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第1編 ≪人事行政≫
第2部 平成14年度業務状況
第2章 人材の育成
第2節 研修に関する研究開発
人事院は、各府省における研修の適切な推進を図る観点から、研修ニーズに応じた教材、研修コースの開発・改訂に当たるとともに、研修全般にわたって必要な研究、検討を行っている。
平成14年度においては、第1部で述べたようにJST(人事院式監督者研修)専科コースを新設した。人事院ではこれまでも職場のリーダーにマネジメントの基本を習得させるJST基本コースなどを実施してきたが、行政の透明性の確保や国民の視点に立った行政執行など、最新のニーズをくみ取った、より専門的なマネジメント研修に対する期待の高まりを受けて、今年度新設したものである。
今年度開発したのは、「職場におけるリスクマネジメント」及び「説明責任とプレゼンテーション」の二つの研修で、それぞれの研修のねらい、内容等は次のとおりである。
1 職場におけるリスクマネジメント(1) ねらい
職場におけるリスクに対する意識を高め、また、職務を遂行する過程で起こりうるリスクに対してどのように対応するかを考えさせることにより、リスクマネジメント能力の向上を図る。
(2) 研修の構成・内容次の四つの会議で構成されている。
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第1会議 職場のリスク
- 職場に潜在するリスクを各参加者が紹介する。
第2会議 職場のリスクマネジメント
- リスク発生の回避、リスクが発生した場合の対応などについて討議する。
第3会議 事例研究
- リスク発生の事例を用い、リスク対応の在り方について具体的に検討する。また、リスクが発生した場合のマスコミ対応について、模擬記者会見を行う。
第4会議 リスクマネジメントプラン
- 参加者の職場で起こりうるリスクについての対応策を検討する。
- 職場に潜在するリスクを各参加者が紹介する。
研修時間は6時間30分、研修人数は12名〜18名。なお、内容の一部を省略することによって、約4時間、50名程度の参加者を対象に実施することも可能。
新しい研修コースのシート

(1) ねらい
説明責任に対する意識を高め、また、説明責任を適切に果たすための手段であるプレゼンテーションの実践的能力の向上を図る。
(2) 研修の構成・内容次の四つの章で構成されている。
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第1章 説明責任について考える
- 説明責任とは何か、なぜ公務員には説明責任が求められるか、説明責任を果たすための姿勢について討議する。
第2章 プレゼンテーション・グループ実習
- 参加者は数名のグループに分かれ、他の参加者に対し所属機関の施策についてプレゼンテーションを行い、質問を受ける。その後、指導者が各参加者のプレゼンテーション内容、プレゼンテーションぶりを講評する。
第3章 プレゼンテーション・全体実習
- 各グループ実習で1名の代表者を選び、選ばれた代表者は参加者全員の前で再度同じプレゼンテーションを行い、質問を受ける。プレゼンテーションの模様はビデオ撮影され、指導者がその再生画面を見ながら講評する。
第4章 まとめ
- 説明責任を十分に果たすために行うプレゼンテーションの留意点について考える。
- 説明責任とは何か、なぜ公務員には説明責任が求められるか、説明責任を果たすための姿勢について討議する。
研修時間は6時間45分、研修人数は12名〜18名。なお、内容の一部を省略することによって、約4時間、50名程度の参加者を対象に実施することも可能。
新規に開発されたJST専科コース「説明責任とプレゼンテーション」では、所属機関の施策を国民に説明するとの想定によるプレゼンテーションを研修参加者全員に行ってもらいます。以下、研修指導者がプレゼンテーション実習を指導して気づいた点を紹介します。 (プレゼンテーションテーマ) 参加者は所属する機関の施策に関し、国民に説明する必要があるテーマを選ぶことになっているが、自らの担当業務そのものをテーマとする参加者が多い。そのため、なかには内部管理事務をテーマとする参加者もおり、国民の関心を踏まえて説明するという観点から離れてしまうケースがある。 (話の内容) 参加者は、法令や具体的な統計数字などを引用し、その説明は正確である。ただ、実際にプレゼンテーションを聴いているのは他府省からの参加者だが、想定している聴衆は一般の国民であり、ときどき国民にとってわかりにくい用語を使ったり、話が細部にわたりすぎる参加者がいる。 (話し方) ほとんどの参加者は非常に落ち着いている。ただ、聴衆とアイコンタクトを取りながら話しかけるように話す参加者は多くない。なかには、必要もないと思われるのに、説明資料ばかり見て話す参加者もいる。でも、そうした参加者でも質疑応答になると、しっかりと質問者を見て質問を聞き、答える際も聴衆を見つつ、ときには手ぶりも加えることがある。あらかじめ準備していない質疑応答の方が自然で、説得力がある話しぶりをするケースが多い。 (実習の講評) 全体実習ではプレゼンテーションの模様をビデオに録画し、それを再生しながら指導者が講評する。実際のシーンを見ながら講評した方がそのプレゼンテーションを行った参加者のみならず、他の参加者にとってもプレゼンテーションのポイントが理解しやすいようだ。ときどき厳しい指摘も行うが、参加者はみな、そうした指摘を前向きな姿勢で受け取ってくれる。 |
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