、4年間の合計は、地方機関勤務の係長(40歳、扶養家族は配偶者及び子2人)の場合で、年間給与でみて約328,000円(△5.2%)の引下げとなる。(表1)

表1 人事院勧告実施後の主な官職の給与例


5  地域に勤務する公務員給与の在り方の検討

近時、各地域に勤務する公務員の給与について、その水準がその地域の民間給与に比べて高いのではないかとの指摘が多くなっている。官民の給与は、精確な調査・比較を通じ、全体としては均衡が図られているが、公務員給与は広く国民の理解を得られるものである必要があることから、地域ごとの公務員給与の在り方について、その地域の民間給与をより反映していくことに配慮する必要がある。

人事院は、平成13年の勧告時の報告において、このような問題認識に立って、民間給与の実態把握及び公務部内の給与配分の在り方について幅広く見直しを行うことを表明し、平成14年職種別民間給与実態調査について、より的確に民間給与の実情等を把握するため標本事業所の層化・抽出方法の見直しを行った。

また、この問題については、平成14年6月25日の閣議決定(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」)において「人事院や地方公共団体の人事委員会等は、地域毎の実態を踏まえて給与制度の仕組みを早急に見直すなどの取組みを行う必要がある。」とされ、内閣より人事院に対して検討要請がなされたところである。

各地域における公務員給与の在り方の見直しを給与配分の適正化の観点から適切に進めていくためには、本府省と地方の配分や世代間の配分等にも留意しながら、俸給制度や地域関連手当をはじめとする諸手当の在り方の抜本的な見直しを行う必要があり、平成14年の勧告時の報告においても、その旨言及したところである。

この問題は、職員の処遇に直接影響するとともに、各府省における人材の円滑な配置・確保に関係することから、公務の労使も大きな関心を示しており、また、地方公共団体にも影響することなどから、幅広く深い検討を早急に行う必要がある。このため、人事院は、平成14年9月に、事務総長の委嘱により、各界の有識者から成る「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」(座長:神代和欣横浜国立大学名誉教授)を設置した。人事院としては、同研究会における検討結果を踏まえ、関係者の理解を得つつ、具体的な施策の展開について検討を進めていくこととしている。


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